33.西方執政の任にある騎士の息子の話-1
中央探索の騎士は、彼の古くからの友人を訪ねていた。
彼の友人は、ある港街を治める立場にある。
彼は王の腹心であり西方執政の任にある騎士の息子である。
中央探索の騎士がその席に就く以前から親交が厚く、探索の任から国内に帰国した折には手土産を持って彼の所までよく遊びに行くのだった。
彼の友人は忙しい人物のようで、いつも執務室の上の書類の山と睨めっこしながら、中央探索の騎士の話に相槌を打つのだった。
「ふうん。なるほどね」
ほとんどの話は相槌と共に終わってしまうが、それは彼にとって言葉を返す必要のないことだからだろうな、と中央探索の騎士は思っている。
しかし今日は珍しいことに、彼の友人は書類から目線を離してこのように言った。
「君の話はいつも面白くて、聞いていて退屈しない。
君が忠実に任務に当たり、数多くの経験を積んでいることも分かる。
時に有益な情報も多いが…
少し早まったことをしてしまったようだね」
友人の言葉に中央探索の騎士は顔を曇らせた。
「何か僕に落ち度があっただろうか?
聡明なる友人よ」
少し考えるように、彼の友人は答えた。
「君が知らずに行なったのであれば、取り戻せるものもあるだろう。
とはいえ、君以外の人間からも話を聞いた方が良さそうだ。
宰相殿や他の騎士の方々に報告事項もあることだし、宮殿へ行こう」
「君が動くなんて、一体どうしたんだ?
…不安だな。
でも僕も任務があるので、一緒に行くとするか」
中央探索の騎士の友人が治める港街から宮殿までは、高速鉄道での数時間の旅になる。
彼の友人は滞在に必要な荷物を全て宮殿の郊外にある別宅に送る手配を、駅に向かう途中で済ませた。
彼らは鞄ひとつで列車に乗り込む。
この時期は郊外から都市へ移動する人々も多く、駅の構内も列車内も混雑していた。
2人は駅の売店で購入した飲み物とサンドイッチ片手に、指定席に腰を落ちつけた。
彼らの周囲の席はまばらに埋まっており、目的地まで見知らぬ人との同席はなさそうだ。
「もう今年も最後の月か。早いものだ」
彼の友人が言った。
「今年もやっと終わりだ。長い一年だったよ」
中央探索の騎士も相槌を打つ。
「目的地に到着するまで時間はたっぷりあるし、世間話でもしながらチェスをしないか?
携帯用のボードを準備してきたんだ」
彼の友人はチェスのマグネットボードを取り出して、
「どうだい?」
と座席に備えつけられたテーブルの上に置いた。
友人は大のチェス好きである。
仕方ないなと思いながら、中央探索の騎士は頷いた。
「君とゲームをするのも久しぶりだ。
僕が白い駒を持たせてもらうよ。
君はチェスの名手だからね」




