23.国一番の魔術師である宰相への贈り物-3
これから始まるのは、ある東の国で起こった羊毛に関わる事件のラストエピソード。
事件はまだ完全に終わってはいないようだが、これから羊毛に関わる別の事件が始まるようだ。
街に粉雪が舞う頃、宮殿の一室に3つの贈り物が届けられた。
その部屋の主であり、国一番の魔術師である彼女はそれらの品物を見て、感嘆の声を上げた。
「どれも素晴らしいものだわ!」
彼女は帰国したばかりの二人の探索の騎士を、彼女の執務室へ呼んだ。
北方探索の騎士は彼が持ち帰った彼女への贈り物について、このように説明をした。
「ある街で素晴らしい羊毛の毛糸に、ある街で素晴らしい羊毛の編み手に私は出会った。
それはどちらも寒さ厳しき北国で、ある物語の始まりの地でもある。
それは遥か深く地底を巡る旅であり、まるで私達探索の任にある者達の旅路でもあるように思える。
この毛糸と編み手により作られた繊細で優美なショールを、何よりも美しい貴女へ。
いつもお世話になっている貴女へたまにはこういった贈り物も必要だろう」
中央探索の騎士は彼が手配した彼女への贈り物について、このように述べた。
「本当は羊毛でなく絹で織られた絨毯にしようかと思ったのだけれど…
今回はこの絨毯を貴女に。
類稀なる美貌と叡智を持って長い時を過ごす貴女に、鋼鉄のように編まれた、永遠の楽園を描いたこの絨毯を。
…この部屋少し暖房の効きが悪くて寒いなって、実は前から思っていたので。
他の探索の騎士が貴女へ贈り物をするとのことでしたので、僕も貴女へこういったものを準備させて頂きました」
北方探索の騎士は、最後の贈り物が入った箱を開けて、
「これは東の国で起こった毛糸の事件の当事者である彼女から貴女へ。
彼女の国はかつて絹の生産が盛んで、今もなお細々とであるが、生産されているという。
これは世にも希少な緑色をした絹糸から織り作られた、絹のドレス。
事件の解決に協力してくれたお礼に、貴女に是非貰ってほしいとのことだ」
この国の宰相である彼女は笑った。
「とても興味深い贈り物ね。ある古の物語を思い出したわ。
事件についてまだずいぶんと怒っているのかしら…無理もないわね。
でも…このドレスは美しい」
彼女は箱から緑色の絹のドレスを取り出すと、万が一に備えて二人の探索の騎士に後ろを向くように伝え、彼女は彼女の魔法を使って目にも止まらぬ早さで着替えてそれを身につけた。
サイズも魔法で調整しフィッティングを済ませると、執務室に備え付けの姿見の前で不備がないか確認する。
「これは年末の催しで着させて頂こうかしら。
とても楽しみだわ」




