99話.『ランダムマップ』の歩き方、『深體強化』の欠点と付き合い方
あけましておめでとうございます。今年も本作にお付き合い頂ければ幸いです。お正月に色んな過ごし方をされていることかと思いますが、お手隙の時間にでも楽しんでいってください。
99話.『ランダムマップ』の歩き方、『深體強化』の欠点と付き合い方
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一面の草の世界を一人で歩いていく。青い空にはちらほらと白い雲、以前と変わらぬ景色だ。凡庸で、退屈で、それでいて居心地の良い世界。
だがそんな空気感に影響されて気を抜くと、草むらに潜む魔物や、ラビットが掘ったであろう穴に足を取られて転倒や怪我のリスクがある。
「探索者になりかけの奴らが痛い目に遭う理由の一つだ、ってケンゾウさんにも言われているからな。気を付けなきゃ」
第二層から何階層か続く草原エリアや、そのあとに現れる森林エリアなど、いわゆる『ランダムマップ』と呼ばれるエリアは似たような景色が続いていく。
最初は気を張っていた新人探索者も、少し慣れてくると気が緩んでしまうのだ。そんな時にこそ魔の手が襲いかかってくる。先輩探索者たちは口を酸っぱくして言ってくれるが、それでも死傷者は多くなる。
そう、死んでしまう人もやはりいるのだ。どんな仕事にも危険は付き纏う。簡単な仕事なんて存在しないが、やはり探索者は死亡率も他の職業に比べれば高くなる。
「ハイリスクハイリターンってやつか。“ダンジョンドリーム”とはよく言ったもんだよ」
ちなみにだが、地下迷宮をダンジョンと呼ぶ事は公式的には避けられている。それは地下迷宮がより“ゲーム感覚になってしまうから”だとか。
探索者も『シーカー』や『エクスプローラー』などと公式で呼ばないのもそのためだったりする。ギルド呼びも本当はダメなんだけど、そうなると第一層で活動する訪問者の数も減ってしまうため、入口は広く緩くを良しとしている。
「って菅野さんが言ってたけど、受付業務はそこらへん面倒が耐えないんだろうな。疲れた顔して言ってたし……」
お上の建前を維持しつつ、現場の声にも柔軟に対応しなければいけない。間に挟まれる人が一番辛いよな。頑張れ菅野さん!
『人の事を応援してる暇があったら周囲に気を配ってくださいね?まだ探索の途中ですよ?』
はっ!?菅野さんの声が直接脳内に!?
気のせいだとは思うが助かった、もう少しで穴に足を取られるところだったぞ!まさに気の緩みってやつだよな。まだ探索者になって二回目の癖に気を緩めるなって話だが……。
気を張り詰めすぎてもいけないし、緩めすぎてもいけない。このちょうど良い塩梅を学ぶのも第二層の重要なファクターだ。頑張ろう!むんっ!!
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今日は本格的な階層攻略のために来ている。その攻略の手掛かりと言うのが魔物の分布だ。
第二層にはラビットとグラスウルフの二種類が基本となる。加えてレア魔物のアンラッビーとか亜種も居るには居るらしいが。
「草とウサギと狼、なんて分かりやすい食物連鎖なんや……」
ラビット、正確にはグレーターラビットなんだけど、見た目は地上のよりやや大きいかな?程度のためか、いつの間にかラビットとしか呼ばれなくなってしまったラビットは草食系の魔物だ。
対してグラスウルフ、草色の体毛からグラスの名を冠した狼はもちろん肉食系で、その獲物となるのは当然ラビットになる。
まあ、グラスウルフがラビットを食べているところなんて見たことないんだけどね!
