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【40000PV感謝!】シンタイキヨウカってなに?  作者: taso
第二章 新たなる躰
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74話.探索者試験の申請、弱い自分を見つめ直す


74話.探索者試験の申請、弱い自分を見つめ直す



「善は急げ、か。申請して来るかな?」


 時計を見ると時刻は九時半を回ってる。もうギルドはやってる筈だし、探索者試験の受験申請をしに行くか。


 探索者試験はいつでも申請は出来るし、いつでも試験を受けられる。自動車の試験みたいなもんだな。国家資格と違い年に一回とか決まった日にちがあるわけじゃないようだ。


 ギルドが地方に点在しているため、地方自治体が管轄するからなのかもな。知らんけど。あとは受験者がそもそも少ないとか?それの方がありそう。


 必要なのはマイナンチャラカードと申請書だけ。申請書は向こうで書けば良いらしいから、身軽に受けに行ける。少し気が楽になったな。


「爺ちゃん、婆ちゃん。そして父さん。俺、探索者になるよ。とか言って受からなかったら、その時は笑ってくれ。……身体も健康になったし、今ならなんでもなれると思うんだ。だから大丈夫だよ」


 神棚のある部屋で手を合わせて、三人に誓いを立てるように御祈りをする。自分の背中をみんなに押して貰えるように。

 まだ何かをする際に躊躇してしまうのは抜けない。これまでの失敗体験、挫折体験が尾を引いている。


 体質が変わればなんでも出来る。そんな風に自分に言い聞かせてはいたが、実際はそうでは無かった。そりゃそうだよ。スキルを得て僅か二年と少し。スキルが変化してからは一ヶ月も経っていないんじゃないか?流石に急激過ぎるぞ!


 それでも、俺にとってはこの26年の中で一番有意義な時間を過ごしている自覚がある。その変化にまだ頭が追い付いていない感覚もある。


 探索者になる。それはそんな濃い時間の中でもかなりのビッグイベントだと思う。俺の未来すら決めてしまうような決断だと思う。それでも……。


「うん。もう大丈夫。いっぱい考えて、時間を使った。過去の俺を慰さめるのは、もう良いよな?」


 まだなににも成れてはいないが。それでもこれが、第一歩。踏み出すぞ!



 今日も『進退強化』と『気』を使いながら、桜色のボックスカーでギルドに向かう。季節は秋の色を濃くして、空は秋晴れ。気温も過ごしやすいものになっていた。


「浸水もしておいたし、気候的にニンニクを植えても良さそうだ。受験申請が終わったら手を付けよう」


 家庭菜園用の畑が余ってるからと始めたニンニクの栽培。実際はまだ植え付けもしてないけど、準備はとっくに出来ている。


 新しい事を始めるのが俺は怖かった。探索者になる事も、出来そうだと言う自信がありながらも躊躇して先送りにしていたし。


 それでも自分を変えたくて、自信を付けたくて動き出そうとしている。


 何かをする喜びを得られるようになるには。何かをしたいと考えられるようになるまでには。きっと苦労は多く、挫折もする筈だ。

 家庭菜園だって上手くいかない事も多いだろう。成長が遅かったり、病気に罹ってしまったり。


「強がってもダメだな。悪い結果ばかりを考えている」


 出掛ける時はあんな事言ってたくせに。なにが『過去の自分を慰さめるのはもう良いよな』だ。ふざけるな。そう簡単に変われるかよ。今だって結果がどうなるかって考えると、こんなにも怖くて仕方ないのに。


 とは言え、俺の大嫌いな“結果論者”にだけはなりたく無い。どんな結果がこの先待っていようとも、俺はそれまでの過程や努力を大切にしたいし、評価したい。

 過去の自分を労える人間になりたい。過去の俺を切り離す事は出来ないし、したくない。


 だって結果は後からついて来るものだから。振り返らないと見えないものなんだから。


 後から振り返って、結果だけを見て分かったような顔をしたくは無い。やれるだけやったよなと、後悔の少ない気持ちで迎えられるように。そんな未来を夢見て、今を歩き続けよう。



 ギルドの玄関を抜けるといつものロビーだった。そこそこの人たちが座席で順番を待っていて、受付ではひっきりなしに利用客を応対している。


「おう、菅田さんじゃねーか。今日も潜るのかい?」


 声を掛けてくれたのはケンゾウさんだった。大ベテランの探索者で、ギルド探索者として治安の維持も務めてくれている大先輩。


 そんな大先輩に今も気にかけて貰えて、声を掛けて貰えて。俺が探索者になれるんじゃ無いかと期待してくれている。だから俺が昨日潜った事も知ってくれているし、心配もしてくれているんだろうな。


 今の俺には、結局自分の為だけに動く事は無理だった。一花の為、白百合の為、仲間たちの為に何かをしたくて、ようやく動き出す決心がついた。


 人はきっと一人では生きられない。誰かがいるから生きていけるし、誰かがいるから頑張れる。それはきっと弱さでは無い。強さの筈だ。俺はそう思いたい。


 ケンゾウさんの期待にも応えたい。こんな俺が、弱かった俺が、誰かの為に出来ることがあるなら。それもまた、俺の生きる意味になれる筈だから。


「探索者の受験申請に来ました」

「! 菅田さん、それって……!」

「はい。俺は、探索者になりたいんです!」


 ケンゾウさんの顔を見て、俺はそう言葉にした。



✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

菅田(スダ) 知春(チハル)


◆シンタイキヨウカ

・新躰強化 Lv.9

・身体器用 Lv.8

・進退強化 Lv.7

・待機妖化 Lv.5

・大気妖化 Lv.4

・気妖 Lv.1

・息 Lv.6

・気 Lv.5


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

幡羅(ハタラ) 謙三(ケンゾウ)


◆身体強化 Lv.12 体力 Lv.10 投擲 Lv.8

 体術 Lv.9

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