25話.シンタイキヨウカの謎?、待機妖化の発生
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25話.シンタイキヨウカの謎?、待機妖化の発生
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潤目さん宅の秘密の部屋に入り、俺たちは透明なテーブルを挟んで座った。部屋はそれほど広くは無く、仮眠用かな?エアマットの横にテーブルと、今座ってる椅子が二つ。そして潤目さんが座ってる後ろの壁際には、透明な板が立っている。
白い文字で色々と書かれていることから、ホワイトボードの透明バージョン、アクリルボード的なものかも知れない。何が書かれているのかは私には見当も付きません!!
「なるほどー。シンタイキヨウカ、ねぇ」
「最初は身体強化の表示がおかしくなったんだと思ったんだけどな」
「そんな例は聞いたことないね。まさに前代未聞。しかもカタカナスキルか……」
「カタカナスキル?」
スキルがカタカナなのは特殊なんだろうか?
「特殊も特殊。まさにユニークってやつだよー」
「おお、ユニークスキルか!」
「そうそう、まあ例外はあるけど、殆どがその人にしか無いスキルである事が多いねー」
やっぱりユニークスキルだったんだな。俺ってば勝ち組じゃん?
「ユニークスキルの特徴としては、一つのスキルに色んな効果があるケースが多いことだねー」
「色んな効果?」
「うんとねー。例えばラリアットってスキルがあったとする。その場合ラリアットの攻撃力が上がるだけじゃなくて、腕力も上がったりするんだよね」
ラリアットのスキルって。例え話なのか、実際にあるのか?個人情報だから例え話として話してる可能性も?
「ふーん……。そのスキルに応じた別の効果が付加されるのか?いや、そのスキルを可能にするために、必要に応じた効果も付いてくる?」
「おー、やっぱり頭良いねちはるん!そうなんだよー!カタカナスキルは、複数のスキルが入ったセット販売みたいなものなんだよー!」
「ちはるんやめぃって」
つかセット販売って。なんとなく分かるけどね。パジャマ買うと上下セットだったりするよね。
「もちろん普通のスキルにも複数の効果があるものもあるんだよね。例えば投擲スキル。これは命中率の補正と威力の補正の二つがあるんだけど。腕力が上がったりはしないんだよね」
「あくまで投げられた物の威力が上がるだけなんだな」
「そゆことそゆことー」
つまり、カタカナスキルは身体の強化が必要なものだったり、これも効果に付けとかないとスキルが成り立たない!って場合に副次的な効果があるんだな。
さっきのラリアットの場合は、攻撃に使う腕の力が強くないと攻撃も弱くなるし、腕にダメージもある。だから腕力も一緒に上がる、と。
「ただちはるんのシンタイキヨウカはユニークでもかなりのユニークっぷりだね。ユニーカーだね」
「スニーカーみたいに言うなし」
「ふははー」
どんな笑い方だよ。
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それから、シンタイキヨウカから派生したこれまでのスキルを一通り話していった。潤目さんはそれを後ろのボードに書いていく。
「ショートにミディアム、それにロングのスキルかー。文字数で性質が変わるのも面白いね」
「実際にそうなのかは根拠は無いんだけど、なんとなく感覚がそうだと教えてくれるんだよな」
「そう言う感覚はスキルを持ってる人じゃないと分からないものだし、感覚が教えてくれるのも良くある反応だよー。その感覚は信じていいよ」
スキルの専門家?地下迷宮の専門家?の潤目さんに太鼓判を押して貰えてホッとした。これまで確証が無かったし、不安ではあったんだよね。
「文字数が少ない分、スキルの効果指定は少ない。だから柔軟性は高いし、代わりに扱いが難しい。リソースが柔軟性に支払われているんだね。理に適ってるよ」
「文字数が多いと指定されてる内容にリソースが使われるから効果がそれに限られる。代わりにその効果を発揮しやすくなるから、扱いもし易くなるんだな」
『気』と『息』のショートは応用が効くけど、効果は低いし、レベルも上がりにくい。扱いの難しいとはそう言う意味だな。
ロングは『新躰強化』を始め、『進退強化』や『身体器用』の3スキル。効果範囲が限定されてる分、その効果は抜群だ。レベルアップも早いし、そういう意味で扱いがし易いスキルとなる。
ミディアムのスキルはまだ無いけど、ショートとロングのちょうど中間のスキルになると予想している。どのようにして中間となるのかは未知数だ。
「うんうん。概ねそれで合ってるだろうね。ショートは大器晩成、ロングは早期熟成?即戦力?そんな感じかな?打てば響く感じ、ちはるんやっぱり頭いいねー!」
ちはるんやめろし。まあ褒められるのは嬉しい。この人生、褒められたことなんて少ないから。……涙が出ちゃう。
「それで、スキルで相談があるんだけど」
「チャットで言ってたね。なにかな?」
「実は地下迷宮内でスキルレベルを上げたりしたいから、集中するためにも、自分の気配を薄くするようなスキルが欲しいんだ」
「ふーん。例えば待機じゃダメ?」
『待機』か。それは俺も考えた。潜伏したい、つまりじっとして敵に勘付かれないようにしたい。それなら待機スキルとすれば、待機中に必要な効果を色々と得られそうだなって。ただそれは最終的に無しになった。
「それだと三文字でショートになるから、育つのに時間が掛かるんだよな」
「そっか、欲しいのは柔軟性では無く、成長の早いスキルだから。文字数を多めにしたいんだね」
そうなんだよな。でもそうすると、どんな文字変換にしたら良いのか……。『新待機』とか違和感しか無い。発生する感覚がしないのだ。
「ふむ。妖化はどうかな?」
言いながら、ボードに『妖化』と書く潤目さん。
「妖しくなるのか?」
「そそ。妖しいってのは、それが何か分からない、ハッキリしないって意味もあるんだよね。妖精とかさ」
「そうなのか。だから待機してる間、気配がボヤける、つまり妖しくなれば……ってことね」
「うんうん。どうかな?」
待機妖化……。正直、かなり良い!文字数も6文字だし、初めてのミディアムスキルになる。
成長のし易さがありつつ、扱い易さも期待できる。ミディアムなら多少の柔軟性もあるだろう。良いんじゃないか?
「あっ」
「どうしたの?」
「生えた」
「生えた?」
「スキル、今確認したら!」
待機妖化、新しいスキルが。既に生えておりました!
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◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.5
・身体器用 Lv.5
・進退強化 Lv.5
・待機妖化 Lv.1
・息 Lv.3
・気 Lv.2
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◆潤目 フェイ
◆知性 Lv.6 投擲 Lv.1 観察 Lv.5