62.円卓会議における騎士および諸侯の調整-1
中央探索の騎士が財務卿の執務室に辿り着いた時には、すでに先客がいた。
執務室への案内の者が、先客があるため入室は少しお待ち下さい、と執務室前の小部屋で待つよう彼にアナウンスした。
彼は静かに小部屋の椅子に腰掛けた。
小部屋には彼以外に誰もいない。
円卓会議前までは忙しく睡眠も十分でなかった彼は、うとうとと、うたた寝を始めた。
小部屋には暖炉もあり、室内は快適に保たれている。
どのくらい時間が経ったのだろうか。
彼は案内の者に、面会の準備が整いましたので、執務室へお入り下さい、と声を掛けられた。
彼はありがとう、と礼を述べ、財務卿の執務室の中に足を踏み入れた。
財務卿の執務室への先客は、新しく東方執政の任に着いた騎士とその妹であった。
財務卿と話を終え、彼らは宮殿に向かっている。
「先ほど小部屋に待機されていた方は、中央探索の騎士殿ですよね。
面識はありませんが…」
お疲れのようですね、と執務室との続きの小部屋で眠る中央探索の騎士を見た彼女は、兄に言った。
そのようだ、と東方執政の騎士はうわの空で、妹に返事をした。
東方執政の任に着いた騎士とその妹は、財務卿の執務室から離れ人の気配が途切れた場所で内緒話を始めた。
「彼はなぜ、急ぎでここへ来たのかしら」
彼の妹がそのように尋ねると、彼はいらだたしげに答えた。
「僕は彼のことがあまり好きじゃない。
彼の行動には僕の理解が及ばない部分があって、非常に分かりづらい。
しかし…言動に間違いは少なく、それは僕が持たない情報な人との繋がりによるもののようだ。
探索の任にあった騎士には、そういう方が多い。
また彼は、彼の父である兵部卿とは違う考えを持っているようだが、多くの権力を持ちながら何もしない彼に苛立ちを感じることもある。
しかしこのタイミングで僕達と同じ場所にあるとは…何もせずにはいられない逼迫した状況であるということか。
…明日の円卓会議に備えて、宮殿で情報収集と、君の…」
彼の話に彼女は頷く。
財務卿との話で得た情報と現在の状況を擦り合わせしながら、明日までに会わなければならない彼らにとっての重要人物を、2人は話し合いの中で模索していく。
打ち合わせが終わると、彼女は兄に、上手く事が進むとよいですね、とぽつりと漏らした。
東方執政に着任したばかりの騎士は、にやりと笑って、急ごう、と妹の手を引く。
まるで子どもの時のような仕草だ、と彼女は思ったが、ええ、と笑った。
彼は彼女を見て手を離し、2人は騎士の館を後にした。




