52話.未知の遭遇、既知の交友
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52話.未知の遭遇、既知の交友
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実は“気妖”もまたスキル化するんじゃないかと思っていた。でも地下迷宮を出る時間になってもそうはならなかった。
以前も内臓の強化をしたくて『胃』や『心』のスキルを生やそうとした事があったが、それは叶わなかった。果たしてどんな仕組みでスキルは発生しているのか。何か条件が有るのだろうか?
色んな仮説は思い浮かぶが、どれも検証は難しいだろうなと諦めている。確かめようが無いものばかりだし、熟練度みたいに時間や回数での変化、と言う条件もあり得ない話では無い。
「俺のスキル……ユニークすぎ?」
時刻は昼過ぎ、午後1時半。ショッピングモールのベンチで50分にフェイと待ち合わせをしていた。そろそろ行こう。
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「やほやほー」
「おっす」
午後1時55分。5分遅れではあるが、前もって前後するかもと連絡は受けていた。白百合たちとの待ち合わせにも余裕があるし、そのまま二人で向かうことにした。
「ごめんごー、ちょっち遅れちー」
「なんだよそれ。ちょっと真似したい日本語じゃないか」
「そう?使っていーよー」
フェイと普通に話せている。恋に焦がれる感じは無い。やっぱり身体に引っ張られている部分がありそうだな。それはそれで恋愛の形なんだろうけど。
俺は人として尊敬し合える関係が良い。その延長線上に恋愛があったり、友愛があったり。
特別な関係では無く、ふと自分たちの関係を振り返った時に名前を付けるなら、きっとこんな関係なんじゃね?
そんな程度で良いと思ってる。関係に形を付ける必要性を、未だに感じられずにいた。
「難しい話ー?」
「うん?いや、自分の変化について少し」
「そー。スキルって難しいからね。色んなスキルがあるし、人それぞれだしさ。でもでもー、ちはるんはちはるんだよ。ね?」
「……ああ」
白百合にも、似たような事を言われたっけ?だとしたら、これから会う三人は。きっと良い関係になれるんじゃないかと。そう思う事が出来た。
「そうだ。また話したい事が出来たんだけど、当分時間は空けられそうに無い?」
「うーん。難しいかなー。この後もランチの後に装備関係の案件とか予定入ってるし。またスポットがスポッと出来そうな時に連絡するー」
「相変わらず忙しそうだな。頼むよ」
「おけー」
そんな話をしながら『探索者エリア』を通り、奥にある地下迷宮関係の書籍が多いブックストアを抜け。さらにその奥にあるのが『Sea Coffee』だ。探索者や一部の関係者しか利用が出来ない喫茶店で、俺一人での利用も当然出来ない。
店の外でフェイと待ち合わせていたのもそのためで、俺は静々とフェイの後ろに着いて店に入って行く。
フェイが女性二名との待ち合わせと言うと、店員さんから既に来ていると案内される。グラスを拭いてるマスターが『ついに修羅場か?』みたいな目で見ているような錯覚を感じながら、俺は黙って個室へと急ぐ。
個室の木製の扉を開けると、そこに白百合と一花の姿があった。楽しく話しながら飲み物を飲んでいて、やはりこの二人はてぇてぇだった。一花も元気そうで安心した。
「お待たせ二人とも。一花、退院おめでとう」
「おう、ありがと。まあただの検査入院だったけどな。白百合が大袈裟なんだよ」
「油断はダメだよ一花。探索の時も一花は前に出過ぎる。それで湧いた魔物に後ろを取られた事が何回も」
「はいはい悪かったよ。んで菅d……知春、が紹介したいってのは?」
しばらく三人でやり取りして、そう言えばフェイの姿が見えないのに気付いた。顔を動かすと、俺の後ろにいつのまにかフェイの姿が。あれ、結構人見知りするタイプだった?
「フェイ、紹介するな。こっちが津賀一花で俺の昔馴染み?同級生?小中まで同じだったヤツ」
「どもども」
「それでこちらが陽乃下白百合さん。一花……と一緒に探索者をしてるって」
「初めまして……。では無いわね」
んん?どゆこと?さゆりんどゆことー?
