57話.白百合とスキル、ディープフォレスト
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57話.白百合とスキル、ディープフォレスト
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一花のスキル『ラビットラピッド』の話を聞いていた。脚の速さに特化した効果に加え、ラビットならではの警戒心、危機察知能力。また風の属性への親和性など、色んな効果のあるスキルであるようだった。
未知な部分も多いみたいだが、そこら辺は俺も人のことは言えない。不確かな部分は一緒に戦う上で足枷になる場合もあるし、情報を知る事で責任やリスクをお互いに負う懸念もある。
今後スキルへの理解やチームとしての戦い方を通して、話せる部分を拡げていけたら良いなと思う。
「次は私」
「白百合は装備の話からして、植物への親和性が高いんだよな?どんなスキルか興味あるな」
「ああ、白百合のスキルは……」
「私のスキルは、ダークエルフになれる力」
ダークエルフ……だと?
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「白百合!お前いきなりそんな事言ったら……」
「大丈夫。知春には話しておきたい。私の体質にも関わる事だから」
ダークエルフ。古くはスノッリ・ストゥルルソンが著した『エッダ』に書かれた種族である。ファンタジー作品でも数多く見られ、エルフと敵対している、あるいは蔑視されているとか、立場の弱い民族として扱われる事も多い。
それ故に、物語の主人公とは友好を育むことも多く、魅力的なヒロインとして描かれる事も少なくない。
何を隠そう、俺はダークエルフが好きだ!ダークエルフと言うか、褐色肌の女性が好きだ!!
物語によっては青黒い肌だとされるものもあるが、それはそれでヨシ!肌の色がコンプレックスと言う設定もまたヨシ!そんなコンプレックスごと俺が抱き締めてやる!!
とまぁ、そんな空想を数秒で終わらせ、俺は白百合たちの話に耳を傾けていた。
「ダークエルフになれるって事は、変身する能力ってことか!?」
「なんでそんな鼻息荒いんだよオメェはよぉ……」
「知春。あなたもさてはダークエルフ信奉者?」
「白百合もか!良いよな!ダークエルフ!!」
俺たちは無意識に手を取り合っていた。同志を見つけたような、いや正に同志を得た瞬間であっただろう。そんな俺たちを一花とフェイはとても冷めた目で見ている。解せぬ!
「ちはるんってたまーにバカになるんだよねー。もう慣れたけどさー」
「白百合もなんだよ。なんでそんなにダークエルフ愛が強いんだ……」
俺は切々と、ダークエルフの良さについて語りたい気持ちをグッと抑える。明日になってしまうからな。
「それで、具体的にはどんなスキルなんだ?変身するのか!?」
そこを聴きたいだけとかでは決して無いけど!決して!!
「まだ変身と呼べる段階には至ってない。でも発動中は肌の色が薄らと変わる。あと耳も気持ち伸びてる感覚がある」
「おお!凄いぞ白百合!」
「ふふふふ。やっぱり知春は良い。私の目に狂いは無かった」
「別の意味で狂ってんだよ!早くスキルの効果について話せ!私が代わりに言うか!?」
一花様がお怒りなので、俺たちもふざけるのはやめて、真面目な話に戻る事にした。本当だよ?ちょっと戯れてただけだよ?
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「スキルの効果としては『ダークエルフの恩恵を受ける』と言ったもの。隠密能力、視野、動体視力の向上。それと剣術や弓術への補正効果。最後に植物の根や蔦で武器を作れたりも出来る」
「おお、凄いな。暗殺系の動きに長けているのか。武器が作れるってのも強いな」
「剣はショートソードでも短めのもの。突き刺す攻撃、レイピア系にする事が多い。弓も含めて、貫く攻撃に特化してるみたい」
ショートソードとは馬などに騎乗しない歩兵が扱う武器で、片手持ちで戦うのが基本となる、と聞いた事がある。
よくある誤解として、ロングソードやショートソードには長さの基準があるわけでは無いらしい。馬上から攻撃する為に長く作られたのがいわゆるロングソードと呼ばれるものだそうだ。
こちらは斬るよりも敵を刺し殺す用の武器なんだとか。馬に乗ってるならそりゃ、斬るよりも刺す方がやり易いよな。自分の脚や馬を斬ったらいけないし。
それでダークエルフの場合は、森の中や暗い場所で潜伏しつつ戦う事が多いため、忍者刀のように携帯のしやすい、短めの武器が得意なんだってさ。
加えて障害物の多い事も考慮して、斬る動作より刺す事をメインとしているので、作る武器も自ずとレイピア系のものになる。
作れる武器は限定されてはいないが、スキルの効果に合ったものとなると細くて短め、刺し貫くための剣に自然となってしまうんだな。
「だから地下迷宮で初めて会った時は、武器を携帯していなかったのか」
「うん。戦闘以外では武器は消してしまうから」
「ただ魔力を消費して作ってるから、管理は気をつけないとな。戦闘が続きそうな時は消したり出来ないから、ずっと手に持ってなきゃいけないし」
「腕に固定してるからそこまで疲れないけど、不便ではある」
つまり、白百合は遊撃として動くのがベストなんだろうな。一花が前線で回避タンク兼アタッカー。白百合は隠密からの先制、その後は隙を見て剣で攻撃するか、弓による中距離からの狙撃。
俺が入るとすると、待機妖化による防御主体が良いだろうか?ただ身体が頑丈なわけじゃないからな。一花と白百合で形は崩さず、俺が遊撃に回る方が無難かも知れない。
やっぱり強度が欲しいな……。
「アタシとしては、頻繁に使って欲しくはねーんだけどな……」
「一花の危惧は分かる。それでも私は……自分を変えたい」
俺が二人とチームを組んだ時の想定を色々と考えていると、一花と白百合が言い合いとまではいかないが、意見をぶつけていた。それは仲の良い二人にしては珍しいものだった。
自分を変えたい。その言葉は俺にはとても強く響く、他人事とは言えないものだった。
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◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.9
・身体器用 Lv.7
・進退強化 Lv.6
・待機妖化 Lv.5
・大気妖化 Lv.2
・息 Lv.5
・気 Lv.5
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◆津賀 一花
◆ラビットラピッド Lv.22
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◆陽乃下 白百合
◆ディープフォレスト Lv.27
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◆潤目 フェイ
◆知性 Lv.12 投擲 Lv.4 観察 Lv.10
鑑定 Lv.1




