23話.この世界のスライム、雨の日はスライムの日
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23話.この世界のスライム、雨の日はスライムの日
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翌日、やはり雨が降っていた。鰯雲の後は雨が降る。鰯が水を恋しがっているのだと、雨と一緒に海へと戻りたがっているのだと、誰かが言ってたような気がする。誰も言ってない気もする。過去の俺かもしれない。
今日は公園での運動はやめて、朝から地下迷宮に潜ろうと思っている。この季節に雨の中ジョギングしたりは身体に悪そう。運動は地下迷宮内でも出来るし、スキルレベルも上げやすい。
流石に頻繁に潜るのは不健康だと思うので、こう言った雨の日に限ったものにするつもりだ。
地下迷宮の予定だが、スライム討伐の経験を積んでおきたい。
地下迷宮の第一層でも、スライムは出現する。ゴブリンやバットに比べると出現率は低いが、スライムは早めに経験をしておきたい魔物だった。
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受付嬢さんとのいつものやり取りを終えて、初期装備を付けて地下迷宮に潜る。そう言えば受付嬢さんの名前を知らないな俺。毎回、何故だか彼女が受付をしてくれているのだが、偶然なのか、それとも運命なのか。もしかしてこれって……恋ry
地下迷宮に転移をしたらまず、進退強化スキルと気スキルを発動する。今回は上手く同時発動に成功した。このままレベルも上がってくれると嬉しいのだが……。
進退強化の効果で移動効率を上げ、さらに気のスキルと併せて目的の物を探しにいく。移動する時に目的があると、それに適した移動ルートを選択しやすくなるのだ。
しばらく歩き、目に入った脇道に入ると……。
「あるある、石がいっぱい!」
地下迷宮内では自然発生した石に加え、誰かが投石訓練や発掘作業で脇道に放置した石が集まっている事がある。それを見つけると手早く石を拾えるのだ。
何故俺が石を集めているのかと言えばもちろん、スライム討伐に必要だからだ。
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この世界のスライムは知能の乏しい、非生命体に近い存在だ。感情や悪意を持って人を襲う事はないが、身近に動いている物がいると取り込んで消化しようとする為、命の危険もある。
そう、溶かしてくるのだ。膜に覆われた中の水分は、そこまで強くはないが酸性に保たれている。それに触れると火傷のような怪我をしたり、着ているものを溶かされたりする。恐ろしい。
「一部界隈では薄い本が厚くなる場合も……」
しかも他の魔物の例に漏れず、こちらからは触れる事が出来ないのだ。なのに向こうからは攻撃が出来る。いったいどのような仕組みなのか?フェアじゃないぞ!
などと文句を言っても聞いては貰えない。遭遇してしまえば、倒すか逃げるかしなきゃいけないのだ。ではどうやって倒すのか?
そうだね、投石だね。
地下迷宮では、一部スキルや装備を除けば、遠距離攻撃の手段が少ない。投石しか無いと言っても過言では無い。
弓や銃はどうなんだ?と思う人も居るだろう(誰に語りかけてるんだよ)
ならば問おう。じゃあ、どうやって魔物に当てられる物を飛ばすの?となるのだ。
候補と言えば石や岩、もしくは魔凝核である。石は地下迷宮に潜ってから集めなければならず、弾や矢にするのも手間がかかる。
そして魔凝核は……脆いのだ。粉状にして素材として扱えるぐらい、魔凝核は脆い。
下の層に行くほど魔凝核は硬くなるそうだが、当然魔物も強くなるし、数を揃えるのも大変だ。弾や矢も貴重な物になってしまうだろう。そんなのを扱えるのは、上位ランクの探索者か金持ちぐらいになる。
銃に関してはそれ以外にも使われない理由はあるのだが、そもそも日本国内で銃の取り扱いは難しいからな。
『地下迷宮で使うものです』で簡単に持ち運びが出来てしまったら、地上での取り締まりは後手後手になってしまうだろう。
なので遠距離攻撃は一定の層にたどり着くまで、投石一択となってしまうのだ。
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「いたいた、やっぱり雨の日は多いんだな」
スライムの謎の習性として、雨の日やジメジメした日が続くと、出現数が多くなるというデータがある。だから梅雨とか台風、あるいはゲリラ豪雨などは、スライムが大量発生している事があるので非常に危険である。
もちろんギルドや探索者が力を合わせて数を減らしてくれるので、大きな災害になった事例は多くは無い。
早速スライムを見つけ、討伐態勢に入る。なるべく死角に入るようにしながら……。スライムの死角って何処なんだろう?
まあ相手に気取られないようにゆっくり近づき、身体器用と息のスキルを発動させる。身体器用に息スキルを合わせると、身体の感覚がより明確になるのだ。細胞の『呼吸』を効率的にしてくれているのだろうか?良い組み合わせだね!
「身体器用レベル5に息スキルも合わせれば……!」
静かに投げると、石はイメージ通りに飛んでスライムに命中!だがスライムボディの体積が多少減っただけで、スライム自体は消えていない。非生命体に特有の、核を壊せていないからだ。
さらに三つ投石をし、やっとスライムは消滅、魔凝核に姿を変えた。
「一体に石を四つか。多いのか少ないのか……」
石もいくつも持ち運べる訳ではないから、残弾の管理も必要になる。そこらで石は回収出来るとしても、なるべく少ない回数で仕留めたい。
「しかも不意を付けないと動くんだよな。余計に狙いが付かなくなる」
その後も五体のスライムを倒し、平均して三回の投石で討伐が出来た。
「まあまあの出来かな?それにしても投石が便利過ぎる」
スライムはもちろん近接でも倒せるのだが。攻撃しても防御しても、酸性の液が装備に付いてしまうのだ。触れたら当然酸に侵されてしまう。あまりにも損害が酷いと、レンタル料金に加え修繕費も取られる事になる。それが結構高い!
だからスライムには投石!投石しか勝たん!となる訳だ。投石訓練の重要性がよく分かる。
「投石訓練はもっとやらなきゃな。スキルレベルも上げていきたいし。こっそりと訓練出来る環境が欲しいな」
なんか隠密系のスキルを作れないだろうか?
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◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.5
・身体器用 Lv.5
・進退強化 Lv.5
・息 Lv.3
・気 Lv.2




