55話.仲間と共有、共有と責任
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55話.仲間と共有、共有と責任
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【URMEN内のチャットデータ】
それで話すスキルの内容だけど
今のところはロングスキルだけ
で良いと思うよ
ロングって言うと、新躰強化と
か、身体器用だよな?
なんでロングだけなんだ?
そそ、あとは進退強化もだね
なんでかと言うと、ショートと
ミディアムについては、まだ分
からない事が多いからねー
スキルって本人でも分からない
事がとっても多いし、ちはるん
のは特に未知の部分ばかりでそ
でそ?
ああ、そう言うことか。背中を
預ける仲間に対して、不安定な
部分を話しても困惑させるか。
そそ。スキルについて相談した
いとか、理由が出来た時はもち
ろん話しても良いよ。そこら辺
はちはるんに任せるねー
分かった。ありがとうな
親指を立
てるフェ
イのスタ
ンプ画像
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と言う話をしていた。仲間になるんだから隠し事はせず、キチンと全部話した方が良いんじゃないか?
そう言う気持ちが無いわけではない。
ただ全てを話すこと、曝け出す事が責任のある言動なのかと言うと、また違うのではないかと、俺は思っている。
(恋人だからスマホも見せられるよね?ってヤツ。あんなバカな話無いよな)
スマホは持ち主本人の情報ばかりでは無い。家族や友人、会社の同僚などなど。色んな人の情報がそこにはある。それを見る権利も自由も、誰にも無いはずだ。何の責任も無いんだから。
疑う事を否定するつもりは無い。疑われる事をする恋人も悪いし、疑うのも信じる事の一部だ。だけどなんでもしていい、させていいと、そんな無責任な話では無いんだ。
俺のスキルで言うと、ユニークスキルの内容を話す事で、一花たち二人にリスクを背負わせると言うのももちろんだし、戦闘面でも確度の低い情報を共有する危うさもあると思う。
(少なくとも、三人での戦闘を経験して、自分たちが出来ること、出来ない事を共有してからでないとな。まず本当に探索者になれるのかも分からないんだし)
それに……。俺はチラッと白百合を見る。白百合は一花とフェイと、装備について未だに話を続けている。
(白百合は“陽乃下”の御息女、だからな)
白百合から直ぐに目を離して思考を続ける。俺は顔を読まれやすいみたいだからね。人の顔も自由に見れないとは……。
フェイが一番危惧していたのは陽乃下家。そして地下迷宮ディベロップメント、通称CMDの存在だった。
それは何も、白百合が情報を家に流すと考えているわけでは無い。白百合や一花の人柄は信じられるものだと思ってるし、信じたいと思える人達だ。
だが周りにどんな悪意が有るのかは分からないのだ。探ろうとする人、色んなやり方で害そうとする人がどこにいるか分からない。
そう言った意味でも“責任”は安易に負わせるべきでは無いだろう。
シンタイキヨウカと言うユニークスキルがある。本来ならそれを知ってるだけでも、一定のリスクを負わなきゃいけなくなるだろうし……。
地下迷宮の第一層ですら悪意は有ったのだから。探索者は人格を重要視されるとは言え、彼らにどんな息が掛かっているかは定かでは無い。今後はより気を付けていくように意識していきたい。
(俺がフェイを信頼しているのは、そう言った責任を一緒に共有してくれているから、なんだろうな……)
特殊な出会い方故に色々と話し合う間柄になったわけだが、それでも自分で決めて、責任と自由を共有することを選んだ相手だ。
異性として以前に、人間として頼りにしてるんだよな。歳下の子に負わせるのは申し訳ないんだけどね。
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「装備について色々教えて貰ったし、俺も自分が分かってる範囲でスキルを話す事にするな」
「確かアタシたちと同じ、ユニークスキルだって話だよな」
「うん。スキルのお陰で体質が改善されたとも聞いた」
「そうなんだ。実は……」
それから俺は、ショートスキルの『気』と『息』の二つ、そしてミディアムスキルの『待機妖化』と『大気妖化』の妖化シリーズには触れないようにしつつ、これまでの事を話した。
「シンタイキヨウカ……興味深い」
「内臓を永続的に強化するなんて、不思議なスキルだな。でもそれのおかげで知春の体質が良くなったんならアタシも嬉しいよ。散々苦しんできたからな……」
「ああ。ありがとう一花。一花たちのように、理解してくれる人たちが居たから頑張れたってのもあるから。みんなには感謝してる」
一花は涙ぐんでまで、自分のことのように喜んでくれたし。白百合とフェイもウンウンと頷きながら笑顔で応えてくれた。
こっちに戻ってきてスキルが変化するまでは、こんな風に俺を考えてくれる人たちが出来るなんて思ってもみなかったな。
俺が探索者になれるかは分からないが、一花にも白百合にも、出来る範囲でこの感謝は伝えていきたい。
探索者やその周りに居る、俺たち以外の懸念さえ無ければ、二人には色々と話してしまいたいぐらいに信頼している。一花含めて面識が大してあるわけでも無いのに、不思議な話だよな。
「それにしてもスキルから新しいスキルが派生するなんて。聞いたこと無い」
「だよな。アタシたちも探索者暦自体はまだ浅いけど、それでも周りの探索者からも聞いたことねーよな」
「ああ。だから他人に知られるとちょっかいを出されたりもしそうだし、みんなにも迷惑になると思う。だから出来るだけ漏れないように気を付けてくれ」
「もちろん。知春の事は私たちが守る」
「ああ!安心してくれ!」
俺の方からキチンと言葉にして頼んだし、二人もフェイも改めて頷いてくれた。これからスキルに関してもっと調べて、やがて二人にも話せる事が増やせるようになると良いな。
そのためにも俺はもっと強くならないといけないし、探索者になれるように準備を重ねていきたい。攻撃系のスキルが無く、戦いへの不安が拭えないのがどうしても気になる。“気妖”が生えそうな時はやった!と思ったのになぁ……。
それからフェイとまたスキルについて話し合いたい。秘密の話し合いには二人にもいずれは参加して貰いたいけど、これから様子を見て考えていきたいところだ。
人目を避けて集まる必要があるが、人数が増えるほど他人に目を付けられるリスクは高くなっていく。スキルの共有、秘密の共有はやっぱ苦労するな……。
「それじゃあ、次は私たちのスキル」
「ああ。アタシたちもユニークスキルだからな。分かってる事はまだ多くねーけど、知春にも聞いておいて欲しい」
「私も二人のスキルは知ってるから、推測も含めて考察出来る事は話しても良いかな?」
「うん。フェイの考察は本当に助かってる」
「だな。さすが天才科学者様だぜ!」
「でへへー」
そうか。装備を作る際にはスキルの内容もある程度分かってないと作れないもんな。フェイは二人のスキルについても責任を負って管理してるんだな。改めて大変な仕事だよな。仕事柄守秘義務ばかりだろうし。
今度時間がある時にでもフェイを労ってやりたい。飯でも作ってやろうかな?栄養考えた物食べたら体力も付くだろうし!
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◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.9
・身体器用 Lv.7
・進退強化 Lv.6
・待機妖化 Lv.5
・大気妖化 Lv.2
・息 Lv.5
・気 Lv.5
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◆津賀 一花
◆ラビットラピッド Lv.22
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◆陽乃下 白百合
◆ディープフォレスト Lv.27
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◆潤目 フェイ
◆知性 Lv.12 投擲 Lv.4 観察 Lv.10
鑑定 Lv.1




