20.南方探索の任にある騎士の話-4
北方探索の騎士は中央探索の騎士に、南方探索の騎士と対面した時の話を披露した。
「彼女はこのような人だ」
「面白いね。…ところで先ほどの毛糸の事件を、彼女に話したことはある?」
「いや」
「連絡を取ってみるといい。
彼女が探索に向かったのは、世界で一番の羊の国だろう?
今まで見えなかった問題に気づくかもしれない」
「彼女は忙しいと…」
「答えを急ぐ必要はない。
だってもう既に調停は始まっているのだろう?
調停をよりよく終えるために、私達は話をしているだけだ。
もし販売する者がただの善意の者であれば、補償をすぐに行うはずだ。
また悪意の者であれば、全く取り合わないだろう。
とにかく彼女に聞いてみれば?」
「そうかもしれない…では君の助言のままに」
北方探索の騎士である彼は、手紙に事件のあらましを書き、南方探索の騎士に送ることにした。
ふたりがのんびり帰路の旅を楽しんでいると、一通の手紙が空から降ってきた。
南方探索の騎士からの返信である。
『手紙確認したよ。面白いことに巻き込まれたようだね。
北方では毛糸…羊毛?を巡る争いが起こっているんだね。
こちらの羊毛はあまり個人に渡ることがないから、このような争いが起こることは少ない。
この地域の羊毛はメリノ種が主で、それは他の羊毛よりも細く長い繊維を持つ。
他の羊毛に比べてちくちくしにくく、柔らかいため、衣料用に使われることが多い。
(フリースも北方に比べて汚れが少ないよ。飼育環境も違うようだね)
羊毛は海を越えて、北方地域や中央地域で加工される。手紙の彼女の国でも加工され、織物になり、衣料品が作られているようだ。
問題の毛糸はどこの地域の羊が使われているのだろう?
問題があった販売者の隣の国では、詳しく説明しているメーカーもあるようだけど、この販売者はどうだろうか?
羊毛の種類や生産地域によって、毛糸にも違いが出るし、販売価格も異なってくるから、この毛糸が良いものだとは一概には言えないね。
…以上を踏まえて、手紙の彼女にこのように伝えてみたらどうだろうか?
[貴女が持っている、いろんな国で生まれた毛糸。それは羊の種も違えば、育った環境も違う。
手にとって眺めるのでなく、実際に編んで、何が違うのか試してみればいい。
そして問題のあった販売者の毛糸を見た時に、貴女はそれを必要とするだろうか?
貴女の手元には、もう既にたくさんの毛糸がある。これ以上、貴女に毛糸は必要なのか?
何故、それは必要なの?
もしさらに必要だとするのであれば、これから先は、交渉が必要だ。
事故が起こった事実は、貴女がそれを持つのに不足だという考えがあるからとも思われる。
相手からもう二度と毛糸を買わないという判断なら、これ以上の交渉は必要ない。
後は全て、貴女次第]
私の話は以上で終わり。
あとひと月で今年も終わり。
真夏のこの国では、雪の舞うクリスマスマーケットが恋しいよ。
今年の円卓会議には出席できるといいけど、成果が上がっていないから宰相様に合わせる顔がない…
では』




