40話.津賀との関係、白百合の事情と仲間と
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40話.津賀との関係、白百合の事情と仲間と
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時間が経過すると、さっきの自分を思い出して恥ずかしくなる。女性の前で泣くのは気恥ずかしい。そんな経験はあまり無かった筈だ。婆ちゃんの前でぐらいか?母さんの前では……覚えてないな。
「もしかして、思い出し恥ずかししてる?」
「なんだよその思い出し笑いの亜種みたいなのは……」
「ふふ、泣くのは恥ずかしい事じゃないよ。人に弱さを見せられないのが恥ずかしい事」
「そんな割り切れないって……」
だって病院の廊下でだよ?しかも見舞い用とは言え花束を抱えた男が!
たまたま人が通らなかったから良いけど、いつ誰に見られていたか分からないじゃないか!
「菅田さんは可愛い」
「男に可愛いは喜ばれないって教わらなかったのか?」
「そうなんだ。私にはそんな機会無かった」
「……なんかごめん?」
「ううん。いい」
なんか敬語が自然と取れている。敬語は敬う意味とは別に、相手への警戒の意味もある。
『敬語』→『警吾』ともなる。吾は自分を意味する漢字だから、『吾警戒す』ともなるわけだ。
まあこれは言葉遊びの範囲だが、的を射ていると思ってる。
これまでの関係やさっきのやり取りで、陽乃下さんと俺の警戒心が互いに解けたのだろうか?タイミングとしては謎だが、人間関係とはそんなものかも知れない。俺の経験値が足りていないだけで。
「まあ、男にはあまり言わない方がいい。陽乃下さんとか、そう言う人にこそ贈られる言葉だよ」
「……口説かれてる?」
「なんでそうなるんだ……」
今のは口説いてるに入るのか?変なこと言ってたとは思わないが。可愛い人にこそ可愛いと言うべきだし、言われるべきじゃ無いんだろうか?カピバラとか、ハスキーとか!
「天然か。私と同じ。一花が言ってた。お前は天然だって」
「陽乃下さん……」
「自覚が無いのが天然だと。私はよく分からない」
「津賀も苦労してるんだな」
「失礼だ。撤回しろ」
「無理です」
なんか肩肘張らずに話せる感覚。そうか、フェイと似た空気なのかな。話してて楽しい時間だ。
「そうだ。白百合で良い」
「? えーと、何がだ?」
「私の呼び方しか無い」
「……いきなり?」
「段階とかあるもの?」
「うーん、分からないけど。あまり苗字で呼ばれるのは嫌とか?」
「うん。それもあるけど……。ついた。この話はまた後で。一花が待ってる」
そうか、ここが一花の。部屋の横に名前がある。一人部屋かな?気が楽で良いな。
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スライドドアを開けると、窓の景色を見ていたのか。津賀はこちらを見る。
津賀は全体がクリーム色で、ウサギがたくさん動き回ってる柄のパジャマを着ていた。私物か?可愛いな。
頭には包帯を巻いている。それを見ると途端に気になってしまうが、ケンゾウさんは大丈夫だと言っていた。恐らく頭皮の外傷によるものだろうと、自分を落ち着かせる。
津賀は俺を見てニカっと笑い、そのあと気まずそうにして、最後はやっぱり口角を少し上げながら、
「よ、よう。なんだ、来たのか。別に来なくても大丈夫だったのに」
ぶっきらぼうな挨拶をする。顔は口ほどにものを言う。なんて慣用句みたいなのが浮かぶ姿だった。青鼻のトナカイをふと思い出す。べ、別に嬉しくなんてねーぞ!
……ギルドの受付嬢さんから見た俺ってこんな感じなんだろうか?鏡を見ているようで途端に恥ずかしくなる。同族嫌悪みたいな?
「一花、素直じゃ無いのは良くない。菅田さんは繊細」
「繊細って……」
「そうだよな。その、悪かったよ。気恥ずかしくてさ。あんなことあったから」
「……あんな事って?」
「いや!そう言うんじゃないやつ!な!菅田!お前もなんか言えよ!」
「え?ああ。えーと?多分俺に助けられたこととか、負ぶられた事じゃないか?」
ふーん?と俺と津賀を交互に見る陽乃下さん……白百合って呼んで本当に良いのか?今は陽乃下さんで良いかな?
「ケンゾウさんにあらかた聞いたよ。頭は問題無いみたいで良かった」
「なんだよ、人をおかしな奴みたいによ」
「え?あっ違う!そっちじゃ無くてな!」
「はは、分かってるよ!からかっただけだ」
「一花、私にも昨日これやった。馬鹿の一つ覚え」
「誰が馬鹿だ!私は賢い方だぞ!!」
津賀と陽乃下さんのやり取りは見ていて楽しい。本当に仲が良いのが伝わってくるからだ。百合って良いものだよな。あれ、これって俺、間に挟まってる系?もう帰ろうかな?
◆
「それで一花、話がある」
「ん、なんだ?」
お見舞いの花を陽乃下さんに生けて貰い。ギルドでケンゾウさんにも聞いたような事件の内容に加え、三人で色々と雑談をして一段落した頃。陽乃下さんが話を切り出す。
「菅田さんも……知春も、私たちの仲間に入れたい。良い?」
「菅田を?そうだな、白百合が良いならアタシは構わねーけど。なんで急に?」
「仲間?話が見えないぞ?」
いきなり言われたけど、なんだろう仲間って。チーム?ギャング的な?半グレ?
「菅田が考えてるのは絶対違うから戻ってこい。仲間ってのは私と白百合、あともう一人のことだ」
「他にいるの?」
「ああ。白百合の体質のことは、コイツから聞いてると思う」
「ああ、喫茶店で聞いたな」
「コイツって一花……。酷い」
「進まないから静かにしてなさい」
「心得た」
仲良き事は素晴らしき、だな。黙って見守ろう。ここに百合が咲いています。大切にしましょう。
「アタシと白百合は、白百合の体質もあって昼間はあんまり出歩かなくてさ。基本的に夜に遊んだりしてるんだ。といっても変な事はしてないぞ?コイツの知り合いと言うか、ツテがある店だったりで飲んだり話したり、ダーツとかで遊んだりな」
「一花はダーツが上手い。今度やろう知春」
「そんな大したもんじゃねーよ」
俺氏、ただただ無言で頷く。
「んでまあ、もう一人ってのは白百合の知り合いと言うか、護衛兼主治医の人が居るんだ。その人はあんまり輪に入ってこないんだけど、だいたい側にいて白百合を守ってくれてるんだ」
「うん。アイモはいつもそばに居てくれる。助かってる」
アイモ?ここは暖かな海だよ?ニーハオ?
「にゃん!……ふふふふ」
「何笑ってんだよ白百合?まぁいいや。それでアタシたちはアイモさんと三人でいつも居るんだけどな」
「そこに知春も加わって欲しい。信頼出来る仲間として」
ええ……。そんな三人の中に入るだなんて恐れ多い!花は愛でるものですよ!
「いつも一緒にいてとかじゃ無い。基本自由で良い。たまに遊んだり、地下迷宮に潜れたら良いなって」
「地下迷宮って……」
あ、この二人って探索者じゃん!!仲間ってつまり、そっちのこと!?
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◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.8
・身体器用 Lv.6
・進退強化 Lv.6
・待機妖化 Lv.4
・息 Lv.4
・気 Lv.4
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◆津賀 一花
◆ラビットラピッド Lv.22
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◆陽乃下 白百合
◆ディープフォレスト Lv.27




