21.国一番の魔術師である宰相への贈り物-1
北方探索の騎士は南方探索の騎士から届いた手紙を、中央探索の騎士に渡した。
中央探索の騎士は頬杖をつきながら手紙を最初から最後まで読み終え、ふうんと感想を漏らした。
「彼女は博識だな。任地についていろいろと細かく調べているようだ。
僕とは大違いだね。
宰相殿が気に入るわけだ。
…今年の円卓会議で会えるかな」
中央探索の騎士は手紙を北方探索の騎士に返した。
北方探索の騎士は、手紙をそのまま鞄の中にしまった。
「突然の外遊らしい。
ずいぶん慌てた様子で南の国まで駆けていった。
何がなんでも円卓会議までには戻ると言っていた」
「そういえば…すっかり忘れていたよ。
探索の任に集中していると、そういったことを忘れてしまう。
昨年は任地で年越ししたから、円卓会議にすら参加していない。
そういえば年末の園遊会の準備も、僕たち探索の任の騎士の担当だったな。
帰国したら別の任務があるんだよね。
全くゆっくりする暇もない。参ったなあ」
「円卓会議のシーズンといえば、南方探索の騎士が面白いことを話していた。
彼女は我が国一番の美貌と叡智の宰相殿に、羊の国から最高の献上品を届けなければいけないと意気込んでいるようだった」
「は?」
「宰相殿へのクリスマスプレゼントだそうだ」
中央探索の騎士はなるほど、と頷いた。
そしてしばらく何事かを考え込んだ後、北方探索の騎士に尋ねた。
「貴方はあの美しき宰相殿に、南方探索の騎士と同じように、何かクリスマスプレゼントの準備をしているのか?」
北方探索の騎士も少し考え込んで、答えた。
「彼女には任務でいつも世話になっているし、今年は久しぶりに円卓会議に参加することもあって、任務の途中で準備をしてきた。
ちょうどよい物に巡り合ったことであるし」
「ふうん…宰相殿に何をお渡しするんだい?」
北方探索の騎士は中央探索の騎士に答えた。
「私の探索地で、世にも希少な羊毛が産出される地域がある。
世界の最北の地にしか生息しない羊から、少量しか取れないものだそうだ。
何よりも素晴らしいものを求める彼女にはちょうどよい贈り物だろう」
彼は鞄の中から、毛糸の束を取り出した。
「彼女にはこれで編んだストールを、現地から送ってもらうよう手配している。
…美しい糸だろう。
この羊毛の毛糸は、南方探索の騎士に渡そうと思う。素晴らしい羊毛を任地で探している彼女にとっては、よい贈り物になるだろう」
「なるほどね!
では僕も、貴方達に遅れを取らぬよう、宰相殿への贈り物を準備しなければ」




