65.円卓会議における騎士および諸侯の調整-4
中央探索の騎士が財務卿の執務室を後にすると、続きの部屋で男女2人とすれ違った。
北方辺境伯の任にある騎士である夫と、その奥方であり王の姉である妻であった。
夫妻は彼を見て立ち止まり挨拶したので、彼も返礼した。
中央探索の騎士が会釈のみで通り過ぎようとすると、奥方がお待ちなさい、と声をかけてきた。
彼が立ち止まり奥方を振り返ると、彼女は手荷物から白い包装紙を取り出す。
それは先日、国の宰相の部屋で見たものと同じ包みだった。
「私達からのクリスマスプレゼントよ。
皆に配っているの。
貴方も受け取ってちょうだい」
奥方はにっこり笑って中央探索の騎士にプレゼントを手渡した。
北方辺境伯の任にある騎士は小さく咳払いをし、急ぐので失礼する、と彼に告げ、夫妻は足早に財務卿の執務室の中に姿を消した。
騎士の館や宮殿内で、今日の円卓会議で起こった出来事や空席の執政へ関心を話し合う光景は、その日の夜遅くまで見られた。
財務卿と北方辺境伯の話し合いは、どうやら物別れに終わったらしい。
北方探索の騎士が騎士の館にある執務室で園遊会の準備をしていると、北方辺境伯夫妻が揃って彼の前に現れた。
「このようなこと、私は許さなくてよ。
私達への挑戦状だわ」
などと、王の姉である奥方は、大層立腹した様子で彼の部屋で盛大に文句をいい、
「彼がこのように事態を進める事情については、宮殿内でも噂になってるから理解はできるけど…
でも、納得がいかないわ」
と不満を言い続けるのだった。
少し落ち着いてと、夫は彼女を優しく宥めるが、彼女の怒りは治らない。
北方辺境伯夫妻が、現状の事態の打開策を北方探索の騎士とともに検討するも、話は進まない。
彼らが北方探索の騎士の部屋を後にしたのは、夜が更け、日付けが変わる時刻であった。
北方探索の騎士は、古くからの知人である北方辺境伯夫妻を見送ると、執務室の鍵を閉めた。
彼はひとり沈黙したまま、何事かを考えているようだった。
翌朝。
円卓会議が開催される一時間ほど前のこと。
北方探索の騎士は、執務室の続きの間にある仮眠室にて身支度を整え、部屋を移動した。
目的の場所までやって来ると、彼はひとつ大きくため息をついた。
彼は勢いよく執務室の机の引き出しを開けると、彼がかつて探索の任にて見つけ出したクリスタルガラスの杯を取り出した。
彼が知る古の作法通りにそれを床に落とすと、ガラスは砕けて消えていった。
このような使い方をするとは思ってもみなかった、と北方探索の騎士は再びため息をついて、自室を後にした。




