2024年問題B
ガララララッ
「おーーーほほほほっ!!呼ばれて来たわよ、山口!!そして、実くん!!あなた、ウチに来なさいよ!!」
急な連絡だったが、彼女もまた珍しく仕事が早く終わったので来てくれた。
かなり上品でウザイ言葉遣いをする
「ババアが」
「あ!?あぁっ!?山口!!あんた、今!!私になんて言いましたの!?この恰好を見なさい!この中年達の中にある可憐なる……」
「ババアって言ったんだよ、黒井ネコミ」
「うぎゃあああぁぁっっ!!山口いぃぃぃっ!!あんたはいつもいつも、この私に対しての言葉遣いがなってないわねぇぇっ!!今、独り身のくせにーー!!もっと喜びなさいよぉっ!」
年齢は伏せさせてもらうが、山口部長とは旧知の間柄である女性、黒井ネコミ。山口部長の言葉とは裏腹に、その容姿は暑そうな物流企業ではなく、涼しい夜の街に居そうな女性だ。別企業ではあるが、彼女もその重鎮であり、山口部長とタメ口でもなんら問題ないほどだ。
そんな彼女は、山口部長の一番弟子とも言える、実の事をこちらに引き入れたいと、色々とアタックを仕掛けているのだが
「あ、あ、相変わらずですね。黒井さん。……その答えは、いつもNOって言ってるじゃないですか」
実は山口部長の配達員の現役時代を良く知る人物の一人であり、今回はこの集められたメンバーの中で最年少である。現在は、現場の実質的なトップを任されている男である。その配達能力・業務能力は相当高く、他社からも引き抜きたいほどの配達員である。
「だははははは、実なら誰でもスカウトしたいよな。真面目だもんな。黒井ちゃんも好きだろうけど、実は山口の事の方が好きだからな!」
木下。山口部長の配達員の現役時代を良く知る人物の一人②であり、60越えの年齢ながら現場で働くお爺ちゃんタイプの人。山口達の先輩である。仕事は早いが、しょーもねぇミスばかりをして、よく山口部長に怒られる人だが。精神が強すぎて、全然効いてない。
「ほぉ、そーいうのは良くない言い方だな」
若草。山口部長とも黒井とも違うが、同じく別の物流企業で働く筋骨隆々な男性。彼もまた、山口部長達と同じくらいの立場を持っている。肉体からして、顔もかなり若作りとなっているが
「そーいうのは外で話す方が盛り上がるぞ。いや、ここで取り合うのも、俺は見たいし参加もしたいけどな」
「……若草くんは、そーいう趣味というか、癖が相変わらずですね」
頭の中は、ここで語るとヤバイ気がする。体力・筋力・存在感・威圧感と……肉体労働を極めた結果辿り着いたような顔と肉体をしていて、
「ドラマの配信は明日だから、飲むくらいはいい」
「それは少女漫画が題材のドラマだろ?」
少女系の漫画。女モノの漫画などを楽しむという癖がある。にも関わらず、女性に対してはそんなに興味がないという。この飲み会に参加させて良かったのか、不安にもなる一同だ。
黙ってればイケメン。仕事をしてれば、ガチで無敵のイケメンになる。それが若草だ。
ちなみに若草は結婚しているし、妻も息子、娘2人といる。
以上の6名で、再配達などの話をするのであった。
◇ ◇
【2024年問題】
お題形式ではないが、直近で話題となっているであろう物流問題が2024年に起ころうとする。
物流の……宅配関係に当たる、6名にとっては
「あーっ」
「そーね」
確かに大変だよなーって、溜めの一言を漏らしながら、揃って
「「あんまり関係ねぇーんだよな……」」
いや、関係ないわけじゃないけれど……。
メディアが騒ぐのも無理はないし、政府などもそれに対応をしているのだが。ぶっちゃけ、ここにいる彼等は”宅配”。”お客様へ届ける”といった業務がメインとなっているわけで。
「俺達のところは、トラックじゃねぇからな。黒井と若草も関係あるだろうけど……」
「いや、お客様に渡すところは、車がメインだから」
「一部ってだけの話だし。根本は違うのよね」
