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羊毛を巡る一連の事件について〜ある国の騎士達の物語〜  作者: さばとらのはは
1-1. ある東の国での毛糸にまつわる事件
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18.南方探索の任にある騎士の話-2

南方探索の騎士の記録の続きである。


時間は十分に与えられている。

私が探すものは聖杯。

これがどのようなものか、実は…よく分かっていない。

何かの概念だろうか?

宰相殿との初めての対面の後、何度も話す機会を得ることができた。

他の騎士からもいくつか重要な情報が得られ、朧げながらも聖杯の正体がわかってきた。


宰相殿の所には世界中からいろんな情報が入ってくる。嘘偽りの情報も多いらしく、ずいぶん苦労しているらしい。


「人の起こすことであるなら、どのような理由を相手が述べようが、結果が同じであれば、理由も結局のところ同じであることが多いのだけれど」


彼女の話は非常に難解で分かりづらく、私には理解できないこともある。

その一方であの方は、私に対してこのような評価を返してくる。


「貴女の話は分かりやすい。

探索の任に当たる騎士は、いろんな国の方達と話さなければならないから、相手の話を巧みに聞き出し、上手く情報のやり取りできる者でなければ務まらないのよね」


叡智に富み美しく優しい宰相様にお褒めの言葉を頂くと何だか嬉しくなって、ますます任務にも張り合いが出た。


この宮廷のある場所には北側諸国の戦火の影響は全く届かないため、安心して調べものができる。

探索の任にある騎士は、戦火を交えている国々を通過することもあるようで、上手く難を切り抜けなければならず、任を果たすのも大変だという。


「貴女が旅する地域は未だ北側諸国の戦火が届いていない。

昔に比べ争いが少なくなった地域だけれど、これからは情勢が変わるかもしれない」


あの方はこの宮廷からは見えない、遥か遠い南国の空の下に思いを馳せているように見えた。


それから程なくして、私も探索の任に出ることになった。

任地へは海を越えなければならないため、飛行機で行くことが多い。


「話相手がいなくなってしまうのは、悲しいわ」


私的に権力を振う宰相殿の意向により、私は他の騎士とは異なり、短期間での探索と帰国を繰り返し行なっている。

実は…これは非常に辛い。

北半球と南半球では気候が真逆であり、太陽が燦々と輝く真夏の我が国を出立したら、一日後には雪の降る真冬の国にいることになる。

私の旅行鞄には、羊毛のセーターと薄い綿のTシャツの両方が入っていたりする。

他の探索の騎士達は、旅行の荷物をどうやって少なくしているのだろうか。

長い旅路であれば、持つ荷物は多くなるだろうに。

任務を果たすために必要ではない、どうでも良いことを考えながら、旅に出ることもあった。


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