37話.新躰強化、新しくなる身体
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37話.新躰強化、新しくなる身体
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激しい痛みと戦っている。身体が熱くて熱くて、このまま燃え尽きてしまいそうだった。
やはり、新躰強化レベル6の時を超える痛みが襲いかかってきた。怪我をしているのだから当然なんだろう。
俺は途切れそうな意識を何度も掴み直しながら、ステータスを繰り返し脳内に念じていた。
(頼む……新躰強化、お前が頼りなんだ。早くレベルが上がってくれ!!)
「グゥゥウウ!グゥゥウウヴヴゥ!!」
噛み締めたハンカチの隙間から、酷く耳障りな音が漏れる。汗が止まらない。もう楽になりたいと思ってる自分が、早く意識を手離せと叫んでいた。
(レベル8!来たぞ!!『新躰強化』発動!!)
ようやくレベル8に上がってくれた新躰強化を発動させる。発動と共に痛みがゆっくりと弱くなっていく。さっきまで襲っていた熱さとは違う、温かさとでも言う感覚が腹部を中心にして広がっていく。
腹を確認する余裕が出来て見ると、青痣はさっきよりも小さくなっていた。血液の再吸収が凄いスピードで行われている。人間が出来る再生スピードでは無かった。
「これで俺も人外かな……」
口から落ちた、歯型でクシャクシャのハンカチを掴み、顔中に流れる汗を拭う。ヨダレで少し濡れているが、この際仕方ない。
津賀を見る。今の今まで忘れていただなんて口が裂けても言えない。どうやら眠っているようだ。起きていなくて安心した。一瞬目が合ったような気がしたが、気のせいだろうか。
「もう少し休んだら、帰らないとな」
気力は使い果たしたはずなのに、新躰強化の発動のたびに力が湧いてくる。気力が戻ってくる。
フラつく身体をなんとか堪え、津賀の眠ってる場所まで迎えに行った。俺と一緒に帰ろうな、津賀。
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「一花?一花……!一花!!」
それから。津賀を背負い直してしばらく帰り道を歩いていると。そこにはあの時見たドレスアーマーの陽乃下さんの姿があった。
その様子から、今まで津賀を探していたのだろう。これだったら脇道で待ってた方が楽だったか?あんなに痛い思いをしたと言うのに……。
「それは結果論だ。結果論は良くない」
結果論とはギャンブルだ。結果を見て過程を見ず、何が良かったのか悪かったのか、その判断を曖昧なものにする。
例えるなら、試験の点数だけを気にして、なんで合ってたのか、なんで間違ったのかの見直しをしないようなもの。そこにはなんの成長も無い。点数をモチベとして捉えるのは悪くはないが。
考える事を怠けた奴らの行う愚考にして愚行。それが結果論である。もはや人間の知性はそこには無い。ってのは流石に言い過ぎかな?偏見が過ぎるか?
疲労のせいかストレスのせいか、思考が極端になっているな。それだけ普段はしない冒険をして来たのだと思うと、少し誇らしい気持ちもあった。まだまだだけどね。
「おーい!陽乃下さーん!」
「菅田さんか!?菅田さんが一花を?一花に何があったの?」
フリーの右手を振り、陽乃下さんを呼ぶ。お嬢様然とした以前の話し方、あるいは津賀と普段話す時の淡々とした口調とも違い、陽乃下さんは激しく感情を露わにしていた。
「実は……」
ボス部屋前の事件や、それによる津賀の怪我など。掻い摘んで話したのだが、陽乃下さんはそれを聞いて激昂してしまう。あ、人工呼吸の事は伏せたよ。応急処置ってだけ。
「とにかく今は、津賀を病院へ」
「そうだね!私が運ぶ!使い慣れている病院もあるから、そこで検査をさせる!安心して!!」
そう言うと、陽乃下さんは津賀をひったくりお姫様抱っこにして、もの凄い速さで消えていった。
その時、困ったように笑う津賀の顔が印象的だった。目を覚ましてたんかーい!……まああの様子なら問題は無いと思うけど、ゆっくり休んでしっかりと検査を受けてくれ。
「ふぅ。正しく肩の荷が降りたな。疲れたから、俺はのんびり帰るとしよう」
そのあと、現れる魔物を適当にいなしながらセーフティエリアに辿り着くと。待っていたケンゾウさんに抱きしめられたり、あの三バカが鎖でグルグル巻きにされていたりなどあったのだが。
それはまた別のお話。
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◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.8
・身体器用 Lv.7
・進退強化 Lv.6
・待機妖化 Lv.4
・息 Lv.4
・気 Lv.4
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◆津賀 一花
◆ラビットラピッド Lv.22
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◆陽乃下 白百合
◆ディープフォレスト Lv.27
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◆幡羅 謙三
◆身体強化 Lv.9 体力 Lv.8 投擲 Lv.7
体術 Lv.6




