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75.極光-Northern Lights-

これはある秋の話である。

南方探索の任にある騎士が自室の窓の外に極光の訪れを知った時、この国の南の孤島に棲む魔導士は遥か国土の北側を旅していた。


彼は気まぐれにこのような行動を取るが、それは今に始まったことではない。

彼の周囲の人間も、またですか、と笑いながら彼を見送り、お土産はこれこれで、と彼に伝え、稀に心優しき者が、無事に帰ってきてくださいね、と彼に心配の意を告げるくらいであった。


彼は何故、このような国の北の果てまでやってきたのか。

ある噂を耳にしたからである。

今年はこの国でも極光が見られる、そのような話を古い知人から聞いて、国の南側のある彼の棲家を離れ、この地まで旅をしてきたのだ。

噂は本当だった。

数日に渡り、夜空には怪しく蠢く虹色のカーテンが現れた。

長い生を送る彼にとっても初めての体験であり、感動であった。

彼はいくつかの写真と映像におさめ、自分の棲家へ戻っていった。


彼が戻ると、彼の棲家のある孤島をおさめる諸侯が彼に声をかけてきたので、彼はその諸侯に旅の様子を土産話だと言って、話をした。

まもなく今年の円卓会議ですが、どのような按配になりますかね、とその諸侯が彼に向かって訊ねると、彼は憮然としたまま答えた。


「王と兵部卿の地位にあった騎士の行っている調停がまだ終わっておらず、諸侯達の不満も高まっていると旅の途中で耳にした。

この国はこれから大きな災害に見舞われるかもしれないね。

いろいろなものの備えをしておいた方がいいよ」


彼はその諸侯に短く告げると、自分の棲家である高塔に登って行った。

その諸侯は彼の言葉に頷くと、城壁整備などのいくつかの備えと食料の備蓄を手配した。


やがて南方探索の騎士の失踪の報告は、その諸侯の元にも届いた。

その諸侯は今年の円卓会議の参加を見送っていた。

彼は自分の任地の全てを見下ろす。

彼の任地は高台に建つ塔から見下ろせば視野におさまるほど、小さなものであった。

「今年の円卓会議の会議も大きな波乱がありそうですね…」

その諸侯は両手を組み、海の遥か向こうにある騎士の館の方を望む。

灰色の冬空がこの国の南の空を覆っていた。


南方探索の任にある騎士の行方は未だこの国の誰にも知られず、この国の王とかつて兵部卿の地位にあった騎士の行なう調停は未解決のままであった。


”Some accidents of surrounding wool - A story of knights from the country-“

First part ended.

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