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羊毛を巡る一連の事件について〜ある国の騎士達の物語〜  作者: さばとらのはは
1-2. 年末の贈り物合戦と騎士の異動に向けての策謀
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34.西方執政の任にある騎士の息子の話-2

中央探索の騎士と彼の友人はゲームに没頭しているようで、しばらくお互いに何も話さない時間が続いた。


ある駅への到着のアナウンスが流れた時、中央探索の騎士が口を開いた。

「先ほどの…君の話の続きが聞きたい」


彼の友人はボードの盤面の駒をひとつ動かし、顔を上げる。

目の前の中央探索の騎士の表情は少し暗いように見える。


彼の友人は中央探索の騎士に質問をした。

「何を話せばいい?」


「僕が行なった、少し早まったこと、とは一体何のことだろうか?」


「そうだね…これは僕が知り得た情報から僕が思うところを話すよ」


友人の言葉に中央探索の騎士は頷いて、ボードの盤面を見たまま話を進めるよう促した。

彼の友人もまた、ボードの盤面に視線を戻した。


「この国のみならず世界中で、王と彼の騎士が行なっている調停の原因である戦がまもなく終わるという噂が流れている。

しかし、これはまだ決定事項ではない。

僕の手元にはそうはならないという情報も流れてきている。

この戦は少なくとも、年末の円卓の会議までに終わることはない」


中央探索の騎士は友人の話の間に、自分のチェスの駒を動かした。


彼の友人は即座に自分の駒を動かして、さらに話を続けた。

「先ほど君からこのような話を聞いた。

財務卿閣下が君を北方の執政に据えるという噂話がある、と。

これも早まった判断だ。

君が中央探索の任務についてだが、まだ任務についてからの期間が短く、成果も思うように出せていないようだ。

今年の円卓会議での、北方執政への異動はないだろう。

またこれは僕が、円卓の騎士であり西方執政の任にある父から聞いた話なんだけど…

この国の財務卿閣下は、彼が騎士の席に就任したばかりの若かりし頃から、国一番の魔術師である美貌の宰相閣下に惚れ込んでおり、毎年この時期に欠かさず贈り物をしている、と」


話の間も、彼らの目の前にあるボード上の駒は動き、ゲームは進んでいく。


中央探索の騎士は彼の友人の話に、顔を曇らせた。

「つまり…財務卿閣下を差し置いて国の宰相殿に贈り物をした探索の騎士の僕たち3人の言動は、その…いらぬ騒動を引き起こした可能性があると。

もしかして、財務卿の恋路の邪魔をしてしまった、ということだろうか?」


中央探索の騎士は、やってしまったな、と頭を抱えた。


そのような様子の見て、彼の友人は頷いた。

「君は知らなかったんだね。宮廷内ではかなり有名な話だよ。

ところで宰相閣下にクリスマスの贈り物をしようと提案したのは、3人のうちの誰だ?」


中央探索の騎士は答えた。

「南方探索の騎士の彼女だ。まさか…」


彼の友人は苦笑いした。

「君は彼女の、ちょっとした計略に巻きこまれたんじゃないか?

彼の騎士が狙ってそれを提案したとすれば、ずいぶんな事件になってしまったね。

あの財務卿閣下を動かしたのだから」


「まさか…南方探索の騎士はそういった計略を行なう女性には見えない。

ただ彼女の言動を見ていると、宰相殿に対しては、少し…執着が過ぎる気はしないでもないが

…いや、まさか」


「これでチェックメイト。ゲームは終了だ」


彼の友人は、盤面上の黒い駒を王手に動かした。

中央探索の騎士は、僕の負けが決まったようだね、と両手を上げた。

彼の友人は、これで僕の勝ち、ともうひとつ別の駒を動かして宣言し、ボードと駒を鞄に戻し、残りが少なくなったインスタントティーを一気に飲み干した。


「間もなく到着だ。

宰相殿にお会いする前に、少し調べものをする時間がほしい。

そうだな…明後日、宮殿で合流しよう」


友人の言葉に、中央探索の騎士は頷いた。

「わかった。宰相殿に謁見の予約は済ませておくよ。

財務卿が彼女の執務室にアポ無しで来訪して以来、何故か予約しないと会えなくなってしまったんだ」


彼の友人は笑った。

「年末は宰相閣下も来客予定が詰まってお忙しいだけさ。

君の気にしすぎだよ」

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