56. 円卓会議1日目-2
諸侯の席から小さなざわめきが起こったが、挙手するものはいない。
「ではこれも決定とする。
次に東方執政の任について、ある諸侯から立候補の申し出があった。
彼の諸侯が王に縁ある者であることは、多くの者が知ることであろう。
今まで騎士への推挙があったものの、彼の者が騎士の一席を占めることについて、騎士および諸侯から異論が出ていた。
そのため、諸侯から騎士の席の異動はしばらく見送られてきたが、今回、当人から東方執政への立候補があり、さらに多数の諸侯より推挙が上がった。
彼の諸侯の東方執政の席への異動について、異論ある者は挙手を」
諸侯から大きなざわめきが起こったが、挙手はない。
「では彼の諸侯の、東方執政の任および騎士の席への異動は決定とする」
諸侯の席の一部が歓声を上げ、大きく場が沸いた。
財務卿は場がおさまるのを待って、話を続ける。
「これまで決まった南部総督および東方執政の任に当たる者は、諸侯の席より騎士の席へ、この場にて異動願いたい。
これも古よりの習いによるものとする」
諸侯の席から騎士の席に異動になった2名が立ち上がって、みずからの席へ異動する。
騎士と諸侯の席から、歓声と拍手が起こり、2名が新しい席へ着座する。
すると。
朱く染まっていた室内がいつもの色に戻り、会場内はさらにざわめいた。
「これは…なるほど。
皆の集、本日起こったことは常ならざること。
神の御業により朱く染まった部屋が、2名の騎士の異動により白く塗り替えられたではないか!
私の席には…私の名前だけが刻まれている。
これは終生、私が騎士の席にあることを意味する、と古の記録には記載されている。
この国の起こりの遥か昔に、創造の魔術師により建てられたこの館に、このような秘儀が仕掛けられているとは、誰しもが思いもよらぬ出来事であろう。
なんという、神の御業。
これが…騎士の持つ権力というものか。
これは困った。
私はこの身に死が訪れるまで、騎士の席から離れられぬとは」
諸侯のひとりが、財務卿、これも貴方の仕業か、と尋ねると、この国の第一の騎士である彼は、違う、と小さく首を振った。
「神の御業、というより、内戦時の悪意と同じものではないのか?」
会議に参加したある騎士の口からは、そのような呟き声も小さく上がった。
中央探索の任にある騎士は、その言葉を発した彼をちらりと見た。
他の騎士達は沈黙を保ったままである。
財務卿は静まりかえった会議室を見回し、先は長い、さあ会議を続けようではないか、と次の議案を口にした。




