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羊毛を巡る一連の事件について〜ある国の騎士達の物語〜  作者: さばとらのはは
1-1. ある東の国での毛糸にまつわる事件
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4.ひとりの騎士の任務の旅-2

これは北方諸国で戦が起こる以前に彼が旅した場所の記録の一部で、2つの国の人々の話である。

それはどちらも星に関するものであった。

その時の記録を、彼はこのように残している。


『私はある国へと渡った。

その国の首都で、急ぎ連絡を取らなければならない用事ができたが、連絡の取り方が分からない私は途方に暮れていた。

通りすがりの女性にその話をすると、彼女はその国での連絡の取り方を教えてくれた。

私は無事に用事を済ませることができた。

対価を払おうとしたが、笑顔で断られてしまった。


次にその国の昔の国境へと向かった。

そこではたくさんの貧しい子ども達が、土産物を買ってほしいと待ち構えていた。

私はすでに地元のタクシーの運転手から、アドバイスを受け取っていた。

「あの子達は貧しい。

どの子どもからも、買ってはいけない。

それは争いの元になるから」

私は誰からも何も買わず、その場を立ち去った。

子ども達が販売していたものは、大人が店番をしている近くの売店で購入することにした。

美しく化粧した女性から、どうぞ、とにこやかに商品を手渡され、タクシーの運転手と話をして以来、気まずかった気持ちが少しだけ落ち着いた。


さらに西へ向かった。

そこは砂漠地帯で…交通手段にラクダが使われている場所だ。

そこに住む彼女は言った。

「ここでは雨があまり降らないから、水は貴重なの。

でも…夜は星を見ながら、家の屋根の上で寝ることもできるのよ」

そう言いながら笑い、さらさらと崩れる砂地歩く彼女の足取りは、全く揺らぐことがない確かなものだった。


西の果てにある、ある別の国の話である。

その国の首都郊外にある「緑の魔女」の名前を持つ街では、その街を訪れた他の国からやってきた人達が、ある場所で列を作って並んでいた。

そこには昔の天文台があり、時を超える線が引かれている。

みんなそれを超えるために順番待ちしているのだ。たまに例に横から入り込みをする人達もいたが、みな楽しみに自分の順番を待っていた。

そこには係員などおらず、自然と場所にルールができていた。

たくさんの国からやって来た観光客が集う場所、であるにも関わらず。

私も場のルールに従って、その列に並んだ。


私の順番が来た。

私は時を超える線の上に立ち、空を仰いだ。

よく晴れた青い空の向こう側にある夜空に、いくつかの星が見えた気がした。


任務にて他の国にも赴いたが、このように星について思いを巡らす機会が得られたのは、この二つの国だけだったように記憶している』

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