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スモーキング・ストーキング

作者: 妖目 覚

三作目です、煙草を吸ってたら思いついた話です、ありきたりなんでそんなに面白くないかも知れませんが、暇つぶし程度に、お酒でも、お菓子でも、煙草でも嗜みながら、どうぞごゆっくり。

カチっと、止め時の見つからない煙草へ火を灯した。深く肺に詰め込み、それまでそこにあった不満云々を巻き込んで、吐き出した。


 僕は、どこにでもいる人間だ、普通に生活して、時々金に困ったりするそんな人間だ。なので、特に名乗る必要も無いだろう。


僕は、大体仕事終わりにこの自宅近くのコンビニで、至高の一服を味わう。僕にとって、酒よりも頑張った自分を褒め称えてくれる素晴らしいものだ。煙草を吸わない人にとっては害以外の何者でもないだろう。だが、人の趣味趣向はそれぞれだ、僕はこの生き方が好きなのでそうしているに過ぎない。


風に当たって吸う煙草ほどうまいものはない。これはマジだ。断言する。

そして、一人寂しく吸う煙草も割とうまい。現に、今がそうだからだ。僕は基本一人なのでそう感じる。だが、時々そうじゃない時もある。僕が煙草を吸っていると、隣に人が来ることがある。その人達は多種多様で、中年の男性、若い女性、大学生、様々である。あまりにいいとは言えないが僕は、横目にその人達を観察している。煙草を吸っている時に人は、本性が見える物だ。普段騒がしそうな人でも、煙草を吸うときは、笑えてくるほどに静かになってしまう。煙草を吸わなさそうな人がタールの重い煙草を平然と吸っていると、少しばかり、敬意すら持ち始める。


僕はそういう人達を見るのも、煙草の一つの楽しみ方だろうと、思っている。人をじろじろ見るのは、自分でもいただけないと思うが、これは、僕のルーティンであり、悪い癖なので、こればかりはやめられない。だが、その悪い癖は時折僕に牙を剥いてくる。


風が強い日だった。僕はいつもの場所で煙草を吸おうと思ったが、あいにくのこの突風で、火をつけるのに手こずっていた。加えて、風になびいたライターの火が、指を軽くあぶり、「熱っ」と声を漏らした。これでは吸えないので、僕は今日の楽しみを保留することにした。火のついてない煙草を咥えながら、僕はいつもの観察を行った。僕の他にこの場所にいるのは、若い男女だった。おそらく交際しているのだろうか、二人は、火をつけるのに成功したようで仲睦まじく、煙草を吸っている。


少しして、二人のうち、男性の方が、「ちょっと飲み物を買ってくる」そう言って吸い殻を処理し、コンビ二へと入っていった。女性は、しばらく一人で待つことになった。かなり時間が経った後、男性はようやく、女性の元へと戻ってきた。「ちょっと遅いよ」女性は少し怒っていた。「ごめん、ごめん、トイレ行ってた」そう言いながら男性は、買ってきた飲み物を渡した。その頃には、二人とも煙草を吸い終わったようで、飲み物を飲みながら談笑した後、その場を後にした。僕はというと、結局煙草を吸わずに、家へ帰ったのだった。


数日後、僕はまた、火をつけるのに苦戦していた、どうしてか、風が強い日々が続いている。「またかよ」と一人つぶやく僕をよそに、また若い男女が、仲良く煙草を吸っていた。どうやら僕はあの二人がいると煙草が吸えないらしい。僕は少し彼らを疎ましく思った。仕方が無いので、僕はまたあの二人を観察することにした。


二人は、風の運ぶ冷気を凌ぐかのように、ぴったりとくっついている。こうも見せつけられると、少し腹が立つが、この怒りは墓場まで持って行こう。

男性の方が、以前と同じくコンビニへと入っていった。時を同じくして、僕も飲み物を買いに、コンビニへと入った。


店内にて、僕は飲み物と少しの夜食をかごに入れ、レジへと向かっていた。その途中、あの男性が女性と話していた。女性の方も待ちきれず入ってきたのかと思ったがどうやらそれは違うようだ。話している女性は、さっきの彼女ではなく別の女性であった。僕は好奇心に身を任せ、少し、レジにいくのを後にした。「久しぶり、ユウくん、ゲンキしてた?。別れて以来だから、2年ぶりかな?」どうやら、元カノというやつらしい。「お、おう久しぶり、何してんの?」思わぬ出会いだったようで、男性は動揺していた。

