36.西方執政の任にある騎士の息子の話-4
その年最後の月がはじまり数日が過ぎた。
この国の宰相である彼女は、中央探索の騎士を伴いやってきた西方執政の騎士の息子である彼を、その日最後の客人として彼女の執務室にて出迎えた。
中央探索の騎士の友人は優雅に一礼して、この国の宰相である彼女に向かって話し始めた。
「初めてお目にかかります。
西方執政の任にある騎士の息子でありこの国の一諸侯である私から、
この国の宰相閣下にお伝えしたいことがあり参上しました」
宰相である彼女は、お父様によく似ていらっしゃること、とほほ笑み、話を始めた。
「二年前に貴方が密かに王より受けた命令については、王並びに西方執政の騎士より私に伝えられている。
…ようやく時が満ちたのかしら」
中央探索の騎士の友人も釣られて笑った。
「そのようです。
ここに今一度、私が二年前に王より受けた命令を復唱しましょう。
王は私にこのように仰られた。
『私の忠実にして親友である西方執政の騎士の息子に頼みたいことがある。
君にこれから伝える件を、内密に詳しく調査してほしい。
その件は、この国の根幹を大きく揺らし危機をもたらす事件に発展する可能性がある。
私が大きな信頼を寄せる者に、その件に関する調査と処理を頼みたく思っている。
この件に関与していない他の誰かに簡単に命令の内容を漏らしてしまうような、口の軽い者では対応ができない任務である。
王である私から君に南部総督の騎士の席を約束しよう。
任務を果たすには充分な地位であると思う。
諸侯のままでは、少し荷が重いからね。
どうだ、やってくれるかね』と。
当時の王より南部総督の任と円卓の騎士の席に名を連ねる栄誉を賜りましたが、時が満ちるまでその任に就くことを、その時に交わしたもうひとつの約定により、先伸ばしにしていました。
…貴女にこれを」
彼から彼女に渡されたのは白い小瓶。
彼女は小瓶を開けると、小さくまさか、と非難の声を上げた。
中央探索の騎士の友人である彼は頷いた。
「時の女神である宰相閣下も、これが何かご存じでしたか。
先日私の管轄である港街の積荷から押収されたもので、我が国では輸入を禁止されているものです。
私の任地でこれが見つかったのは、はじめてのことです。
これはもしかしたら、王の命令の件の一端であるかもしれない。
今回の円卓会議にて、私は騎士および諸侯に、南部総督の騎士の席への就任を願い出る。
王から与えられた命令の実行と円卓の騎士就任への私の意向を、誰よりも早く貴女に伝えるためにこちらへ参りました。
我が国の美しき時の女神よ。
お会いできて光栄に思います」