「死んだら凝素核になるもんな。何を食えって話だよ」
ごくたまーに魔物の素材が入った革袋がドロップされたりもするんだけど、こんな上の階層じゃ殆ど落ちないんよな。むしろ宝箱の中から発見される率の方が圧倒的に高いらしいし。
だというのにグラスウルフがラビットを狩る光景は度々見掛ける。狩ったら狩ったで凝素核には見向きもせずにどこかに行ってしまうし、なんのために狩ってるんだと疑問は尽きないが……。
そんな凝素核を拾って金に変える探索者も少なくない。装備を揃える為の資金源に充てられたり、大事な拾い物なのだ。グラスウルフ様様である。
そうだ、俺の装備も早いとこ揃えたいな。
「ん、またラビットだ。これで三連続か。順調だね!」
未来に思いを馳せながらも、探索は順調に進んでいた。もちろん『進退強化』の恩恵が大きかったりする。
草原エリア攻略のヒントは“ひたすらラビットを探すこと”なんだが、それだとたまにグラスウルフの群れに出会してしまったりもする。
だから今は“グラスウルフの群れがいない方”という指示を『進退強化』にしているわけだ。これでいつかは攻略のフラグが建って、新しい場所が見えてくるんだと。
「これって俺みたいに探知系のスキルが無い人は、ひたすら運頼みで歩くしかないんだよな?」
そう思うとなかなか骨が折れそうだが、戦い慣れたり資金を集めたりにはちょうど良いとも言える。根気強さも能力の一つ。資質と言うか、スキル外スキルと言うか。大事だよな、命懸けの仕事だからこそ。
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草をかき分け歩いていく。道無き道、変わらぬ景色に少し疲れも滲んできた。まだフラグは建っていないみたいだが、焦らず行こう。“いつも”に比べて今日は調子も悪くないし。
「なんでか今日は幾らか歩けてるな。『深體強化』を昨日使ったはずなのに?」
初めて『深體強化』を使った翌日の事は今でも鮮明に思い出せる。あれは本当に恐ろしかった。
なんと言っても“身体に力が入らない”んだからさ。それも起きてからずっとだ。このままだったらどうしようって、その恐怖ばかりが頭を支配していた。
痛みがあるわけでは無いし、動く事も出来ていた。ただ力が思うように入らなくて、気を抜いた途端にペタンと何度も座り込んでしまう。それが一日中続いてしまったわけだ。
「あんな経験、『新躰強化』を使ってた時には無かったもんな。今考えると不思議な話だよ」
なんたって身体を作り変えるスキルなんだから、デメリットがあるのが当然と言える。力が入らないのも、『深體強化』が骨や深部筋肉に作用しているからと考えれば納得が行く話で……。
となると今度は、なんで『新躰強化』ではデメリットが無かったのか?そんな疑問が新たに浮かんでくるんだけどね。
「それは家に帰ってからだな。ラビットさんをお出迎えしなきゃ」
中型犬サイズのラビットをあしらいながら、身体の調子を確かめていく。前回の探索に比べたら六割程度のパフォーマンスか?とはいえ十分にラビットを捌けてはいる。
ちなみに前回しっかりと動けていたのは『深體強化』の発動を控えていたからだが。昨日は感覚に慣れるためにと今後の検証の為にスキルを使って、今朝は割と動けそうだったからこうやって探索もしている。グラスウルフとの戦闘も避ける予定だったしな。
「ほいっと、ラビットなら問題ないな」
白い体毛のラビットを凝素核に変え、残心と『大気妖化』で周囲を確認する。問題無しっと。
『深體強化』を使いながらもこれだけ戦えてるとなると、感覚の慣れだけでは説明がつかない。昨日何かしら特別な事をしているはずだ。
昨日は、竹炭を作って、並行して一花と白百合の三人でバーベキューもした。適度な運動と食事が良かったとか?骨作りには無理のない運動強度と栄養が必須だからな。
「あとは……そうそう、夜に『クサツ』と温泉にも入ったんだよな。あれは気持ち良かったな。また入りたい……。温泉?」
え、もしかしてこれか?温泉の効果!?湯治ってことぉ!?
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◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.10
・深體強化 Lv.4
・身体器用 Lv.8
・進退強化 Lv.8
・待機妖化 Lv.6
・大気妖化 Lv.6
・鏡花 Lv.4
・気妖 Lv.2
・息 Lv.7
・気 Lv.7




