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羊毛を巡る一連の事件について〜ある国の騎士達の物語〜  作者: さばとらのはは
1-1. ある東の国での毛糸にまつわる事件
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5.ひとりの騎士の任務の旅-3

北方諸国で戦が起こった時、彼は東の果てにある国を旅していた。

これはそのときに出会った人々の記録である。


『その国の街角で、ある女性と話す機会があった。

彼女はこれから国外へ行くところだと言う。

彼女が行くのは、同国人の現地トラブルが起こり始めた南の果ての国らしい。

世界中にある病が蔓延している間はその国での滞在許可が取れなかったが、最近ようやく可能になったとのことだった。

「今までは行けなかったけど…どうしても行きたいから」

「ひとりで行くのか?」

「私は子どもの頃、両親と一緒にいろんな国を点々としたから言葉も分かるし、行く先の彼らのことも理解しているわ。だから大丈夫よ」


ある女性は私に荷物を渡しながら、こう言った。

「まだ沢山あるので…」

「これ以上は持って帰れない」

彼女は少しがっかりした様子だった。

他の地域への引っ越しのため、不要な荷物を他の人達に譲っているそうだ。

転居先に荷物はたくさんは持っていけない、とのことだった。


ある女性はこのような話をした。

「私は他の地域の出身だけど、この場所も暮らしやすいし、戻る気もないわ」

子育てがしやすい場所で、近くには彼女のお気に入りの店もあって過ごしやすいとのことだった。

建物の管理人も親切で、不都合がないらしい。


彼女達はみな、自分の住処を求めて旅に出た人達である。

これから探しに行く者もあれば、既に居心地のよい場所を見つけ出した者もいる。

しかし、これからの時代はどうだろう?


今の私は忙しくて、そのように見知らぬ人と直接会って話をする機会がない。

彼女達と会う少し前から調停の依頼が急に増え、その国での任務が忙しくなったためである。

私はいくつかの調停をしなければならない事件について、このように考えている。


この国で起こる事件には原因があり、最近の事件の原因は、この国が貧しくなってしまったことにあるように思える。

貧しさとは何か。

金銭的な、物質的な、精神的なもの、数え上げればキリがないが、満たされぬ何かを持つことであると私は考える。

しかし…今回のような事件は豊かであった昔の時代から、ずっと起こり続けている。

このような事件への対応についてはある程度決まった道筋があり、それに従った調停を私は行なっている。

しかしそれでは原因が取り除かれず、再び事件が起こることもある。

何か、よりよい解決方法はあるだろうか?

それを考えるのに使える時間は有限であり、事件はできるだけ早く解決しなければならない。


私がこの国で行なう調停に、最善の道などあるのだろうか』

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