13話.俺の戦い方、そして潤目フェイ女史
前話の戦闘について、主人公なりの反芻をしている描写が冒頭にあります。作者も主人公も戦闘の素人のため、おかしな部分や足りないところが有れば引き続きご指摘頂けると助かります。
13話.俺の戦い方、そして潤目フェイ女史
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「すみませーん!私の眼鏡をー!」
女性が騒いでいるが、相変わらず痛みと苦しさで声を出せない。息のスキルを意識しながら呼吸し、回復を促す。
その間、先程の戦闘について振り返っていた。
俺が選んだ装備は格闘用のグローブ。初期装備には剣や槍、あるいは戦闘用のバトルステッキ?スタッフ?みたいなものまで様々だ。ギルドでの受付の際に装備を指定すると、AIだかなんだかがロッカーに用意してくれるらしい。便利だね。
AIも人の仕事さえ奪わなければ素晴らしいものだと思うんだけどね。だからこその地下迷宮事業、なのかも知れないが。
俺は躰道に関してはほとんど知識は無い。だって体験教室なんて初歩しか教えないものだろうし、その初歩だって最終日まで教えてすら貰えなかった。まずは体力づくりが先だと言われて。尤もだけどさ。
唯一教わったのが運足八法と呼ばれる足運びの動作。当時は一日で覚えきれなかったため、後々ネットで調べたり動画を見たりして学び直した。今でもたまにやっているが、あれだけでも息が上がる。やれば分かる。
そんな訳で、ネットを漁ってる時に他の武道や武術のことも調べたりして、古武術の重心移動を意識した戦闘が出来ないかと考えて、それで今回のゴブリン戦となった訳だ。
掌底を使ったのは単純に、身体の強度に自信が無かったためだ。拳で殴ったら指の骨が折れそうだなと思って、多少のリーチを捨ててでも掌底で戦うことにした。手や手首の骨が折れなくて良かった。
今回は上手くいったけど、地下迷宮内での筋力や体力の補正、そして第一層の魔物相手だから出来たことだと思う。慢心は良くない。生身の強化こそが強くなるカギだ。
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「眼鏡を見つけて頂いてありがとうございます。それと先程助けて頂いた?ことにも。戦ってる姿を見れなかったのが残念です」
「いえいえ、こちらも助けられて良かったです」
身体が動けるようになったので、潤目さん、潤目フェイさんと名乗られた女性の眼鏡と装備を渡してあげて、やっと会話出来る様になった。待たせてごめんね?
「改めまして、私は近くの企業で働いている潤目と言います。仕事の内容は後ほどお話出来ればと。先程は護衛の方と逸れてしまい、危ういところでした。重ね重ね感謝を……」
ゴブリンと遭遇していた時の間延びしてた叫び声とは一転、丁寧な口調で会話をされている。もしかしてあっちが素で、なんとか取り繕いたいのだろうか?気にしなくて良いのに。
「さっきの事は忘れてくださーい!Ladyに失礼ですよ?」
顔に出ていたみたいだ。受付嬢さんに注意されたのに……。
「護衛の方は恐らく近くにいらっしゃると思うので、ここで一緒に待って頂けると……」
「まあ、それぐらいなら。逸れた時は歩き回る方が危ないとも言いますよね」
乗りかかった船なので、多少は付き合う事にするか。この前髪パッツンの丸眼鏡に白ローブスタイルの彼女を眺めるのも、愛らしくてなんだか目の保養になる。
「ところであなた、えーと」
「ああ、申し遅れました。菅田知春と言います」
「ほう、それは縁起が良いお名前ですね」
「え、そうですか?」
「あー、いや、なんとなくですー」
知春ってのが良いのかな?春を知る、俺自身も気に入っている名前だ。
「それで菅田さんは探索者の方でしょうか?それにしては初期装備を着られておりますが」
俺の身体を下から上まで見ながら潤目さん。人の身体をジロジロと!良くないですよ!!(先程目の保養になるとか言っていた男の妄言)
「いえいえ、俺は訪問者、ゲストですよ。地下迷宮に入るのは今日が二回目です」
「え?と言うことはステータス取得で入ったのを除くと……」
「恥ずかしながら、今日が初めてみたいなものでして」
「なんと……」
そうなんだよな。戦闘含め、初めての事ばかりで自分でも驚きだ。レベル補正の高揚感で、舞い上がっている気分が未だに抜けていない。気のスキルを使ってはいるが、気持ちを落ち着かせる効果は無いのか、それともまだまだ弱いのか?
「その話が本当でしたら、菅田さん。かなりの高レベル者ですね?」
……なぜバレたし?
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◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.5
・身体器用 Lv.4
・進退強化 Lv.3
・息 Lv.1
・気 Lv.1
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◆潤目 フェイ
◆知性 Lv.4 投擲 Lv.1 観察 Lv.2