「買い物だよ、ユウくん、まだここら辺に住んでたんだね。」

「まあね」

「今度遊び行っていい?」

「ダメに決まってんだろ、もう別れてんだから」

「勝手に別れ話切り出したのユウくんじゃん。私まだ別れたくなかったんだよ?」


「そう言っても無理だって、もう彼女いるから、ごめんな」そういって男性は話を切り、店を後にした。

僕も後を追う形で外へ出た。その際、彼の元カノと思われる女性の前を通ったが、そのときに僕はその女性から、明らかな、憎悪に似た何かを感じとっていた。結局その日も僕は煙草吸う事は叶わなかった。


また、数日が経ち、この日は大雨に見舞われていた。僕は雨宿りついでに煙草を咥えつけつけようとした。そのとき、またあの二人の声が聞えた。僕は手の動きを止め、その話を聞くことにした。

「あのさ、最近様子おかしいよ?大丈夫?」女性が男性を心配している。

「大丈夫大丈夫、ちょっと最近忙しくてさ、疲れてるだけ、気にすんなって」

「そう?あまり無理しないでね」

「あ、今日うちで飲む?俺酒か何か買ってくるよ」

「本当!?、じゃあ、あんまり強くないヤツがいいな」

「オッケー、買ってくるよ。先に帰って待っててよ」

「うん、おつまみ作って待ってる」

そう言って二人は別れ、男性はコンビニへと入っていった。

彼の様子がおかしいというのは、本当に仕事のせいなのだろうか?僕はあの日店内で話していた女性を思い出した。あのときに感じたあの感覚が、まだ僕は忘れられないでいた。そのことを考えてるうちに、僕の喫煙欲はとうの昔に消えていた。僕は雨の中を走り抜け、家へ帰った。


少し間が開いて、数週間が経った頃、僕はいつもの場所で煙草を吸おうとしていた。煙草を咥えたとこまでは良かったが、ライターが見つからず、僕は存在しうる全てのポケットに手を突っ込んでは、探すを繰り返していた。このときの僕はとてつもなく滑稽であっただろう。

「火、どうぞ」そう言って、僕の前にライターを持った手がすっと伸びてきた。

「あ、どうも、すいませんお借りします。」僕は煙草に火をつけ、ようやく煙草にありつけた。

「ほんと、ありがとうございます。助かりました。」僕はライターを帰そうと、恩人の方へと目を向けた。そこには、僕の観察対象の彼がいた。

「どういたしまして。あるあるですよね」間近で見ると彼は、印象の良い、好青年だった。

「そういえば、お兄さんよくここで吸ってますよね。家ここら辺なんですか?」

「そうですよ、君は?」

「僕もここら辺に住んでるんです。彼女も一緒ですけど」

「そういえば、よく見かけますね」どうやら僕が観察している事には気づいていないようだった。

「仲よさそうに、煙草吸ってるから覚えてますよ」

「そうですか、何か恥ずかしいな」彼は照れながら頭を掻いている。

「あれ?今日は一緒じゃ?」

「ああ、彼女は今日忙しいみたいで帰りが遅くなるみたいなんですよ。あ、ご一緒してもいいですか?」僕がうなずくと、彼も自分の煙草に火をつけた。

煙草が吸い終わるまでの間、僕は彼と話をした。彼曰く、煙草を吸い始めたのは彼女の影響らしい。「彼女の職場が近くで、家も近いんで、お互い仕事終わりにここで合流して一緒に帰るんです」

「本当に仲がいいんですね」僕がそういうと、彼はまたニコニコしながら、頭をかいていた。

「じゃあ、僕はそろそろ失礼します」彼は、軽やかな動きで帰路へとついた。


「ただの仲良しカップルだったな」僕は、一人つぶやいて、二本目を吸い家へ帰った。


次の日、僕は夜食を買いにコンビ二へと向かった。コンビニは誘惑の多い魔境なので、僕は何を買うかかなりの時間悩んでいた。

そんな悩んでいる僕の耳に、話し声が聞えてきた。

「ねえ、ゆう君、この前のあの人誰?」

「誰でもないよ気にすんなって」この声は、あの仲良しの二人である。

「気にするなって、気にするに決まってんじゃん!あの人なんか変だし、ゆう君の様子が最近変なのって、あの人が原因なんじゃないの?」

「だから、気にすんなって、あの人はただの知り合いだから」

「絶対嘘じゃん!はっきり言ってよ!」彼女の少し怒りの混じった声は、僕の耳を通り越して、店内に響いていた。

「おい、そんな大声で叫ぶなって、後でちゃんと話すから」それでも彼女の怒りは収まらないようで、そのまま出て行ってしまった。彼もその後を追うようにコンビニを後にした。出て行くさなか、僕は彼と目が合った。

