66話.戦闘と『気妖』、虚実の考え方
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66話.戦闘と『気妖』、虚実の考え方
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「……どないせいっちゅーねん!」
そりゃエセ関西弁も飛び出しますわ。一緒に潜ろう言うてはりましたやないかい!そのあんさんが何処か行かれてしもうたらかないませんわ!!……そろそろやめとくか。誰かに怒られそうだ。
「一花の様子、ちょっと心配だな」
何処か苦しそうな、辛そうな表情だったし、身体の火照りもあったみたいだけど。体調を崩していたのか?この前の事件によって免疫力が低下していて、風邪とかに罹りやすくなっていても不思議では無い。
思えば投石によって意識を失った時も、探索で体力が無かったと言ってたんだよな。
総合レベルの補正により、地下迷宮での感覚と地上での感覚では差が生まれてしまう。
それを考慮して、地下迷宮内で活動する時は、体力はある程度温存しておくのが常識となっている。
探索者である一花たちもそれは徹底されているだろうし、無理と言うか無茶をしてはいけないのが地下迷宮なのだ。
どうしようも無い状況に追い込まれた時には無理は必要になるだろう。その場を切り抜けなければいけない状況において、必要に迫られるのが『無理』と言うものだ。
対して『無茶』は危険な選択、突拍子も無い選択をする事だ。要するに、“無理をしなければいけないようなリスクのある選択”をする事が『無茶』だと思う。
「一花は感覚的な部分はあっても、無茶をするような奴じゃない……筈だ」
多少親しくなって来たとは言え、俺と一花の時間はそこまで長くは無い。だが同じ時代に同じ学校で過ごして来た一花は、率先して無茶をやるような性格ではなかった筈だ。
子供の頃の俺に対しての憤りも、武道を学ぶ者として、俺がやっている“無茶”を嗜めるような意味合いもあったと思う。
場を乱すな、そして自分を大事にしろ。身の程にあった事をやれ。全くその通りだと思う。
そんな一花が、ヘトヘトになるほど探索をするような事をやるだろうか?それは無茶と言うよりは、無理をしているような。つまり……。
「無理をしなければいけないような状態?」
例えばお金を稼がねばいけないだとか、地下迷宮にある特殊なアイテムを必要としているとか、あるいは……。
「予想は出来ても確信は得られない。今は考えても仕方ないな……」
探索者歴では俺は後輩どころか、まだ入学してもいないんだ。同業の白百合やアイモさんも居るし、サポートとしてフェイも居る。任せるべきは任せて、俺の出来る事をやるべきだ。
「戦闘訓練でもするか」
当初の目的でもあるし、今は知識以上に経験を積んでおきたい。これから“生やす予定”のスキルの為には、意識した戦闘を蓄積する必要がある。
それに『気妖』のスキルも生えた事だし。スキルが生える前とどう違うのか、考察もしておかなきゃな。
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「なるほど、イメージの補強か」
ゴブリンを中心とした混成部隊といくつか戦闘を重ねている。その中で『気妖』のスキルについても検証をしていった。その中で分かった事は、
・手順が必要だった『息』→『気』を省けるようになった
・妖化シリーズの“イメージ”に意識をあまり割かなくても発動が出来るようになった
・技としての攻撃力はそこまで上がっていない
とりあえず分かったのはこんなところだな。一番大きいのは簡略化出来るようになった事だ。簡略化と言うか、『気妖』と言うスキルの中にこの手順が入っているような感じか。
今のところは呼吸や意識にある程度集中する必要はあるが、ステータスからのスキル選択の手間が省けただけでも大きい。戦闘中の隙を減らせるからだ。
「虚実は出来るだけコントロール出来る様にしたいからな」
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武術や武道において、虚実を指す内容には幾つかある。例えば攻撃の虚実は、
・虚……無意識に近い、相手の不意を突く攻撃
・実……意識的で相手に気取られ易いが力強い攻撃
この使い分けが攻撃の極意とも言えるだろう。虚で相手の体勢を崩して、実で決定的な攻撃をしたり。
あるいは実の攻撃を重ねる中で、相手の意識の隙を突いて虚で弱点を狙ったり。
また防御面だと、相手の攻撃に意識を向けられていない状態が虚、相手の攻撃に対応する準備が出来ている状態が実だ。
「要するに意識と無意識の違いだよな」
これはどちらが良いかではなくて使いようであり、積み重ねでもある。その為には自分で制御出来る範囲の『虚実』を形にしておかないといけない。
防御の虚を装って相手に攻撃させるとか、攻撃の実で相手の余裕を奪ったりと。自分の中の引き出しを増やす事で、戦闘を優位に運べる。
とは言え『策士策に溺れる』なんて言葉もある。無闇に引き出しだけ増やしても、どこの引き出しを開けたらいいかとアタフタして隙を作ったりもするからな。
「一番良いのは、虚の性質を持たせながら実の威力がある戦いなんだが……」
そんな理想に近付く為にも、意識的な戦闘の蓄積、その後の整理、より良い形の模索と更なる蓄積。この繰り返しだ。
猫を始めとした人間以外の肉食動物は、赤ちゃんの時からじゃれあいを通して狩の練習、戦闘の訓練をしているんだから頭が下がる。人間も見習わないとね!
『気妖』に話を戻すと、スキルは便利なものだし戦闘の隙を減らせるものとなりそうだ。威力自体もレベルを上げていけばより強くなるかも知れない。
だが大事なのは自分自身の能力の底上げと戦闘の積み重ねだろうな。スキルに火力を期待し過ぎていてもダメだと言う事だ。
「と言うか、スキルが手加減してくれてる……?」
なんとなく『フルパワーでやったら怪我するよ!』と言う声無き声が聞こえてくるような、そんな感じがする。
もしそうなら、ほんと不甲斐ないと言うか、お気遣い頂きありがとうございます!と言った感じ。ほんま気張らんとアカンで!!
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◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.9
・身体器用 Lv.7
・進退強化 Lv.7
・待機妖化 Lv.5
・大気妖化 Lv.4
・気妖 Lv.1
・息 Lv.6
・気 Lv.5
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◆津賀 一花
◆ラビットラピッド Lv.22