配達という業務は、基本的には車が行う。冷蔵庫とか洗濯機みたいな、馬鹿デカくて精密機械なら、そりゃあトラックで来ますよってわけだが。この問題におけるトラックドライバーの多くが何をやっているかっていうと、
「”拠点から拠点への配送”だからな」
長距離ドライバーがそのままお客様のご自宅まで届ける事はない(はず)。県を跨いでトラックを走らせ、大量の荷物や馬鹿デカい荷物を、ご利用されるお客様の拠点まで運ぶのだ。
荷物を直接渡す配達員の数よりも、荷物を拠点に運んでくれる運転手が少ないってのが、基本的な問題なのだ。だから、再配を無くそうや減らして配達員の負担を減らそうという声は嬉しいのだが……。
「俺達じゃなくて、トラックの運転手を手伝ってやれ」
「とりあえず、若い子にもトラック運転手を目指したいような環境作りだよな」
「そもそも、子供を増やせって……」
再配の増えた減ったは、トラックの運転手にはあんまり関係ないのである。それに”置き配”があると言っても、トラックが来るような荷物を”置き配”にするって、相当にヤバイ。洗濯機とかを玄関前に置かれたら困るし、設置は……できる人もいるだろうけど、自分でやってくれって言われても困るだろう?
ベットとか勉強机を玄関前に置かれたら、アタマに来るでしょ?
「こーいうもんの再配達はそりゃあイラつくだろう。でも、最適解が”置き配”にならないのは確かなんだよな。あくまで俺達のような”宅配”で、お客様も決して重要と思ってないのが条件で成立するんだよな」
ホントに大事なモノならちゃんと在宅して欲しい。別にどーでもいいのなら、気にはしないのである。
それを”2024年問題”だーって、大きく騒ぐのはいいが、肝心なのはトラック運転手の減少。心配と思っているのは、宅配よりもだ
「企業同士(BtoB)のやり取りの方が大きな事になるわね。物流問題って、こちらの方が大きな問題だわ。……子供にはスーパーとかコンビニに商品が届かなくなるって言った方が良いのかしら?いくらコンビニ店員が多くても、商品が来ないんじゃ、商品を並べられないし売れないでしょ?」
「人手不足の改善案や最新技術などもあるが、決め手となるような事はないな」
色んな方法で物を送る方法。
例えば、新幹線などの列車を使った方法も試されているが……。結局、駅から拠点に行くまではどうするのか?積載量などに関してもまだまだといったところ。
「AI技術の進歩で改善されるかもしれませんが、それよりも先に日本の物流が終わりそうですね」
「いくら進歩が早いと言っても、使う側が人間な以上、限度や法に触れるからな」
AI技術によって、これまで以上に物流は動く事になるとは思う。現在では配達順路もAI技術で作ってくれるので、”土地勘のない人”でも配達が出来たりもするとか。(完璧ではないらしいけど)
ただそこにも結局、”人が配達”をするということ。現在でもまだ、人が動かなきゃAI技術を活かせていないというのが現状だ。AI技術が進歩してきても、人間が増えず、進歩を止めれば無意味なのだ。
そして、AI技術に人間達は追いつけるのか?というのを、全員がYESとは言えないはずだ。馬鹿の考える使い方は、AIも想定していない……いや、人間の愚かさをAIは未来永劫理解できない。
「AI技術だがロボット技術だか。俺にはロマンの話だな。絶対、その頃の俺は死んでるぜ。だははははは」
「私達でも見れるのは一部だけだと思いますよ、木下さん」
自動運転で全て解決!という声もあるが、そうなれば難しい法の話にもなる。そして、AI技術もまだまだ足らず、それを管理・維持するための費用。完璧と呼ばれる代物であるなら、周囲にも完璧を求めなければならない都合も考えれば……。
”限定的には可能だろうな”という夢物語で終わりそうな事だ。
「人が一切住んでいない場所でなら、AI技術を使った物流というのは可能だろうし、それなら決して遠くはない。だけど、人間は馬鹿が多すぎるから、どーやって人間達が学んでいくが重要だろうな」
山口部長でこのお話は締めるとする。
まだまだ先は、非常に遠いと思っている。




