57. 円卓会議1日目-3
会議室を一望し、財務卿が話を続ける。
「さて執政の空席はあと2席。
北方執政と北部総督の席には誰の着任もなく、議論も手付かずのまま残されている。
この2席に関する意見が、騎士および諸侯から私の元には届いていない。
そこで私からひとつ提案がある。
現在の北方辺境伯の任にある騎士を、北方執政の任に席変えして空席を埋めるということを行なってはどうだろうか。
彼の者は既に騎士の席にある。
またその奥方は王の姉であり、国内の諸事情にも精通している。
他に同様の地位を占める者はおらず、諸君からの反対も少ないように思える。
…この提案はいかがなものだろうか。
北方辺境伯の騎士殿」
財務卿の発言に、会議場はどよめきに満ちた。
北方辺境伯は少し思案した後、意見を述べるために立ち上がった。
「私は今まで、自分が北方執政の任に就くことなど、考えたこともなかったよ。
唐突な話だ。
財務卿よ、これは他の騎士や諸侯とも、十分協議すべきことのように思われる。
...議論には時間が必要だ」
財務卿は答えた。
「確かに。
貴公の言う通りだが、会議は3日間しかなく、議論にかけられる時間は少ない。
また執政の最後の一席である、北部総督については私の方でも適任者が見当たらず、未定であるし…
明日の会議にて貴公の北方執政への意向を伺い、騎士および諸侯に是否を確認するというのではいかがだろうか?
他に推挙の者がなければ、貴公に北方執政の任はお願いしたい。
…執政の席は、全て埋めねばならぬ。
そうでなくては我が国が抱える国難を乗り切ることが非常に困難だと、この円卓会議に集まった騎士および諸侯は、考えているように思われる。
もちろん、私も同意見だ」
北方辺境伯は、妻の意見を聞かなければ意向を受諾することもできないのだよ、私は妻には弱くてね、と戯けて言って、硬直した雰囲気の会議場を和ませた後、静かに着席した。
会議室の至るところで、どうしたものか、と諸侯達の囁きが始まった。
では、時間より早いが今日はここで解散ですな、と西方執政の騎士が財務卿に向かって話すと、そうだね、と彼は頷き、騎士と諸侯に散会の意を告げた。
一番初めに会議室から飛び出したのは、北方辺境伯の任にある騎士である。
通りすがりの顔見知りの諸侯に、大変なことになったな、と声を掛けられると、無言で頷き、足早に会議室を去って行った。
西方執政の騎士が財務卿に、難儀だな、と言うと、財務卿は、他に適任者が見当たらない、と繰り返し発言した。




