5話.限界のその先へ、進むためのまた一歩
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5話.限界のその先へ、進むためのまた一歩
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何故打ち止めになったのか。考えられる事はいくつかある。
・レベル4以降は成長が極端に遅い
・地下迷宮外での成長には限界がある
・成長には条件が複数ある
・レベル3で打ち止め
これらのどれか、あるいは複数が原因か。
まず最後のは考えたくは無い。体質の改善が望めそうとは言え、鍛えたり体力を付けるにはまだまだ心もとない。もっと成長してくれないと困る。
成長速度が極端に遅くなるのも不自然に感じる。これまでのハイペースを考えると、これも除外出来るのでは無いか。
レベルアップの条件についての情報も調べてみたがあまり載っていない。そもそもスキルのレベルアップは地下迷宮内でするのがセオリーとなっていて、地下迷宮に入るのが難しい生産系のスキル所持者は、知り合いと一緒に潜るか、探索者に護衛依頼をして潜りスキルレベルを上げると言う。
「そうなると、潜るしか無いのか?……やだなぁ。行きたくねぇ」
地下迷宮に潜ったのは一度きり。ステータスの取得のために行った時だけだ。
ステータスは地下迷宮の中で、謎の白い粉を飲むことによって生える。参加費は5千円。これは自己負担分で、国の補助金が出ているので安く済んでいる。
そしてステータスと同時に生えるのがスキル。これは初期スキルと呼ばれ、少なくとも一つ、多い人は複数生える場合もあるらしいが、かなりのレアケだろう。
全額負担でお高いツアーに申し込むと、特別な白い粉を飲むことができるらしく、初期スキルも二つ以上生えやすくなるとか、よりレアな強いスキルが生えるなんて都市伝説もある。
実際にそういったツアーもあるのだが、スキル取得と言うよりは戦闘の講習だったり、地下迷宮で取れる鉱石の発掘体験などを売りにしている。
元会社の社長とその息子は高い金を払ってツアーに参加したと、よく自慢話を宴会の席で話していた。俺はソフトドリンクと料理だけ食べてすぐに帰っていたが、後で同僚の愚痴に付き合わされた。
ちなみに白い粉の正体は、魔物からドロップする石、『魔凝核』と呼ばれるものを粉末にしたものだ。ステータスを写すために必要となる凝素紙も、この粉が使われている。
そんな粉を飲んで大丈夫?と思わなくは無いが、ただちに健康被害は認められないとされている。放射線かな?怖い怖い。
このステータス取得の仕組みが出来たのは、最初にステータスが確認された人が、魔凝核を誤って飲んでしまったからだと、ギルドの冊子に書いてあった。こんなもんどうやって飲み込む状況になるんだか謎である。拾ったものをなんでも食べちゃう人だったのかな?犬の躾教室に行ってこいと言いたくなる。
「地下迷宮なぁ。ここから割と近くにあるから、行こうと思えば行けるんだよなぁ。装備なんかもギルドの周辺施設で売っているし」
ステータス取得ツアーでは5人ぐらいのグループに分かれ、それぞれにギルド所属の探索者が護衛につき、魔物もあまり出ないような場所で安全が考慮されていた。
貸出装備もあったが、今後潜るためにはあんな感じのを買えば良いのだろうか。
これも調べてみると、お値段はセットで5万円ポッキリ!高いのか安いのか。この新人応援セットは格安だと書いてある。探索者の育成を目的に、お求めやすいお値段にしているとか。
地下迷宮用の装備は普通のものとは異なり、魔凝核を繊維にして編み上げたり、装備の中に溶け込ませたものだ。そうじゃないと地下迷宮に現れる魔物を倒せないし、魔物の攻撃からも身を守れないと。ほんとファンタジー。
その効果も地下迷宮外の空気に曝されるにつれ弱まっていくので、ギルド内にある専用のロッカーに入れて保管しておくしか無い。もちろん有料である。上手い商売だ。
装備を買う金はある。無駄遣いはできないが、逼迫しているわけでは無い。ウォーキング用に買ったジャージと同じく、必要経費としてなら5万円は出せる範囲だ。
スキルは育てたい。俺の人生で唯一の、最後の希望と言ってもいい。蜘蛛の糸のようなそれを、より確かなものにしたい。
これまで何も出来ない人生だった。いつも体質がネックになっていた。やりたいと思うことが満足に出来ない。それの原因も分からない。何もしなければ痛みもなく苦しくも無いが、それだけだ。
いろんなものを諦めてきた。何かをやりたいと思う気持ちにも蓋をするようになり、やがてやる気すら湧かないようになった。
諦めたくない。動き出さなければいけない。そんな考えを、捨て去る。
やりたい。動きたい。強くなりたい。前向きな感情を引っ張り出す。俺は変わるんだ。変われるんだ。地下迷宮が俺を待っている!
ちょっと暴走したが、取り敢えず装備だけでも見に行ってみようか。色々調べて、安全に潜れる方法を模索しよう。
スキルも新たな可能性がきっとあるはずだ。俺の冒険はこれかry
それから俺は、普段寝る時間を大幅に超えて、スキルについての考察と試行錯誤を続けた。
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◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.3
・身体器用 Lv.1
・息 Lv.0
・気 Lv.0