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羊毛を巡る一連の事件について〜ある国の騎士達の物語〜  作者: さばとらのはは
1-2. 年末の贈り物合戦と騎士の異動に向けての策謀
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48.王の息子である者からの使者-2

ある諸侯の使者は続ける。

「彼らは誰よりも尊き地位にあるにも関わらず、自分達のことしか考えず行動しているように見える。


何故?


王と第一の騎士は、このような事態に何故、この国にいないの?

彼らにしかできないことはたくさんあるのに。


ある国との国境では治安が悪化し、貧しさからお互いの国の住民同士の争いが起こりはじめている。

都市に近い場所では、王と彼の騎士が関わる戦争により物価が上がりすぎて生活に苦しむ者も多数出ている。

国を治める執政の任も、三十年前に起こった内戦以降未だ空席が目立ち、国を治めるための政が上手く行き届かない。

そのような国内の混乱した状況を憂う…王の実の息子である彼の諸侯は、東方執政の任に名乗りを上げたのです」


興奮気味に話をする使者を、北方探索の任にある騎士はじっと観察している。

しばらくの沈黙の後、彼は使者にこのように告げた。

「使者殿よ、貴女の意見は分かった。

しかしながら…私も騎士の一席にある身の上のため、貴女の意見に軽々しく頷くことも、彼の諸侯を東方執政の任へ推挙する件も受け入れられない。

…私の目の前で国を憂い何かを成そうとする使者殿が、東方執政の任に着くというのであれば喜んで賛同するが。


ま、冗談だ。

気にされるな」


彼が使者の話を受け流すと、使者は笑った。

「本当に…おかしなことをおっしゃるのですね。

私は彼の諸侯の使者に過ぎない。

彼の諸侯のように、国の重職にある者でもない。


にも関わらず、私が東方執政の任に?


北方探索の任にある騎士ともあろう方が、何とおかしなことを口にするのかしら。

私がその任を賜わったとして、一体何ができるというの?

諸侯の身分を持たず執政の任を果たすための経験も足りぬ私が、その席についたとしても、悪意ある諸侯に足を引っ張られて国を傾けるだけ。

その一方で彼の方は王の息子であり、東方領の諸侯のひとりであり、身分も経験も充分ですでに任を支えるに足る立場にある。


貴方がなぜそのようなことをおっしゃるのか…到底理解できない。

でも貴方の様子を見ると、全くの嘘言とも思えない…何故かしら」


北方探索の騎士はにやりと笑った。

「貴女は…彼の諸侯の縁者ではないか?

よく似ている。

しかし私が知人から耳にした彼の諸侯の人となりと比べると、人としての本質は異なるようだ。

ただの空言だ。気を悪くしないでほしい。

繰り返し申し伝えるが、彼に対する支持も推挙もしない。

それは、私の円卓の騎士としての任務を阻害する恐れがあるからだ。

とはいえ…貴女の話が本当であれば、円卓会議にて、彼は諸侯から騎士の席へ異動になるだろう。


…そうだな。

これを私から。


北方辺境伯の妻であり王の姉君である方から頂いたクリスマスプレゼントの靴下だが、私には少し小さすぎる。

何も持ち帰る成果がなくては、貴女も困るかもしれない。

せっかくの機会だ。受け取ってほしい」


北方探索の騎士はそう言うと、執務机の上に置いたままのクリスマスプレゼントを使者に手渡した。

使者は興味深そうにプレゼントの包みを見た。


「靴下?」


手編みですね、と使者が言うと、北方探索の騎士は、そう、と言って笑った。

「贈り物を貰いたがる子どもに、靴下は必要だからな。


では、退出を。


貴女は面白い。

次は円卓の会議にてお会いできればと思っている。彼の諸侯の使者殿よ」

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