24.国一番の魔術師である宰相への贈り物-4
その時、宰相の執務室の扉が大きく開け放たれた。
「私の麗しき宰相様、急ぎ帰国しました!
なぜかドレスをお召しになっている。なんてこと…
もう準備万端ですね‼︎」
南方探索の騎士である彼女の両手には、真っ白なクッションが握られている。
「宰相様、これお土産です!」
「ありがとう」
宰相である彼女は南方探索の騎士の執務室への突然の訪問に驚いた様子であったが、手渡されたクッションをとりあえず受け取った。
「とてもよい機会なので、これから撮影会をします。
ほらこのクッションを椅子の上に置いて。
そのショールを肩に羽織って。
絨毯はもう敷いていますね。
宰相様、写真を撮りますのでにっこり微笑んで下さい。
素晴らしい笑顔です!
…いち、に、さん‼︎」
南方探索の騎士は自分のスマートフォンで、若く美しいこの国の宰相である執務室の主の写真を何枚か撮影すると、二番目に出来の良い写真を一通のメールに添付し、ある場所へ送った。
…すぐに彼女のスマートフォンに返信が届いたようだ。
彼女は脇目もふらず、返信の内容を確認している。
部屋にいる誰もが彼女の動向に注目していた。
何度かのメールのやり取りの後、彼女は右手を握りしめて、やった!と小さく声を漏らした。
「もう話をしてもよいか?」
ひとり喜びを噛み締める南方探索の騎士に向かって、北方探索の騎士は声をかけた。
「今ならなんでもお答えします」
「何をしたんだ?」
「国一番の魔術師であり叡智ある、美貌の宰相様のお写真を、南の国のある羊牧場の主に送りました。
そこの羊は毎年品評会で金賞を受賞する、素晴らしい羊です。
宰相様へのお土産は、そこの羊から作られたクッション。
写真にはこのように書き添えて送りました。
『私があなた方の素晴らしい羊から作られたクッションを彼女に送りましたが、彼女の元には他の探索の騎士から他の地域で産出された羊毛からできた素晴らしいショールや絨毯が届いてます。
来年こそ、彼女を巡る贈り物の戦いに勝利したい。
何かよき知恵はお持ちではないだろうか?』
「それに対する彼らからの返信です。
『来年まで待つ必要はない。
貴女がその戦いに勝利するために必要なものを、これから準備しよう。
貴女にはまずこれを送ろう』
さて皆さま、私の手元に彼らから送られてきたものは一体何でしょうか?
彼らの羊毛で作られたショール?
それとも絨毯?
ドレス?
まさかのクッション?
さて何でしょうか?」
国の宰相である彼女は、深くため息をついた。
「これは難問だわ。
貴女はずいぶんと急いだようね。
もう少し時間を置いた方がよいのでは?」
「私からのクリスマスプレゼントがクッションだなんて…円卓の騎士の名が廃ります」
北方探索の騎士は笑いを堪えきれず、
「そのために急いだのか。…まあ、まずは円卓の会議に向けて準備をしないとな」
中央探索の騎士も相槌を打った。
「そうだね。
僕なんてまだ貴女に自己紹介すらできていない。
僕は中央探索の騎士。
…はじめまして、美しく可憐な南方探索の騎士よ」




