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【10000PV感謝!】シンタイキヨウカってなに?  作者: taso
第一章 変わり始める躰
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2話.スキルの変化、変化は成長?

 1話に引き続きお読みいただきありがとうございます。展開の遅い作品ですが、楽しんで頂けると幸いです。

 感想や気になる点など、コメント頂けると嬉しいです!


2話.スキルの変化、変化は成長?



 爺ちゃん婆ちゃんが遺してくれた家に移り住んだのは1週間前のこと。爺ちゃんに先立たれた婆ちゃんが去年に亡くなり、俺が引っ越してくるまでは近所のおばちゃんがたまに掃除などをしてくれていた。少しお高めのチョコレートをプレゼントしておいた。


 母親は俺が高校に入る前に何処かへ消えた。男を作って出て行ったと聞いているが、詳細は分からない。


「俺に期待が出来なくなったのが本当の原因かもな。中学受験に失敗してから、態度が露骨に変わったし」


 大学まで面倒を見てくれた父親は、俺の卒業を迎える前に亡くなってしまった。父親もまた身体が弱かったらしい。俺の前ではそんな姿は見せなかったが、意地を張っていたのかも知れない。男の意地ってやつだろうか。


 もし俺が留年をしなければ、卒業式を見せてやれたのかも知れないと思うと後悔しかない。家計を助けたい、学費を返したいと無理してバイトをして、それで単位を落としていたら本末転倒だ。


「大学生になれば、変われると思ったんだけどな……。俺は俺、か」


 母親が蒸発してからは母方の祖父母とも連絡が取れなくなり、それもあってか、近くに住んでいた父方の祖父母には特に良くして貰えた。父と共に俺の面倒を見てくれていたし、俺に家と財産を残せるようにと色々取り計らってくれた。


 住む場所、そして僅かばかりの蓄えがあるのは救いだ。父親の保険金や財産はそこまで多くはないし、これからの生活を考えると油断はならない。仕事を、見つけないとならない。


 大学卒業間近、やっと捕まえた内定から働き始めても、身体の弱さが変わる事は無かった。少しでも負担を減らすために会社の近くに一人暮らしをしていたが、それでもまともな業績をあげられないダメ社員だった。


 大学の頃の無理を引きずっていたのも痛かった。結局2年とちょっとで見切りをつけられ、気持ちばかりの退職金と共に地元に帰ってきて今に至る。会社自体も不景気に当てられ、人員整理をするのに俺はうってつけだったろう。


「飯食ってる時ぐらい、楽しい事考えようぜ、俺」


 食べ過ぎにならない程度の晩御飯を食べ、整腸薬を飲んでから、寝る前の習慣になっているストレッチを済ます。


 ストレッチは俺にとって、唯一出来る健康的な習慣だ。筋肉や体力を付けられるほどの運動は難しく、食事もたくさん摂るのは負担になる。

 その点ストレッチは良い。ゆっくりとした動作と呼吸で行えるし、身体を柔軟にしていれば怪我のリスクも減らせる。今では床にぺターンと身体が着くぐらいだ。俺の数少ない自慢の一つ。他に自慢が有るかと聞かれると思い付かないのだが……。



 翌朝、出かける準備をしてから昨日の公園に向かう。着古したTシャツとジャージは俺から見てもだらしが無い。新しいものを買うべきだろうか?無駄遣いは出来ないが、これは必要経費だろう。見た目は大事だし。自分の気持ち、モチベーションを上げる為にも帰りに買いに行こう。


 準備運動をしてから園内の歩道を歩き始める。夏も終わりとは言え残暑が厳しい九月末。早くもTシャツが汗で張り付いて不快だ。


 昨日と同じランニングマンにまた追い抜かれる。相変わらず邪魔そうな顔をされる。許せない。絶許リストに入れよう。


 無意識にスキルを使い続けているが、相変わらずシンタイキヨウカには変化が見られない。そもそも身体強化と表示されるはずのこのスキル、なんでカタカナなんだろうか?しかもキヨウカだし。小さい“ョ”がフォントデータに無いとか?ファ〇コン並みの容量かよ?


 それに身体って、なんでわざわざ二文字なんだろうとは以前から思っていた事だ。体強化でも良いのにね?


 ふと思い出したのは、小さい時に親に言われて行かされた躰道(たいどう)の体験教室だった。1ヶ月の期間で合わせて五回、土日のどちらか好きな時に参加出来るよってやつだった。


 あの時も男っぽい女の子に「ズルすんな」とか「やる気無いなら帰れよ」とか言われた。アイツも絶許リストの一員だ。お互いガキだったから仕方ないのかも知れないが、心の傷はなかなか消えない。


 そんな躰道だったが、その名前には感銘を受けたのを覚えている。『躰』は身体を一つにした漢字らしく、『身』は精神的なもの、正しく中身を意味したもので、『体』は肉体や死体など、器の部分を意味する。


 つまり躰の一字で全てを表すものとされ、精神と肉体は一体のものなんだなと、子供ながらに感動したというか、感心したと言うか。


 何が言いたいのか。つまり『躰強化』でも良いんじゃね?ってこと。字面もカッコいいし。シンは……色々あるけど、新とか?あるいはシン・とか。怪獣映画かよ。


 そんな事を、腹を押さえながらツラツラと考えていた。スキルが切れかかっているのが、痛みの僅かな違いで分かる。効果時間は3分間だが、残り30秒から徐々に効果が弱まっていくからだ。3分間とか怪獣じゃなくて超人の方だな。ジュワッ!


 聖地に向かいながらスキルをかけ直した時。痛みと苦しさが少しだけ、いつもより楽になったような。そんな感じがした。

✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

菅田(スダ) 知春(チハル)


◆シンタイキヨウカ

・新躰強化 Lv.1

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