仲の良さそうなあの二人が、喧嘩するとは、思いもよらなかった。何か良くないことが起きているような気がする。僕はその日煙草を買うのを忘れた。


数日後、彼といつもの場所にて再開した。彼は少し申し訳なさそうにしていた

「すいません、この前はお恥ずかしいところを、あんなに怒る人じゃないんですけど」彼女のあの怒りは彼には想定外だったようだ。

「いえ、大丈夫ですよ、何かあったんですか?」僕は興味本位で聞いてみた>

彼は、少し顔を曇らせ、話し出した。 

「最近、元カノにつきまとわれてるんです。ちょっと前にここで久しぶりに会って」僕はあの女性を思い出した。

「俺の元カノって結構、重いというか、かなり依存が強い人だったんです。仕事中に電話してきたりとか、そういうのに困って別れる事にしたんですけど」

「その再会をきっかけにつきまとわれ始めたと?」

「はい、それでついこの前彼女と出かけてる時に目の前に現れて」


「あの何ですか?、何か私たちに用でも?」

「ふーん、これが新しいユウくんの彼女かぁ、ユウくん見る目ないね」



「そんな事を言い出したりして、困ってるんですよ。それで彼女と喧嘩しまして」

「警察とかに相談した方がいいんじゃ?」

「一応したんですけど、あまり期待は出来ないみたいで」

「そうなんですか、住む場所を変えたりは?」

「考えてはみたんですが、直ぐに引っ越し出来る状況じゃないので」

どうやら僕の勘は正しかったようだ。彼女に感じたあの憎悪は、今彼に刃を突き立てて、刺そうしている。

「何事もなく、終わればいいですね」

「ほんとにその通りです。すいませんこんな話しちゃって」

「いや、僕で良ければ話ぐらい聞きますよ」

「お兄さん、優しいんですね、なんかほっとしました」

その後もしばらく話をし、お互いに帰路についた。その日はなんだか雲が少し多いような気がした。


数ヶ月後、僕は仕事終わり、いつもの近くのコンビニで一服していた。最近かなり忙しく、いつもの千倍は煙草が上手く感じられた。今日は快晴で雲一つ無い日だった。僕が至高の一服を味わっていると、なじみのある声が聞えた。

「こんにちは、お兄さん」彼である。だが、今日の彼はなんだか少し違った。

いつもの好青年の感じは跡形も見られず、かなり、疲れているような感じだった。

「大丈夫?顔色悪いけど」

「大丈夫ですよ、最近忙しくて」本人はかなりごまかしているが、明らかに普通ではなかった。

「そう、ならいいけど」だが僕は、それ以上は聞かなかった。


「彼女は元気?」僕は他愛のない世間話で茶を濁した。

「元気ですよ、あの後、ちゃんと話し合って理解してもらいました」

「そうか、良かったよ」

「元カノにもちゃんと話して、これ以上はお願いだからつきまとわないでくれと言いました。必要なら警察を呼ぶとも伝えました。なので、多分つきまといは無くなったと思います。」彼は心底ほっとしていた。


「それは、良かったよ、これからも頑張ってな」僕はそう告げて、家に帰ることにした。彼の抱えていた問題が無事解決したようで、僕もほっとしていた。



数日後、僕が彼の姿を見ることはなくなった。

これは、ついこの前のニュースだ。

○月○日、市内在住の安田裕真さんが、遺体となって発見されました。同日に、二人の身元不明の死体も発見されています。こちらの身元はまだ分かっていませんが、警察は何らかの事件に関与しているとみて捜査を続けています。

それでは、続いてはお天気のコーナーです。・・・


おそらく、僕が彼の最後の姿を見たのだろう。そして身元不明の二人の死体。これは誰の死体なのだろう。僕は全ての答えを知っている。だが、僕はその答えを出さないことにした。これ以上は、もうやめておこう。


僕は、満点の青空の下で残った最後の一本の煙草をくわえ火をつけた。

深く吸い込み、これまでの全てを忘れるように煙を吐いた。空箱を握りしめ、じっくり味わう、今日の煙草は少しまずかった。


そうして僕の観察は終わりを迎えた。














あんまり、面白くなかったでしょう?。煙草によって得られるのはこの程度のお話を書くことぐらいです。けど私はこのやり方が好きなので、楽しくやらせてもらってます。人の好みは多種多様ですからね。

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