29話.新躰強化の見解、妖化と気
お読みいただきありがとうございます。リアクションや感想、評価をいただけると嬉しいです。励みになります!
29話.新躰強化の見解、妖化と気
◆
あれから新躰強化を繰り返し発動している。痛みは治まったが、まだレベル6で得られる強化の限界には達してはいないようだ。未だにスキルが動いている実感、内臓が強化されていく実感があるからだ。
新躰強化のレベル上げはなかなか難しいなとは思っていた。新躰強化はレベル毎の強化を終えると、『シンタイキヨウカ』に連なる他のスキルを発動しないと経験値が稼げないからだ。
それだけ聞くとむしろ早くレベルアップしそうだが、そんな楽な話は無いだろう。それなら他のスキルももっと早く、レベルアップしてくれて良いはずだ。
つまり他のスキルによって得られる成長度合い、いわゆる経験値はそこまで多くないと考えるのが自然だ。
新躰強化の特性ゆえに、そこまで少なくは無いと思いたいが。ステータスで成長度合いを確かめたりも出来ないため、確証を得られないのが辛いところだ。
「まあそれを言うなら、そもそもレベルの表示、ステータスの確認が出来る時点で恵まれてるよな。しかもスキルなんて分かりやすい力も得られてるし」
地下迷宮が確認される以前の世界では、自分がどんな能力があるのか。それすら分からずにいたわけだし。
不便を感じた時は、今あるもの、当たり前だと思っているものの有り難さを再認識する機会だとも言える。
例えば古い洗濯機を嘆く時、『昔はそれすら無くて洗濯板で一つずつ洗っていた』事を知らない、あるいは忘れていることに気が付ける筈だ。
ひとまず新躰強化に関してだが、これはレベル6で新たなステージに入った感覚があった。まさに“新”躰強化だ。レベル10が上限と仮定すると、6は折り返し地点。ここからが本番といったところか?
今まであった“痛みや苦しみ”と言うハンデから、本当の意味で脱却出来る。そのための一歩を踏み出せたと思えば感動もひとしおだ。あともう少し。シンタイキヨウカのスキルが、それを深くまで俺に教えてくれていた。
◆
新躰強化については俺の中で一定の区切りを得られた。今度はさっきの痛みがなぜ起こったのか?それを考察したい。考察したいって、学者かな?こんな時の潤目さんだろ!
『フェイって呼んでよ!ちはるん!!』
はっ!幻聴か!?
まあ茶番はともかく、スキルを使ってまた同じようなことがあったら嫌だし、考察は大事だ。
魔物や他人の悪意などに晒されている時に、今回のように動けなくなってしまったら命取りになってしまう。
「キッカケとしては『気』を使った時だ。でも気のスキルはこれまで何度も使っていた」
つまり状況、タイミングが悪かったと考えられる。
状況としては地上でも地下迷宮でも、俺は何度も『気』を使っている。
「となると当然、考えられるのは『待機妖化』だ」
あの時は確か……待機妖化がレベル3になって。それから妖化→妖気を連想したんだよな。妖気とは地下迷宮に漂う“魔素”と呼ばれているものじゃないか?と、そこまで思っていたはずだ。
「『気』を使った事で、何かの気が妖化した、ってことか?そうだと仮定しても……」
なぜそれで急激に激しい痛みが?以前にステータスを得た時の痛みにも近かったし。それにも絡んでいるのだろうか?
「そもそも“気”が何を指しているのかも分からないし、色んな気がありそうだし。なにより」
この肚の痛みの原因が!そもそも分からないんだよ!!
原因が分かってたらもっと治療とか色々とやれてるわ!26年間も苦しんで無いわ!!
「はぁ……。結局分からない事だらけじゃねーか。とは言え、この痛みが何なのか?それにも向き合っていかないといけない、ってのは確かだ」
医者には何度も掛かっているし、医学的な検査も受けてきてるんだ。EBM、医学的根拠が無いのがこの痛みだ。
「西洋医学で分からないなら。考えられるのは東洋医学か?」
東洋医学は根拠よりもビッグデータ、経験や知識の、何千年にも渡る蓄積からなる学問だ。
そして“気”と言う概念も東洋医学寄りのものだしな。
「まーた調べなきゃいけない事増えちゃったわ。ここまできたらとことん楽しむか!」
それがいずれは、格闘の知識にも結び付けられそうだしな。戦う力もそろそろ強化したいところだ。その前に筋力、を付けるための体力か。となると結局は新躰強化に戻ってくるんだよなぁ……。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.6
・身体器用 Lv.5
・進退強化 Lv.5
・待機妖化 Lv.3
・息 Lv.3
・気 Lv.3




