44話.窒素と到素、勘違いからの大気妖化
※今回“魔素”について考察をするシーンがありますが、物語の世界では『こう言う考え方も出来るんじゃ?』と言う説に過ぎません。考える事が好きな二人による遊びとしてあっさりと捉えて頂ければ大丈夫です!
お読みいただきありがとうございます。リアクションや感想、評価をいただけると嬉しいです。励みになります!
44話.窒素と到素、勘違いからの大気妖化
◆
俺が話し終えても、フェイはしばらくの間黙ったままだった。なんて言われるのか分からず、俺は唾を飲み込みながら待っていた。
「正直、最初はどうなる事かと思ってたけど。話を聞いてみたら瓢箪から駒と言うか。とにかくビックリしたよ。いやほんと、驚いた」
おお、どうやら俺の話は悪く無かったらしいぞ。
「だろ?『窒素』と言う漢字は穴冠に至ると書くよな。穴とはゲートの事だと考えると、窒素は穴に至る気体って事になる」
「え、なにそれ面白い!」
「だろ!?だから地下迷宮になると窒素から魔素、いやこの場合は窒素から穴を取って『至素』と言うべきかな」
「おー!至素か!!いや待って。ゲートによって転移して至るわけだから……」
フェイはおもむろにペンを取り、椅子の後ろにあるアクリルボードにこう書いた。
「『到素』ってどう?読み方はトウソかなー?部首のリットウには“招かれる”って意味があるからね。招かれ至る。それで到素」
到素か、悪くないな。魔素の正体、そう招待とも掛かっているし。到素か。良いんじゃないか?
「到素で決まりだな!世紀の大発見だよ!」
「いやぁ、まだなんの証明も出来てないからねー?あくまで推測によるものだから」
「まあそうなんだけどな。よく分かっていなかった魔素に名前を付けられただけでも新たな一歩だと思うぞ?」
研究者、つまり科学者のフェイとしては、証明されて初めて価値が生まれるものなんだろうけど。素人の俺としては、自分のスキルから新たな発見が出来そうってだけで嬉しいんだよな。
「ところで、ちはるんや?」
「なんだい、フェイさんや?」
「魔素に関しての考えは、それはそれで良いんだけどね。某白髪鬼さんの言葉を借りるなら」
「か、借りるなら?」
『お前、なぁんか勘違いしとりゃせんか?』
勘違い is 何?
◆
「ちはるんさ。チミはね?前にここに来た時に、既に妖化の答えを言っているのだよ」
「え?マジ!?そうなの!?」
「チミはね、こう言っているのだよ」
その“チミ”ってなんなのよ?ちょっとイラってするよ!!
「『そうなのか。だから待機してる間、気配がボヤける、つまり妖しくなれば……ってことね』ってね。覚えてる?」
「……いや、全く」
「だろうねぇ。そもそもこうも言ってるの。『実は地下迷宮内でスキルレベルを上げたりしたいから、集中するためにも、自分の気配を薄くするようなスキルが欲しいんだ』ってね」
凄いな、フェイの記憶力は。さすが天才開発者だな。あと俺の物真似をしてるんだろうか。言い方がやっぱりイラっとする。俺そんなイラっとする話し方してる!?
「それで答えと言うと?」
「分からんのかーい!言ってるじゃん!気配ってさ!つまりさ、妖化によって変わってるのは気配なんだよ!その考えからスキルが発生したんだから!」
気配……?そうか!“気”配か!!
「気配の“気”か!確かに答え言ってたわ!」
「遅いよちはるーん……」
めっちゃ遠回りして元に戻ってきたこの感じ。なんだろう。青い鳥はそばに居た、みたいな?
「でもそうなると、なんで俺の肚は痛くなったんだ?気配が薄れただけなのに」
「そこが不思議なんだよねー。まあ“気配とは何か?”ってのを科学的に探る必要もあるけど。今考えられる推測としては、スキルが新しい解釈を得たんじゃないかな?」
「スキルが……?」
フェイは頷きながらペンで書いていく。
「気のスキルを使う前に、ちはるんは『気が妖化されるんじゃ?』って推測したんだよね?」
「ああ」
「それによってスキルが連携しちゃって、身体の中の“何か”を妖化させた。つまり魔素、あるいは到素に変えちゃったんじゃないかな?」
そんな事が……。あり得るか。身体を改造出来てしまうスキルだもんな。
「身体の中にはタンパク質がたくさんあるよね。タンパク質はアミノ酸が複数集まって作られてるんだけど」
「ああ、栄養に関しては結構調べたりしてたからな」
体質の関係上、あまり量を食べられなかったから。より効率良く食べて、消化と吸収が上手に、でも身体に負担が掛からないようにとか気を付けていたからな。
サプリや漢方は栄養素がかなりギュッと固められたもの。なので肝臓に負担が掛かるから、極力自然の食べ物だけでやりくりしていたな。料理もそれで勉強もしてた。
「そのアミノ酸に窒素が含まれてるんだよねー。あるいはアミノ酸が分解されて尿素になったりもするけど、それにもまた窒素が含まれている。それらが到素に変化されて、細胞が壊れたりした可能性もあるかもー?」
なにそれ、超怖い。場合によっては身体全体がそうなって、運が悪かったら死んでた可能性も……?
「痛みが起きたって結果からの推測だから、正確な事はやっぱり分からないけどね」
「それはまぁそうか」
なんにせよ、痛みを起こす“何かは”起きている訳だから、気を付けないといけないよな。
「もしそうなら危険だから、待機妖化には『身体の外側の気配を妖化するものだ』ってちゃんと意識しておかないとね。ちはるんがスキルに言い聞かせないと」
「な、なるほどな。ちゃんとイメージしておくよ。助かった」
身体の外側にある気配を妖化、身体の外側にある気配を妖化、身体の外側に……。
「あとはそうだなー。もう一つスキルを作ってみるのも良いかも」
「スキルを?どうするんだ?」
「えーとね。こんなのはどう?」
フェイがアクリルボードに書き込んだのは。
「『大気妖化』スキル。待機じゃなくて大気、言い換えたら空気の事だけどさ。これでより身体の外側を妖化するように、意識的な誘導が出来るんじゃないかな?内気圧として空気はもちろんあるけど、身体の中に“大気”は無いわけだから」
「そうか。大気妖化か」
えーっと。オッケー!生えた!!
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.8
・身体器用 Lv.6
・進退強化 Lv.6
・待機妖化 Lv.4
・大気妖化 Lv.1
・息 Lv.4
・気 Lv.4
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
◆潤目 フェイ
◆知性 Lv.11 投擲 Lv.3 観察 Lv.9




