19.南方探索の任にある騎士の話-3
南方探索の騎士はある北半球の国で、北方の探索の騎士と待ち合わせることになった。
国の宰相から預かった任務を果たすためである。
各々の探索に関わる情報については、他の探索の任務にあたる騎士などにもネットワークを介して公開されているため、彼がその国にいることは知っていたし、彼女も乗り換えの関係でそこを通過することになっていた。
北方探索の騎士は南方探索の騎士である彼女を見つけた。
彼女は特に人目を引く容姿ではないが、こざっぱりとして好感が持てる様子の女性であった。
彼は初対面の人間に対する礼儀作法通りに、彼女に握手を求めた。
「はじめまして。私は…」
「名乗りは結構です。
はじめまして。
あまり時間がないから、先に宰相様の要件を済ませます」
南方探索の騎士である彼女は握手に応じ、短く言葉を伝えると、鞄の中からいくつか小包を取り出し北方探索の騎士に手渡した。
それは彼が今まで持っていなかったもので今後の探索に任に必要なものだと彼女は言い、手早くその小包の中にあるものを取り出して、実際に目の前で操作しながら使い方を簡単に説明した。
その手際は無駄がなく、洗練されている。
「他に何か分からないことがあったら連絡を下さい。
使いはじめは戸惑うこともあると思いますので」
彼は彼女に礼を言った。
「忙しいところ、わざわざ届けてくれてありがとう」
「これも私の任務のひとつだもの。
引き続き北方探索の任、よろしくお願いします」
「南方探索の任も慣れぬことも多く大変だろう。
君もあまり無理はせず、現地で争いに巻き込まれた際には、あまり深追いし過ぎないよう気をつけなさい。
宰相殿からも伝えられていると思うが、まず自分の身を第一に考えて行動しなさい。
…ところで君は、中央探索の任にある騎士に会ったことはあるか?」
彼女は首を横に振った。
「いいえ。
まだ会ったことはないわ。
あの地域は私のような女性は探索にむかない場所だと宰相様がおっしゃっていたから、乗り継ぎでも利用しないようにしていたし、彼の騎士とは任地が重なることもないから、行き合うこともなかったわ」
「そうだったか。
まあ、中央探索の騎士からは性別に対する任地の違いに対して不満も出ているようだが。
…探索の任に性別は関係ないんじゃないか、と」
彼は彼で任地でいろいろあったようだ、と北方探索の騎士は続けた。
南方探索の騎士はふふふ、と笑った。
「そう。でも、ね。
私は探索するなら、世界一の羊の国がいいの」
彼女はそう言うと、にっこりと笑った。