俺の背中から顔を出したフェイも、驚いたような顔で、丸眼鏡を掛け直していた。
「ちはるんの知り合いって白百合さんたちだったのー!?」
「ふふふふ。本当に知春と居ると面白い事ばかり」
「だな。まさか潤目さんだとは予想だに出来なかったぜ」
……んんんん???
◆
「まさか探索者の装備ってこの二人のだったとは……」
「一応は社外秘扱いだからねー。私と先方、つまりこの二人が問題無ければ話せるけど」
「なんならこの後の打ち合わせも一緒にやるか?」
「それは流石に難しいと言うか、フェイ次第?」
話をまとめると、フェイと初めて会った時に聞いてた“探索者の装備開発”にも携わっている、その一つがこの二人の案件なんだそうだ。
元々は1年ほど前、探索者をする事になった白百合たちが装備を求めていて。CMDに“コネ”のあった白百合……と言うか陽乃下の家が開発の依頼を出そうと白百合に提案。
さらにフェイへの出資もしていた陽乃下との縁もあって、二人の装備開発をフェイが担当する事になったんだとか。
「じゃあフェイはCMDと言うよりは陽乃下グループの社員って扱いになるのか?」
「そだねー。契約社員と言うか、CMDの設備を借りて仕事をする代わりに、成果の一部を提供したり、CMDの依頼を優先的に請けたりって感じかなー?」
「だから私たちの装備については、この三人での責任となっている」
こうやって内密にではあっても俺に話せるのは、そう言うスタンドアローン?的な位置付けだから出来てるってわけなのか。
「それでこの後の打ち合わせって言うのは?」
「ここに来る時に話した、装備関係の案件が予定されてるっての。それがこの二人の装備のことなんだー」
「ええ!?めっちゃタイミング良いな!!」
偶然知り合いだった三人が、この後会う予定をもともとしてたとは。
「っつーか、その打ち合わせがあるからアタシたちもこの時間にここに来れるスケジュール組めたわけだしな。妥当と言やぁ妥当なんだろうよ」
「普段は昼間にあまり出歩かない。地下迷宮に潜る時か、人に会わなきゃいけない時ぐらい」
なるほどね。フェイも時間がキツキツだしなぁ。だから日差しのある時にあまり出歩かない白百合たちが、この時間に待ち合わせが出来たんだな。
「ちはるんが興味あるなら、私は見せても良いよー。社外秘のものは流石に隠してからになるけど」
「それはもちろん。二人の装備は一度見たことあるけど、色々興味はあったんだよ」
今日は二人の装備の検討会。装備の使い心地とか、性能が上手く発揮出来ているかとか、改善案があるならどう改良するかなど。そう言ったフィードバック的なものになるらしい。
顔を合わせなくても話は出来そうではあるが、探索者の装備は命に関わるもの。色んな秘密もあるし、顔合わせは必要なんだって。
なんでもリモートすりゃあ良いってもんじゃないよな。ネットって本来怖いものの筈だし。リテラシーは過剰なぐらいでちょうど良いんだから。
「それに関してですが、一つ提案が」
「……またなんか悪巧みしてねぇか?」
「ふふふふ、まさかそのような。ふふふふ」
白百合が唐突にお嬢様口調に?……だから一花は“悪巧み”だと勘づいたのか?なんだその面白習性は!!
「打ち合わせですが、知春のご自宅でするのはいかがかしら?」
……確かにこれは“悪巧み”ですわ。
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◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.9
・身体器用 Lv.7
・進退強化 Lv.6
・待機妖化 Lv.5
・大気妖化 Lv.2
・息 Lv.5
・気 Lv.5
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◆津賀 一花
◆ラビットラピッド Lv.22
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◆陽乃下 白百合
◆ディープフォレスト Lv.27
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◆潤目 フェイ
◆知性 Lv.11 投擲 Lv.3 観察 Lv.9




