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71.探索の任にある騎士とは-3

国の宰相である魔術師から、南方探索の騎士の直筆の手紙を受け取った2人は、騎士の館に戻り、北部総督の任にある騎士の部屋に向かう。


北部総督の任にある騎士は、部屋に備え付けの暖炉付近の竈門の上で受け取ったばかりの手紙を焼き、彼が持ち帰った聖杯の中に入れる。

聖杯の中で白くなった灰はあっという間に真紅の液体に変わり、その不思議な光景に彼は息を呑んだ。


彼は聖杯を身体から遠ざけるよう、高く持ち上げた。

一瞬の躊躇いののち、彼は聖杯から手を離す。

聖杯は彼の手から離れ、執務室の床に落下する。

聖杯は床にぶつかると、大きな音と共に儚く砕け姿を消した。


北部総督の任にある騎士は、持ち上げていた手を下ろすと、大きなため息をついた。

事の成り行きを一部始終見守っていた財務卿は、消えた聖杯を見て、大きく頷いた。

彼に何度も礼を述べると、今日の円卓会議でまた会おう、と短く言って、自分の執務室に戻っていった。


北部総督の任にある騎士は、財務卿が彼の執務室を退出した後も、部屋の暖炉の前で聖杯が消えた場所を見つめていた。

聖杯が消えた以外に、執務室には異変は見られない。

しかし彼がこの後、騎士の館の円卓会議が行われる会議室に行けば、昨日同様に朱く染まった部屋が彼を迎えるのだろう。

彼はもう一度大きなため息をつき、執務室の天井を見上げた。


「これが…古から伝わる聖杯の儀式。

騎士が己の席を守るため、神より受け賜りし権力であり恩寵。


なんて呆気ないんだろう。

騎士の席に就き、探索の任に時間を費やし、ようやく探しあてた聖杯が、こんなにあっという間に儚く消えてしまうなんて。


でも、僕に後悔はない。

僕は自分の一生を騎士の席に縛られたいとは思わない。

僕は騎士として必要な権力を全て、己の手中におさめている。


もし足りないものがあるとするなら…


僕はそれを手に入れるのに、騎士であることが必要な条件だとは思わない。

それを求めるのに騎士の席にあるには、あまりに不自由すぎるように思う。

僕がそれを手にするには、どうすればいいんんだろう。

僕が騎士の席にいる理由は、それを探すためにある。

僕が探しているものは、騎士の席を守るための聖杯ではなかった。

聖杯が導く先には何が待っているのだろう。

そこに僕が求めるものがある、そんな気がしてならない。


今回僕が聖杯を使用したことで、南方探索の任にある騎士の安否が判明する。

それは騎士の誰もが望む結果であると僕は考える。

…彼女が無事であるといいけれど」


北部総督の任にある騎士は、まもなく円卓会議の時間だな、と、彼自身の執務室を後にした。

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