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【40000PV感謝!】シンタイキヨウカってなに?  作者: taso
第二章 新たなる躰
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63話.『実力も運の内』、俺の事情と一花の事情?

 昨日の前書きでもお伝えしました通り、今週は火・水・土曜日の更新となります。

 次回は30日の土曜日の午前1時となります。よろしくお願いします。


63話.『実力も運の内』、俺の事情と一花の事情?



「にしても、やっぱり躰道では戦わないんだよな?」

「まあな。あの時は殆ど教われていなかったし、以前に見様見真似でやったが、運動量がどうしてもキツいんだよな」

「そりゃそうか。まだまともに動ける身体になったばかりだしなぁ。訓練を積めば、いくらか省エネで動けるようにはなるんだけどな」

「ああ。達人の人とか、息を全然乱さないらしいな」

「そこまで行くには、努力だけじゃ難しいだろうな。その人達の努力を語れるほど知ってるわけじゃねぇけど、アタシには手が届かない領域だわ」


 躰道と言えば、最近はアニメの主人公が使ってるらしく、多少名前が知られるようになった。


 アクロバットな足技は見る者を魅了するんだろうが、やるとなったら大変だ。運足と言う歩法を使い、基本同じ場所には居ないように動き続ける。


 先の先、と言うやつだろうか?動きながら相手の隙を見つけたり、隙を引き出しながら相手の攻撃も避けられるようにと、意識して動く。


 武道とは持たざる者に力を与えるものでは決して無い。動ける土台があってこそ学び続けられるもの、だと俺は思っている。


 筋力の低さや体格の小ささを補ってくれるものではあると思う。柔よく剛を制す……と言うやつも事実だろう。


 だがそれは五体満足だとか、怪我や病気などのハンデが少ないと言う前提だろう。無理を通して習うものではなく、頑張れる余裕がある人が習うべきだ。


(まさに『実力も運の内』ってね)


 ことわざとして知られてるのは『運も実力の内』だが、俺は逆だと思ってる。


 産まれてくる環境は千差万別だ。国で違うのはもちろんの事、日本国内でも地域差がある。良い悪いは別としてね。


 そして家庭環境も様々だ。良い親、悪い親など、“親ガチャ”と言う言葉は聞こえは悪いが、『子は親を選べない』なんて言い方は昔からされていた訳だし、似たようなものだな。


『人にはな、それぞれの主観がある。その人だけの視野があり、生きてきた時間と環境があり。それによって培われた倫理観が、そして価値観がある』


 爺ちゃんの言葉を改めて思い出す。人の『主観』を形作るもの。それがまさに育ってきた環境であり、そして“運”なのだ。


 良い運の中で得られる環境、そこで培われる実力と。悪い運の中で得られる環境、そこで培われる実力と。果たしてその二つは同じモノになり得るだろうか?


 どうして“努力次第”などと言えるだろうか?そんなこと言える奴は、きっと運が良いのだろう。もしくは偏屈な奴か。少なくとも俺とは“主観”が異なる。


 俺たちは与えられた運の中で、自分の出来る事を見つけて、実力を身につけていかなければいけない。


 だから『実力も運の内』なのだ。


 悪運は悪運でメリットもあるだろう。乗り越えられたら忍耐強い人になるし、その環境でしか得られない知恵なんかもある筈だ。


 だからと言って悪運を歓迎したりは出来ないよな。物語みたいに報われると分かってやれる事なんて、現実には無いんだから。ステータスやスキルがあるこの世界はまだ恵まれている方だ。


 そもそも『運』と言う言葉に善し悪しは無く、どう判断するか、どう活かせるかはその人次第ではあるが。そうやって活かせるかどうかすら、結局は運なのだ。


 俺のように良い人たちに出会えた事。祖父母や一花たち、ギルドの受付嬢さんやケンゾウさん。彼らに出会えたから今がある。例え両親を失っていたとしても。


 なんて事を、一花の後ろを歩きながら考えていた。ほんと、良い縁に恵まれたな。この運は大切にしていかないと。


 そう言う意味では『運も実力の内』ではあるのだろう。良い運を得られた人には響く言葉だ。運と縁を大切にしなさい、ってね。



 ゲートに潜る為の列に並んでいる。前に一花が居て、その後ろに俺がいる。こう表現するとストーカーみたいで嫌だが。


 一花は茶色とピンクが混ざったような色合いの髪を、ウルフカットだったか?襟足の長い髪は首元を見せたり隠したりと、ゆらゆらと動いている。


 白百合の時にも思ったが、俺はうなじフェチなのだろうか?それか身体が変わった後にたまたま白百合を見て、それが刷り込まれてるのか。


「……なんか付いてるか?」

「!?いやいや、付いてない!と言うか見てなかったぞ!」

「はぁ〜。まぁ良いけどよ」


 一花は首の後ろをポリポリとかくと、後ろの毛で首を隠すようにして髪の毛を整えた。


 うーん、この思春期男子ばりの性欲のようなもの、持て余してるな。なんで生殖器とかまで改造しちゃうかなー。生き物としては良い事なんだろうけど。結局は俺次第、自制出来るようにしていかないとな。


「知春の……スキ……か……?でもアタシのとは……」

「俺が何を好きだって?」


 え、うなじが好きって思われてる?それは誤解なんです!インプリンティング的なサムシングなんです!!


「はぁ!?んな事言ってねーし!黙って並んどけよ!!……ったく、人の苦労も知らずに……って、言ってないのはアタシだけどよ……」


 なんか怒らせる事言ったかな?うなじ見てたのがまずかったか?人の苦労も……とか聞こえたけど。うーん……分からん!


 ……ふと過ぎったのが昨日の出来事。一花のスキルについて聞いていた時、表情が固くなる場面が一瞬あった。


 一花は、何か言ってない事があるような事を呟いていたが、それは昨日の出来事と関係が有るのだろうか?


 恐らくだが、白百合とは既に共有はしているんだろう。高校の頃からの仲だと言うし、女性同士で気安い関係なら、話しやすい事も多いはずだ。男の俺が何か出来る内容なのかも分からないし。


(それでも、何か力になれるならしたいんだよな。一花やみんなの力になりたい。俺はもうこれまでの俺じゃ無いんだから……)


 なにをするにしても諦めてばかりいた、そんな俺ではもう無いんだ。まだまだひ弱ではあるが、それでも誰かを支えられる力はあると思う。この前に一花を連れて地下迷宮を脱出した時のように……。


 並んでいた列はだいぶ前へと進んでいた。目の前では、探索者装備に身を包んだ一花がゲートの沼へと沈んでいき、その後ろから俺が足先をゲートに沈めていく。


 その黒く見通しの悪い沼を見ながら、どうか俺の大切な人たちが苦しみに足を取られませんように。前の見えない不安に悩まされないようにと、ただそれだけを俺は思っていた。

✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

菅田(スダ) 知春(チハル)


◆シンタイキヨウカ

・新躰強化 Lv.9

・身体器用 Lv.7

・進退強化 Lv.6

・待機妖化 Lv.5

・大気妖化 Lv.2

・気妖 Lv.0

・息 Lv.5

・気 Lv.5


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

津賀(ツガ) 一花(イチカ)


◆ラビットラピッド Lv.22

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