38.北方探索の任にある騎士とある夫婦の話-2
探索の任とは、何か?
『聖杯』を探すための任務であると、この国の古い定めにはある。
古には王の忠実な側近達が聖杯を探し世界中をさまよい探し回っていたとの記述が、国の歴史書には残されている。
この国では円卓の騎士の席にある者が、聖杯探索の任に当てられる。
聖杯探索の任務にあたり、聖杯を見つけられた者もいれば見つけられない者もいるようで、その任務の達成は困難を極めるとのことである。
探索の任にあたる騎士は、聖杯探索に加えて、近年では諸外国との外交も大きな役割であるが、その内容は担当地域により大きな違いがある。もちろん騎士の位についている者以外の、諸侯や官吏などもこれらの任務に関わる者はいる。
北方探索の任務にあたる者は、国同士のバランスを重視し、
中央探索の任務にあたる者は、国相互の利益調整を重視し、
南方探索の任務にあたる者は、国同士の交易状況を重視し、
それぞれ任務にあたっているようである。
四年前にある病が世界中に蔓延し、二年前に王と彼の騎士が行なっている調停の発端である、北方諸国の大国による戦が始まったことにより、国際政情が揺らぎ、この国もその余波を受けている。
世界情勢の変化に対応すべく、騎士および諸侯による円卓会議にて、長らく空席であった中央探索と南方探索の探索の騎士の席の二席が埋められ、海外に派遣されることになった。
ある騎士は北方探索の任にあたっている。
彼が王と騎士、諸侯による円卓の会議にて、この任を拝命してから長い月日が経った。
彼はある病が世界中に広まる前から、この任務に当たっており、病の当時は行く先々のどの地域も荒れていたが、最近は少し落ちつきを取り戻したようだ。
北方諸国は世界でも比較的豊かな国が多い。
それには民族的な事情があるらしいのだが、詳しい事情はよく分からない。
身体能力に違いがあるとも聞くが、夏が短く、『白き夜』の日が訪れる国々とこの国の人々には、確かに、考え方に違いが出るかもしれない。
今回は彼も円卓の会議に出席することになり、数年ぶりの長期帰国となった。
彼が任務が多忙で国内に帰れぬ間に、中央探索の任および南方探索の任の騎士の席が埋まり、騎士となった彼らと先日初めて邂逅することになった。
どちらの騎士もまだ年若く優秀であり、将来を有望視されていると聞く。
うち一名は女性で、彼が探索の任について以降はじめて異性の騎士が名前を連ねた。
過去、円卓の騎士に女性が席を占めることもあったが、近年では男性のみがその席にあり、しばらく女性は不在であった。




