8話.探索者とは、訪問者とは
8話.探索者とは、訪問者とは
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「探索者タグをご提示ください」
「……え?」
と言うわけで、装備は買えなかった。そりゃね、探索者向けのショップだもんね。当たり前だよね!恥ずかしい!
こう言った勘違いはよくあるらしいので、ショップの店員さんは仏のような笑顔で説明をしてくれた。
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探索者になるにはギルドでの試験を受けて合格しなければならない。探索者で無くても地下迷宮には入れるが、それは訪問者、通称ゲストと呼ばれる扱いとなる。
訪問者は地下迷宮の第一層まで入ることが出来る、無資格者の事を指す。なぜそんな人たちでも潜れるかと言うと、第一層に現れる魔物は弱い個体しか現れないからだ。
同じ魔物、例えばゴブリンでも、第一層に現れるのは弱いスキルしか持っておらず、第二層以降になると複数のスキルを持つ強い個体が増えていく。
そのスキルや組み合わせで習性も変化し、例えば弓術のスキル持ちならゴブリンアーチャー、などと言ったように分類されていく。
つまり地下迷宮においての本番は第二層以降からとなり、第一層は誰でも入れるエリア。そこを訪れる人たちはゲストと言われる様になった。
「そして訪問者用の装備はギルドで貸し出される、と。ステータス取得ツアーで貸し出された装備もそれだったのか……」
こんな事なら先にギルドに行くべきだったわ。もっとよく調べてから動くべきだった、とも言えるが。恥ずかしい!!
ちょっとした失敗でも、後からフラッシュバックするんだよな。黒歴史、と言うほど大袈裟なものでは無いが、失敗体験はいつになっても消えてはくれない。同じ過ちを繰り返さない為の生存本能なのだと理解してはいても、たまに記憶を消したくなる衝動に駆られてしまう。
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訪問者は何のために地下迷宮に潜るのか。一つはちょっとしたお小遣い稼ぎ。地下迷宮の壁は岩肌となっていて、そこを掘ると色んなレアメタル、レアアースが手に入る。
これらは鉱脈みたいに固まって出てくることはなく、また掘り尽くすと言うこともない。重機類はゲートが狭くて入れられないし、それなら素人でも数が多い方が効率が良い。と言う事で訪問者の需要は常にある。
それと魔凝核もお金になる。弱い魔物から出てくるものでも色んな物に利用されており、こちらも需要がある。あとは探索者になる人を少しでも増やしたいと言う政府の思惑もあり、成り手の促進も兼ねて魔凝核の買い取りも行っている。
と言うのを店員さんに貰った冊子で確認した。今はショッピングモール内にあるベンチにポツンと座っている。と言うかこれ、ステータス取得の時にも貰った様な覚えがある。あの時はよく見もせずにカバンの中に押し込んでしまったけど、色々と書いてあったんだな、コレ。
「次の仕事への繋ぎとしてもアリだな。本来の目的をメインにしつつでコツコツとやるか」
本来の目的はもちろんスキルレベルを上げるためだが、俺と同じようにそれ目的に潜る訪問者も多い。
生産系スキルの人や、強い戦闘系スキルを得られなかった人も第一層でレベル上げを行う。そのついでに小遣い稼ぎも出来るし、素材も集めることが出来る。国民のスキルレベルが上がれば、ギルド側、政府側にもメリットがある。
こうした事から訪問者は歓迎されており、装備の貸し出し、定期的な地下迷宮講座や、探索者への護衛依頼(個人やパーティーの護衛や、第一層内のパトロール)と、福利厚生?も手厚いわけだ。もちろん探索者にもメリットはあるよ。
ちょっとしたイベントがあったりしつつ時間を使ってしまったけど、地下迷宮に潜る時間はまだあるだろうか。時間は16:24、微妙な時間だな。晩飯も買いたいしな。
それに、津賀ともう一人も潜るようなこと言ってたよな。潜るなら当然ここから直ぐにあるギルドだろうし。
うん、明日だ明日。地下迷宮やギルドに関しての調査も足りないのが分かったし、今日はそれに充てて早めに寝よう。決して津賀と顔を合わせたくないなーとか思ったわけでは無いのだよ。
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◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.3
・身体器用 Lv.2
・息 Lv.0
・気 Lv.0