30話.進む新躰強化、異常気象と地下迷宮
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30話.進む新躰強化、異常気象と地下迷宮
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【URMEN内チャットデータ】
さっき新しいの試してきたよ。
新しく出来たアレね
んでどうだったー?
外では上手く使えた。
中でも概ね同じ結果だった。
んん?概ね?
って事は何かあったのー?
実はアレの後に気を使ったら。
いや、これ以上はここでは…。
ちょちょ!そんな気になること
言わないでよ!
しかも、中についても色々と分
かった事があるんだよね。
偶然というか副産物だけどさ。
なーにー!?なんなんだよもう
もうもう!!
絶対直ぐに休みとってやる!
その時は根掘り葉掘りちはり
んだからね!
むくれる
フェイの
スタンプ
イラスト
なんだよちはりんって!笑
つかスタンプあるんかい!笑
あの後勢いで作ってみたー!
ちはるんのもあるよー!
天才です
ので、と
言う知春
スタンプ
なんで俺の髪が赤髪に!?
あのバスケマンガ好きだな!
今度はマンガだけじゃなくてア
ニメも観ようね!
◆
地下迷宮で事故みたいな事があって。なんとか地上へと戻ってきた俺は、今は自宅に帰還していた。
進退強化を使いながら、半ば無意識で帰還していたらレベルアップした。ほんとマジコレ助かる!
それでURMENを使って、フェイに今回の事を伏せながら報告した。結局何も伝えられて無いし、フェイの気を揉むような結果になってしまったが。ソンナハズジャナカッタノニー!!
にしても疲れたな。スキルによって肚の痛みが徐々に軽減出来ていただけに、今回のアクシデントはかなり効いた。
新躰強化のレベルが上がり、新たなステージへと行けたようだし、禍転じて福、とも言えるかな?
「ただなー。今後が怖いよな……」
仮にだが、もし新躰強化のレベルアップに、今回のような強い痛みがまた必要だとなったら。それは果たして耐えられるだろうか?
痛みに慣れている、エキスパートの俺が全く動けなくなったわけだし。ただ痛いだけならまだしも、それが無事に済むかなんて保証は全然無いんだからな。
「とは言えスキルのレベルアップは早めにやっておきたいよな。新躰強化はもちろん、待機妖化スキルだって」
今もテレビが置いてある居間に座って、新躰強化のレベル6を連続で発動している。最大まで強化したら、今度は待機妖化を使って……。
「いや、先に『気』か。違うな、まずは『息』だ」
気のスキルはショートスキルの中でも最も短い一文字。柔軟に使える代わりに、今回みたいな事故も起き易いのかもしれない。
それを少しでも制御するために、『息』のスキルレベルを先に上げておく必要があるように感じている。
「シンタイキヨウカから伝わる感覚。これは信じても良いとフェイは言ってくれていた」
そして『息』と『気』が関連するように、『気』と『待機妖化』が、そして妖化によって得られる“何か”が新躰強化を大きく進化させたのでは?
たまたまあのタイミングで新躰強化のレベルが上がり、それによって運良く助かっただけ、と言う可能性も全然あるのだが……。
「あの事故があったから新躰強化がレベルアップした可能性も、無いとは言い切れないんだよな……」
『痛み無くして改革無し』と言う詭弁を用いたくは無いのだが、大きな変化に痛みが生まれるのもまた道理、ではあるのだろう。
痛みを最小限に抑える努力も無しに、こんな事言う資格はもちろん無い。
だから気のスキル、その前に息のスキルをレベルアップさせ、待機妖化との同時発動を成功させられるようにしたい。
「主目的はあくまで体質の改善。そのために必要なのが新躰強化だ」
そのスキルを上げるために必要な事、手順を考え、安全性を高める。
ここが正念場だと思ってる。俺の人生を変えるために、出来る限りの事を考え、準備をして臨みたい。
「そう!俺たちの冒険はこry」
◆
『天気予報の時間です。また広いエリアでゲリラ的な豪雨が起こりそうです。気象予報士の……』
「またか。異常気象ばかりだな最近。地球がヤバいってばよ!」
スキルについて考え事をしていたら、垂れ流していたテレビがニュース番組に、そして天気予報のコーナーになっていた。
テレビではもうまともなニュース番組はやっていない。嘘か本当かも分からないニュースが、情報を小出しにしてずっと垂れ流されている。
「でもたまに面白いアニメがやるから、テレビ自体を捨てられないんだよな。動画サイトへの課金はあまりしたくないし。金の行き先が不透明なのがな」
それに爺ちゃん婆ちゃんはテレビ世代だったし、この家で一緒にテレビを見て笑っていた思い出もある。テレビを嫌いにはなりきれない。むしろそんなテレビを変えてしまった“何か”を、俺は許せない。
「そんなのがいるかどうかは……分からないけどね」
陰謀論を論じる気はない。可能性があるってだけで。
陰謀論者が悪いのは、それが事実だと“断じてしまう”事だけで。むしろ叩いたりネタにして笑ってる、可能性自体を否定する人たちもまた、やっぱり“断じている”時点で論者と程度は変わらないんだよね。
これも主観の話に繋がるが、可能性を考える事を、俺たちはやめてはいけないんだ。
「拙速を尊ぶな。判断は遅くて良い」
いつでも良い判断が出来る様に、色んな事を考え、自分の中で消化しながら、信用出来る材料だけを持ち運べば良いんだ。
拙速を尊ぶのは某国で昔にあった試験での逸話だ。時間が限られている中で、出来るものからやっていけ、点数を稼げ。拙速を尊べとは、それだけの話だ。何にでも当てはまるものではない。
判断が早くないといけないのは、命の危険が迫っているような戦いの中の話だ。私たちは常に命の危険がある場所にいるわけでは無い。そうならない努力こそが必要なんだ。
「慣用句やパワーワードこそ、その本質を見ないとな。調べるって大事。考えるって大事」
浅はかな判断や言動で、どうか自分や周りの人たちを、危険に陥らせないように。
「とは言え、スキルは早めにレベルアップさせたいです……」
だってスキル上げが出来るのは、いつ何が起こるか分からない地下迷宮の中だけだからね。危険には対応したいけど、その為にはスキルのレベルアップが必要不可欠なんだ。ジレンマである。
「地上で出来ること。つまり新躰強化の最大限の強化とスキルの考察。これが済んでしまったら、あとは地下迷宮に行くしかない」
言いたいのは、姿勢も思考も悪い形でロックしてはいけないよ、と言うお話。
あの機関車アニメ、昔の方が好きなんだよなぁ。てってってってーってって、てー♪
もはや住み慣れた家の中から見える空は、この後の災害など想起する事も出来ない程に、酷く晴れやかな秋晴れの空だった。ただ強風によって騒つく竹林の音だけが、未来に起こる何かを暗示していた。
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◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.6
・身体器用 Lv.5
・進退強化 Lv.6
・待機妖化 Lv.3
・息 Lv.3
・気 Lv.3




