49.王の息子である者からの使者-3
東方執政の騎士の席を望む諸侯の使者が退出した後、彼は今日はもう誰も通さないよう、案内をする係の者に伝え、執務室の鍵を閉める。
今年の円卓会議は一波乱ありそうだ、と彼は呟く。
彼が北方探索の騎士の席に異動になって、随分時間が経つ。
彼が騎士の席に異動する十年ほど前に、この国では大きな内戦があり、新たな王が立った。
その時も騎士の席に大きな異動があったそうだ。
当時騎士の席にあった者の中には、執政の騎士の悪政に反旗を翻した諸侯や民衆によって討たれた者もいると聞いている。
彼はこの国の王と初めて対面した時のことを思い出す。
国を傾けるほどの内戦の時に立ったとは思えないほど穏やかな容貌の王の姿に、彼は驚きを隠せなかった。
新たな王は騎士の席に異動する彼にこのように尋ねた。
『君が騎士の席に相応しい人物であることは、北方辺境伯やその妻君から話を聞いている。
北方辺境領やその他の領の諸侯にも知人は多いようだ。
君が騎士の席に異動することに、反対する者の意見は私の耳には届いていない。
君は騎士の席に何を望むのか?
騎士の席にある者は多くの権力を持つため、多数の諸侯にとって大変魅力的で、悪意に染まり任を果たすことを放棄する者も、内戦時にはいたけれど…』
彼に問いかけをする王は、彼の内面を見透かすような真っ直ぐな視線を彼に向けていた。
その時の彼の答えに、王はそうか、と言って笑ったことは、彼にとっては忘れられない記憶であった。
時は流れ、近年この国に新たな騎士が誕生している。
内戦が終わった後に生を受け、そこで起こった出来事に詳しくない若い世代の者も増えている。
王と第一の騎士であった兵部卿が、他国の戦争の調停に赴いて約二年が経過した。
諸侯達の間に不満が出始めていることは、彼も承知している。
彼とはあまり交流がなかった兵部卿が、王との調停の前に彼の任地までやってきて、彼の任務についての話をした後、
『君は北方探索の任についてからの期間が長い。
王と私が不在の間に、もし国内で大きな争いの芽が見えたら。どうか』
この国を頼んだよ、と兵部卿は軽く笑って彼の元を去った。
あの二人は無事だろうか、と彼は遠く思いを馳せる。
王と第一の騎士であった兵部卿の調停の地は、この国で起こった内戦とは比べ物にならないほどの激しい戦争が起こっているという。
開戦から何百万の命が既に失われても、まだ止まぬ戦だと、彼の任地であった北方諸国でも噂は絶えなかった。
とはいえ。
彼は大きくため息をついた。




