10話.能力の向上、そして進退強化
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10話.能力の向上、そして進退強化
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やがて失われていた感覚がゆっくりと戻っていく。目には薄明るい地下迷宮の広大な空間が映っていた。人間が生み出す声や物音。それに混じって、普段は聞き慣れない奇怪な、耳障りな音もする。魔物の鳴き声だろうか。
手を握って、開いて、感覚を確かめると、身体の内側から力が漲っていく高揚感に襲われて、思わず身震いをした。武者震いとはこのことだろうか?
何という全能感だろうか。全く異なる、まるで自分じゃ無いような力強さに頭がバグりそうになる。
「これが“レベル6”の感覚か……!」
大きな声にならないように抑えるのが精一杯だった。レベルによるステータスの向上は途轍も無かった。
ステータス画面には本人の名前とスキルの一覧以外には何も表示されない。筋力とか素早さとか精神とか、そう言ったゲームではお決まりのものも何一つ見ることは出来ないのだ。
そうなると自分自身のレベルは無いのか?と言うと、違うのだよワトソンくん。
ギルド当局の調査で探索者を始めとした、多くの人から集めたステータス情報や聞き取り調査により、スキルレベルが上がると、全体的な能力も上がることが分かっている。
もちろんどんなスキルでもこれは当てはまり、実質、全てのスキルのレベルを合計した数値=その人自身のレベルとなるのだ。
つまり!スキルを多く持っていれば!そしてスキルレベルを上げていけば!俺自身のレベルと能力も比例して高くなっていくのである!!
今朝公園で身体器用のスキルレベルを上げたのもそのためだ。念には念を入れたいからね。
俺のスキルは新躰強化レベル3と、身体器用レベル3。気と息のスキルはレベル0だが、それでも合わせてレベル6。
訪問者の平均レベルは恐らく2ぐらいだろう。地下迷宮の外ではレベルが上がりにくいのと、上限も3だと仮定するとだいたいそれぐらいな筈だ。
比較して俺は6!平均の3倍!つまり能力も3倍だ!圧倒的ではないか!我がステータスの性能は!ニヤニヤが止まらんよ!!
周りに変な目で見られているので、早く止めたいです。表情筋言うこと聞いて!
「浮かれるな俺。能力が上がるのは地下迷宮の中だけなんだぞ……」
スキルと同じく、地下迷宮の外だとレベル補正による身体能力もガクンと落ちる。外での補正を仮に0.01倍とすると、3倍になったところで平均の0.03倍よ。そして元になる身体能力も考えると……。
スンッて真顔になったよね。ニヤニヤが止まって良かったわ。ええ。ちゃんと身体を鍛えます!
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「進退強化スキル有能すぎ〜!快適〜!」
ニヤニヤ第二シーズンに突入しております。地下迷宮の奥の方へとかっ飛ばしています!さっき生えた新スキルが便利過ぎるのがいけない!良いぞもっとやれ!
『進退強化』スキル、これは移動の際に動きを補正し、移動速度が上がるだけでなく、どう移動するのが最適なのかが頭に浮かびやすくなるのだ!これでまだレベル3!このまま成長したら、いったいどうなってしまうのか!進退強化、恐ろしい子!!
欠点としては移動中にしかスキルが効果を発揮しない事だ。息を潜めてじっとしてる時はもとより、恐らく戦闘中も使えない筈だ。
その分、接敵や撤退には機能してくれると見ている。接敵や撤退が進退にカウントされるならだが、こればかりは検証してみないとなんとも言えないな。スキルレベルの合計値を考えると、試しに戦闘をしてみても良いかもしれない。
「調子に、乗った……思い切り、動き過ぎて、めちゃくちゃイテェ」
それともう一つの欠点は、鳩尾の痛みと苦しさは健在だって事。能力が上がった事で勘違いしていたが、体質自体が良くなってるわけでは無いんだよな。新躰強化のレベル上げが先ですね、トホホ……。
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◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.3
・身体器用 Lv.3
・進退強化 Lv.3
・息 Lv.0
・気 Lv.0




