40.北方探索の任にある騎士とある夫婦の話-4
北方探索の騎士はプレゼントのラッピングを解いた。
中から出できたのはクリスマスカラーの手編みの靴下。
とても暖かそうな、羊毛の毛糸で作られている。
北方探索の騎士は北方辺境伯の妻に尋ねた。
「上手くできている。
これは君が編んだものか?」
彼女はいいえ、と首を振った。
「私が作ったのは私の家族の分だけ。
貴方に差し上げたものや、宮廷中で配ってまわっているのは、編み物が得意な北方辺境伯領の人々にお願いして作ってもらった靴下よ。
今年はよい羊毛がたくさん取れたらしいわ。
お祭りも好評で、今年は年中みな編み物に熱中しているようで、たくさん作ってくれたわ」
北方探索の騎士は頷いた。
「なるほど。
宮廷中に配って回れるほどたくさんの靴下が準備できてるということは…
君もそのお祭りに参加してきたのか?」
「ええ。
みんな私がいるとびっくりしてしまうから、魔法で姿を変えてこっそり、ね。
それでも、顔馴染みの人達には私だと分かってしまったようだけど」
彼女は、彼女が参加した北方辺境伯領の羊毛に関わる会社と編み物好きが集まるお祭りの様子を、北方探索の騎士に話した。
手渡された靴下を眺めながら彼女の話に耳を傾け、北方探索の騎士はひとしきり思案し、彼の机の引き出しを開けた。
引き出しの中には、白く細く紡がれた羊毛の毛糸の束がおさめられていた。
彼はそれを彼女に手渡す。
「これは別の方への手土産に考えていたものだが…これを貴女へ。
ある北方の国の、北方辺境伯領の人々と同じように羊を育て、編み物をする方達から頂いた毛糸だ。
頂いたものであるので、さほど多くはないが…靴下くらいは編めるのではないかと思う。
それでもよければ貰ってほしい。
…貴女の仕事の役に立つように」
北方辺境伯の妻は、驚いた様子で渡された毛糸の束を見た。
隣で彼女の手元を覗き込んだ夫が、これは、と感嘆の声を上げる。
夫の言葉に彼女も頷き、彼女は北方探索の騎士に尋ねた。
「貴方はこれをどこで手に入れたのかしら。
これと同じ毛糸で編まれたショールを、宰相殿が身につけているのを先ほど目にしてきたわ。
あれは貴方から彼女へのプレゼントね」
そうでしょう、と指摘する彼女の言葉に、北方探索の騎士はばつが悪そうな表情を浮かべ、何故分かったんだ、と彼が呟いた。
彼女はやはりそうなのね、と頷いた。
君の予想は当たったな、と彼女の夫は両手を叩いた。
彼女は北方探索の騎士にさらに詳しく話を聞こうとしたが、友人の苦境を察したのか、彼女の夫が、お腹が空いたので早く夕食に行こう、と提案した。
北方探索の騎士は、ほっと胸を撫で下ろした。




