21話.陽乃下白百合、白百合と一花
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21話.陽乃下白百合、白百合と一花
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俺が地下迷宮に潜ると女性に出逢うような運命なのだろうか?地下迷宮で出会いを求めるのは正しいのかも知れない。調子乗りましたすんません。
そしてまたもやお誘いを受けて、俺は地下迷宮からギルドへと戻って来ていた。
今は自分の着替えを済ませて、陽乃下さんを待っている。
陽乃下 白百合さんと名乗っていた。『お陽様の下に白い百合』と言ってたから、漢字も恐らく合ってるだろう。
そうか、百合なのか。百合は嫌いじゃない。むしろ大好物です。でも知り合いで妄想するのは良くないと思いますので。そこは自重しようね。性別に関係無く。
別の事を考えようと、彼女が付けていた鎧のようなものを調べてみる。検索ワードを色々と変えて……。あ、これだ。
「フィリグリー……ってやつか?」
細線細工?へー、金や銀を細くして加工すると。太さも素材も全然違うけど、デザインはこんな感じだった。隙間が空いていて、矢が飛んできたらどうするんだろう?剣で切り落とすのかな?
ん?剣?そういやあの時、陽乃下さんは武器を持ってたっけ?
「お待たせしました」
ビクッと声に振り返る。いつのまに後ろに!?
陽乃下さんは以前のように、素肌を覆い隠した装いだった。
今日のは真っ黒なレースのトップスに、ワイン色のハイウエストなスカートで、ロリータ?ゴシック?そんな感じの、お人形さんみたいに可愛くも美しい。不思議な魅力のある人だ。
「参りましょう」
「お供します」
「なんですかそれは……ふふふふ」
手に持っていた大きな帽子を被ると、陽乃下さんは楚々と歩いていく。緊張して変なこと口走ったけど、笑ってくれて嬉しい。笑われたとも言う。
うーん……あれに着いて行くのは気後れしてしまうな。悪いけど少し離れて歩かせてください。
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ギルドでやる事を済ませて、二回目の『Sea Coffee』へ。短期間にまたここに訪れるとは思っていなかった。
あ、発掘で稼いだ額は5000円ちょっとでした。初めてにしてはまあまあかな?月に20日潜ったとして……10万円か。マジで仕事探さないと、って何万回言ってる。
カフェのマスターに『今度は別の女か?』みたいな目で見られた気がする。気のせいかな?気のせいだよね。気のスキルで気を逸らそう。
個室に入り、前回と同じ深煎りコーヒーを注文して一段落。
「……」
「……」
お互いに無言です。これなんの時間?なんか話さないと。潤目さんの時はあっちが引っ張ってくれて間がもったけど。俺からとなるとなー。あっ、そう言えば。
「えーと、地下迷宮で俺の……私の名前を知ってたみたいで。以前にお会いしてましたっけ?」
「?……ああ、そうでしたね。初めて会った気がしなくてね。実際にあったのはあの時が初めてで合ってる」
この前、探索者用の装備売り場で津賀と鉢合わせた時。その時が初めてなのは確かなはずだ。こんな綺麗な人忘れるわけ無いし。
「そう……だね。私と一花。貴方の言う津賀一花との話をした方が早いと思うわ。少しだけ聞いてくださる?」
「わ、分かりました」
「ふふふふ……話し方は、いつも通りで結構ですよ。ふふふふ」
うーん、掴みづらいなこの人!
◆
「一花と初めてあったのは高校の入学式の日。私は窓から近い席になったんだけど。体質的に日光が苦手でね」
「日光が……なるほど」
「ふふ、陽乃下なんて名前なのに、日光が苦手なんだって思ったでしょ?」
「思ってねーよ!?」
「ふふ、ふふふふ。菅田さんって本当に面白い」
なんも面白いこと言ってないんですがそれは……。あと自虐ネタは反応に困るからやめて欲しい。いや、自分から話す方が楽ってのは分かるんだけどね。俺もやってたし。聞かされた方はこんな気分になってたのか。
「どこまで話したかしら。そう、カーテンを閉めようかな、でもホームルームの途中だったし、どうしようって思ってたら。隣に座ってた一花が先にカーテンを閉めてくれてね」
「へー。津賀は気付いてたんだな」
「そうなの。しかも『こっちの席座るか?』って。席も替わってくれたのよ。一つ隣になったところであまり変わりは無かったんだけど。その心配りが嬉しくて」
津賀さんめっちゃ紳士じゃん。女性だから淑女?なんでも良いけど、めっちゃクール。
「放課後になって、なんで優しくしてくれたの?って聞いたら、『体質で大変だった奴を知ってるから。ついお節介を焼いちまった』ですって。その時の仏頂面がまあ可愛くて。直ぐに一花を好きになったわ」
マンガみたいな話だな。少女マンガ?そんな出会いがあったのか。
ん?となると、話の流れ的に……。
「そう、その時話題に上がったのが貴方、菅田さんってわけ」
「……マジか」
「ええ、マジなの」
津賀のやつ、そんな事思ってたのか?俺は別に、アイツを恨んでるわけでも無いし、気にしなくて良いのに。
「まあそんな事もあって。その後も何度か菅田さんの名前を聞いていたから。ここのショッピングモールでお見かけした時も、始めは気付かなかったんだけどね。そのあともしかしてって、一花に確認してみたら……というのがあったの」
「はぁ」
何度か名前を聞いたって、どんな話題の時に俺の名前が出てくるんだ?想像も付かんぞ!
「あのね、一花は……。ううん、これは一花が自分でしたいはずだ。うん。私から何か言うべきでは無いのだけど。これだけはお願いしたいの」
「お願いと言うと?」
「あの子から、一花から接触して来た時は。どうかあの子の話を聞いてあげて欲しい。ただ聞くだけで良いから。それを聞いて、菅田さんがどんな反応をしても良いから」
そんな事?と肩透かしを食らうぐらいの内容だった。お願いとかそんなの、言われるまでも無く。
「昔の同級生をそんな蔑ろにはしないよ。頼まれなくても、俺は津賀の事を嫌ってるわけじゃ無いし」
「そう……良かった。ありがとう。貴方はお礼なんか要らないと分かってる。それでも、ありがとう」
「よく分かんないけど、まあ分かった。とにかく心配はしてくれなくて良いよ」
「うん。貴方と話せて良かった」
最後はそう言って、とてもにこやかに彼女は笑うから。
俺は話の内容なんかより、その笑顔で頭がいっぱいになってしまった。あれ、もしかしてこれって……恋?(トゥンク)
惚けていたのか、気が付いたら陽乃下さんは既に居らず。しかも会計まで済ませてくれていた。……スーッ。
惚れてまうやろ〜!!!!
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◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.5
・身体器用 Lv.5
・進退強化 Lv.5
・息 Lv.2
・気 Lv.2
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◆陽乃下 白百合
◆ディープフォレスト Lv.25




