55. 円卓会議1日目-1
この国第一の騎士の席にある財務卿が会議室に入場した。
「主宰である私が遅れて申し訳ない。
会議の準備に手間取ってしまった。
…へえ、これは」
彼は朱く染められた部屋の様子に目を見張ると、悠然と歩き、自分の席に向かう。
誰かが皆の疑問を口にした。
「財務卿、これは貴方の仕業か?」
財務卿は自分の席の前まで来ると、ふむ、と首を傾げた。
「私の席に、常ならざることが起こっている。
他の騎士とも諸侯とも違うこと。
皆にも見えているであろう。
私の席にだけ…私の名前と任務が光り輝き、宙にもそれが浮かびあがっている。
これは古から伝わる、騎士の館の意志か。
騎士の持つ、最大の権限の行使により行われる、神の御業。
今回の円卓会議にて、私の席の異動は御業により封じられた。
さて。
第一席である財務卿である私が、全体の指揮役として会議を進行しよう。
王が不在である場合、第一席にある者が、会議の運営における全ての権限を持つのも古くからの習いである。
では、今年の円卓会議をはじめるとする」
起立したままの姿勢で、財務卿は話を続ける。
「今年は騎士および諸侯より、席の移動に関する意見が多く挙げられている。
それに関して、王が不在であるため、騎士および諸侯のうち、全ての賛同により席の異動が行われることもまた、古の習いであることをここに確認しておこう。
さて、騎士および諸侯から挙げられた意見で最も多いのは、
「王およびかつて兵部卿の地位にあった彼の騎士が調停に長くかかっており、国内外の情勢が不安定になっているため、騎士の席のうち、執政の任に当たるものを全て埋めるべきだ」
という話である。
これについて、現在は西方および南方執政のみ席に就く騎士がある。
北方執政、東方執政、北部総督、南部総督の地位が空席であり、それについてまず会議を進めたい。
異論あるものは挙手を」
財務卿は会議室を見回したが、誰の挙手もないので話を進めた。
「では、執政の任についての推挙を確認する。
私の所にまず連絡があったのは、南部総督への推挙である。
これについては王と彼の騎士の調停が起こる数年前の会議にて決まり、着席が先送りになっていた事項である。
今年本人より連絡があり、次年よりその任に就きたいとの申し出があった。
これに異論がある者は挙手を」
誰の挙手もない。
「では、南部総督就任については決定とする。
次に昨年より話が上がっていた、西方執政の任の離席について、こちらについても先日当人から、離席の取り下げの要請があった。
これは、執政の席を埋められる者が当人以外になく、騎士および諸侯からの、全ての執政の席を埋めるべきという意見と合致する。
これについて異論がある者は挙手を」




