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羊毛を巡る一連の事件について〜ある国の騎士達の物語〜  作者: さばとらのはは
1-1. ある東の国での毛糸にまつわる事件
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6.ひとりの騎士の任務の旅-4

これは探索の騎士である彼が、羊毛を巡る一連の事件に関わるきっかけになった出来事である。


彼は旅先で偶然ある東の国の女性と知り合い、彼女の身に起こった出来事を知ることになった。

彼女は彼にこのような話をした。


「私はある国の商人から、珍しい毛糸を購入した。

届けられた荷物を見て、私はとても驚いた。

そこには送り主によって、少し糸が切られた、ひとつの毛糸があった。

そしてさらに…もうひとつ、荷物の破損により傷つけられた毛糸があった。


それを行ったのは間違いなく送り主である商人で、私はそれについてこれ以上言及するつもりはない。


彼らは荷物を傷つけて送る。

そんな彼らは必ず誰かを傷つける。

私以外にも傷つけられる人がいるかもしれない。


彼らは何故、毛糸を購入した相手を不快にさせるような、このような事件を繰り返すの?

私には彼らの言動が理解できない。


どうしたらこの悲しい事件を二度と起こらないよう、この事件を最後に終わらせることができるでしょうか?」


彼はまず、彼女に他の人にこの話をしないように念を押した。


「あまりこの話を大声でいろんな人に話さないほうがいい」


「なぜですか?」


「君がこの話を誰かにしたとしても、それが君にとって利益になるとは限らないからだ。

君の話の内容からすると、さらなる悪意が君を襲う可能性だってある。

悪意を受けた人間は、悪意を受けやすくなる。

悪意ある人間の中には、他人の言動を真似て、横から利益を奪おうとする人間も多い。


特に君の国にはその傾向があるようだ。


君は話をする相手を、慎重に選ぶ必要がある。


…君にこの私の国の話をしよう。

この話は君にとって有効な話であるように思う。

悲しい不幸が訪れた君に、喜びをもたらす新たな幸運が訪れるように」


彼はそう彼女に話すと、羊毛の事件とは別の話を始めた。

それは彼自身が世界中を探索した時に体験した話で、とても長い話だった。

彼女は彼の話を黙って真剣に聞いていたが、彼の話を聞いているうちに次第に笑いが込み上げてきたようで、最後にはそれは作り話よね、と彼女は大笑いしながら彼に言った。

彼は彼女に、本当の話が9割で1割が私の推測の話さ、と真面目な顔をして言った。


笑う彼女を見て、彼はほっとしたようだ。


『君に訪れた悲しい不幸など忘れ、喜びをもたらす新たな幸運にこれから臨めばいい。

いつか君が悲しい過去を忘れ、喜びをもたらす未来を手に入れられるように。

君にこの世界に満ちる驚きを、この世界からの解放を、この世界の美しさを、この世界のもたらす素晴らしさを、全て受け入れられるように』


彼は昔、彼に伝えられたある人の言葉をなぞって、彼女に彼の話を手渡した。

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