62話.一花と地下迷宮へ、脚装備は有料です
今週は木、金とスマホが使えない状況になるみたいなので、今日と明日の水曜日の午前5時に更新とさせて頂きます。ご了承頂けますと幸いです。
なお土曜日はそのまま午前1時に更新を予定しています。
62話.一花と地下迷宮へ、脚装備は有料です
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【URMEN内チャットデータ】
“ちはるんさんが参加しました”
おい、なんでちはるんさんって
名前なんだよ!
えー?ちはるんはちはるんだし
なー?
パンダはなんでパンダなんだ?
って言ってるようなもんだな
元々はレッサーパンダが真のパ
ンダだった。それを奪ったのが
今のジャイアントパンダ
んな話はしてねーよ!
んで、レッサーパンダの
レッサーってなんだ?
レッサーはねー、小さいとか、
劣ってるって意味かなー?
うわー、可哀想レッサーパンダ
ね。ジャイアントパンダ、許す
まじ…
なあ、俺を置いてパンダ談義に
花を咲かせないでくれる?
知春も混ざる?パンダ談義
おう、お前も話そうぜ!パンダ
談義をよ!
そうじゃなくてだな!?
四人もいると賑やかだねーw
◆
そう言えば、一花と白百合もURMENのメンバーだったらしいんだが、セキュリティの面でお互いに秘密にしていたと言うすれ違いがあった。昨日フェイがお互いの友人だと分かり、俺も加えた四人でルームを作ることになった。
フェイの管理しているアプリだし、四人で話していても安全性は高いからな。これまでと同じく、伏せられる範囲で色々と話し合おうと言うことになった。
女三人よれば何とやら、俺はなかなか話に加わりにくいが、なんとなく三人が気を利かせてくれている。こうやって話せる人たちがいるだけでも、俺には無かった新鮮な体験だ。
地下迷宮だけの事に限らず、俺たち四人やシモナさん、通称『アイモ』も交えて、何処か遊びに行きたいねー、なんて話も出た。
白百合の体調もあって会うのは夜とか屋内になるだろうけど、以前言ってたダーツバーや、アミューズメント施設なんかにも行くと三人は話している。
正直俺は遠慮したいが、百合愛好家としては百合を愛でる事も至福の時だ。せめて邪魔にならないように、間に挟まらないようにと気を付けたい所存だ。
ハーレム?馬鹿なことを言ってはいけませんよ!今は人と人としての付き合い、そして百合を愛でる時なのだ!恋愛など知らん!!
……まあいつかは出来たら良いけど、な。その時期や相手がどうなるかは、やっぱり今でも想像も付かない。なんたって俺は青春初心者なんだから。俺にとっての春は初春も初春、まだ雪の残る季節なのである。
◆
「おっす、待ったか?」
「いや、さっき来たところだ」
「はは、菅田と……知春とこんなやり取りをする仲になるなんてな。不思議なもんだ」
「ああ、なんか面映いよな。今日はよろしくな」
「おも、は……?まぁ第一層だし、気楽に行こうぜ」
俺の家で集まった翌日、俺は一花とギルド前で待ち合わせた。お互いの車に乗ってやって来た形だ。
グループチャットで『知春って実際のところ、どれだけ戦えるの?』と言う話になり、今日の昼に空いてた一花と地下迷宮に潜る事になった。
一花とは地下迷宮で色々とあったわけだが、俺の戦闘らしい戦闘は見せられていなかった。全部投石で片付けていたし、一花は殆ど眠っていて記憶も曖昧だろう。
本当は俺が訪問者として潜り、一花はその護衛として一緒に潜って貰う予定だったが、
「お前護衛が必要なレベルじゃないだろ?そんな相手に護衛料なんて貰えるかよ」
と言われてしまったので、昼飯を奢る約束だけして潜る事になった。
ちなみに一花の口調はコイツのオヤジさんのが移ってしまったそうだ。オヤジさんとはあまり仲が良くないらしいが、詳しくは聞いていない。話したいなら聞くけど、聞き出す気は無かった。
俺の家も色々とあったからな。母さん、唯一生きている“かも知れない”家族だ。今はどこに居るんだろうか?元気でやっているだろうか?……なぜ家を出て行ってしまったんだろう。俺のせい、なんだろうか。
「おい、その考え込む癖は相変わらずだな。戦闘中は危険だから、気を付けろよな」
「イテ、悪い悪い。んじゃ行こうぜ」
そして俺はゲスト用、一花は探索者用の受付で処理を済まして、それから北口の入場口前に集合する事になった。受付嬢さんは相変わらず美しかったです。
ゲートに入る為の入場口は東西南北に作られている。構造上から西は男性用、東は女性用になっており、エレベーターで行けるのは北か南の二つになる。
パーティーメンバーが全て男性なら西口から入るとか、逆なら東口からとか、そう言った使い方も出来る。
それで俺たちのように性別が分かれてる場合は、北口と南口のどちらかを利用するのが一般的な流れだ。
「おう。……お前その色好きだな。桜色ってやつ。名前が知春だからか?」
「まあな。俺は春を知る男だぜ?」
「言ってろよ。あれ、脚の“オプション”は付けてないのか?」
「ああ、俺は拳だけだからな」
待ち合わせた一花と再会して雑談をしながらゲートに向かう。そう言えば脚装備は着けた事無かったな。
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初期装備には色々パーツがあるのだが、脚装備だけは別途有料のオプションになっている。
理由としては簡単なもので、“損耗が激しい”からだ。
第一層に出てくる魔物で一番厄介なのはスライムで、中に含まれる酸性の液体が特に困りものとなる。
脚装備も普通に貸し出されていた頃、ついつい足で蹴ってスライムを倒す輩がいた。そうなると高確率で足に酸性の液体を浴びる事になる。
「スライムの体液はマジで厄介なんだよ。装備だけじゃ無くて服や皮膚にも飛び散るからな。当たったらしばらく痛いんだぜ?」
一花が言うように、貸し出しの初期装備だけでは無く、利用者の私服や顔なんかにも被害の恐れがある。と言うか何度も事例があったわけだが。
そこでギルドとしては“安全上の理由で”脚装備は貸し出しを別途有料にし、スライムは投石での討伐、もしくは剣や槍などの長物を使って倒すようにと指導をする様になったわけだ。
それでも体液を浴びるリスクはゼロにはならないが、足で蹴って倒すよりはリスクを減らせるし、ギルドとしても損耗が云々とケチな事をあまり言えない。命にも関わるからな。脚装備の有料化が精々だったのだろう。
「まぁ明らかに損耗が激しい場合は後払いさせられるからな。結局は投石が最強ってわけだな」
「だな。最初に投石で魔物を倒した人は偉大だ」
「どんな人なんだろうな?なにも情報が無い中、気味の悪いゲートにまで潜って行くなんてな。正直ゾッとするよ」
地下迷宮の歴史を漁ってみても、それらしき情報は無かったんだよな。地下迷宮は相変わらず謎ばかりだな。
実は自分の意思では無く、事故や事件に巻き込まれて入ってしまった……とかもあり得そうだな。
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◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.9
・身体器用 Lv.7
・進退強化 Lv.6
・待機妖化 Lv.5
・大気妖化 Lv.2
・気妖 Lv.0
・息 Lv.5
・気 Lv.5
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◆津賀 一花
◆ラビットラピッド Lv.22