火◾️朝ごはん
少しでも気に入っていただけたら
イイネやブックマークで応援してもらえると嬉しいです!
◾️■火焔視点◾️◾️
「かえんっ!!さっさと起きろ!!」
怒鳴り声と共に体を蹴飛ばされ
僕は寝ていたベッドから転がり落ちた
【火焔】
「・・・い・・・たい・・・何するんですか・・・?」
起きたばかりではっきりとしない意識の中
僕を蹴り起こした人物に視線を向けた
そこに立つのは
茶色髪の大人の男の人
…天地さんだ
【天地】
「居候のくせに主人より寝てんじゃねーよ
さっさと朝飯の準備しろよ」
そう言いながら廊下へ続くドアへと向かい
【天地】
「俺がリビングに行く前に準備しとけよ?
少しでも遅れたらお仕置きだからな~?」
恐怖を感じる笑顔と共に僕の部屋から出ていった
【火焔】
「・・・お仕置き」
考えただけでもゾッとした
慌てて体を起こし天地さんより早く食事の準備をするために部屋を出た
高級感漂う広い廊下は窓が無いからか朝なのに暗い
そんな廊下を走り抜けキッチンへと向かった
高い位置にある小さな窓から少しの朝の日差しが差し込む暗いキッチンには使われた痕跡が全くない調理器具などが置かれている
それを横目に壁に設置された窓のサイズの鉄の扉を開けた
その中には調理された出来たての朝ご飯が3人分用意されていた
それを近くにあった料理を運ぶカートに乗せ
食事をするリビングへと運んだ
【火焔】
「・・・はぁ」
なんとか天地さんより早く準備をする事ができた
・・・と言っても、持ってきてテーブルに並べただけだけど
【火焔】
「・・・あ!」
準備が終わったところで黒髪の大人の男の人がリビングに姿を見せた
【火焔】
「魔境さん!おはようございます!」
ガバッと頭を下げ、魔境さんに元気に挨拶をした
【魔境】
「・・・まだ居たのか」
少し僕に目を向け呆れたようにつぶやかれた
【天地】
「いくらいじめても引っ付いて来るんだから仕方ないだろ~?」
陽気な声と共に天地さんもリビングに入って来た
そして朝食の準備が出来ているテーブルに目を向け
【天地】
「あ~?減点だなぁ~」
・・・ニタニタと笑った
・・・その顔に最近恐怖を感じてきた
【天地】
「コーヒーがねーぞ~?朝はコーヒーだろ〜?」
【火焔】
「・・・取ってきます」
静かに言葉を返し、カートを押しながらキッチンへと向かった
・・・天地さんは悪い人じゃないけど
・・・ちょっと意地悪過ぎる
・・・きっと、僕を追い出そうとしてるんだろうなぁ
【火焔】
「・・・・・?」
キッチンでコーヒーの準備をしていると少し視線を感じた
振り向いて背後を確認したけど誰の姿もない
【火焔】
「・・・・・・」
・・・ちょっと怖いな
・・・住んでる人の割に、この住居はスペースが広すぎる
【火焔】
「・・・・・・」
コーヒーをカートに乗せ早々に天地さん達がいるリビングへと戻った
【天地】
「おせーぞ?先に食ってるからな~?」
言葉通り、天地さんと魔境さんは僕を待つ事なく食事を始めていた
・・・別にかまわないけど
・・・少しだけ寂しくなった
天地さんと魔境さんにコーヒーを配り僕も席に着いた
【火焔】
「いただきます」
手を合わせ一声かけて僕も食事を始めた
【天地】
「なぁ?」
そんな中静かに天地さんが言葉を発し
【天地】
「お前って、どうやったら出て行くんだ~?」
ニタニタを愉快そうに笑った
・・・やっぱり、この人は僕を追い出そうとしているようだ
【火焔】
「僕、絶対に出ていきませんよ」
そんな天地さんにはっきりと言葉を返した
【天地】
「もう2週間だぞ?そろそろいいんじゃないか~?」
【火焔】
「まだ、なにも教えてもらってません」
【天地】
「なにを教えてほしいんだよ?」
【火焔】
「強くなる方法です」
【天地】
「だから~強くなる奴は勝手に強くなるって~」
【火焔】
「僕は誰にも負けないくらい強くなりたいんです」
【天地】
「・・・はぁ」
はっきりと言葉を返す僕に天地さんは呆れたようにため息をついた
【魔境】
「・・・お前、歳はいくつだ?」
急に魔境さに尋ねられた
・・・でも、僕は自分の年齢は分からない
【火焔】
「えっと・・・9歳だと思います・・・多分」
なんとなく嘘をついてるようであまり言いたくなかった
【天地】
「9歳?それにしてはデカくないか~?
14歳・・・それは流石にないか?」
僕の言葉に天地さんは納得できないように考えている
【魔境】
「・・・何歳にしろ、お前がここに来てから、という事は間違いないだろうな」
そう言って少し天地さんを睨みつけた
【天地】
「ちょ!お前、まだ俺を疑ってんのか!?俺の子供じゃねーって!マジで!」
【魔境】
「・・・どうだか」
慌てたように声を上げる天地さんに不愉快そうに言葉を返し
魔境さんはリビングから出て行ってしまった
【天地】
「・・・な?・・・絶対に違うよな?」
【火焔】
「・・・絶対に違います」
怯えたような天地さんにはっきりと言葉を返した
【天地】
「だよな~!俺、火の技能者の女には手を出したことねーしな!多分!」
うんうんと、自ら納得するようにうなづいている
【天地】
「んじゃ、後片付けちゃんとしとけよ~」
そう言って天地さんは立ち上がった
【火焔】
「ま、待って下さい!僕も何かさせてもらえないですか!?なんでもしますから!!」
そんな天地さんに慌てて声をあげた
【天地】
「あ~?だから~お前は後片付け!んで掃除!以上!」
僕の言葉に適当に返し、天地さんもリビングから出て行ってしまった
【火焔】
「・・・・はぁ」
一人リビングに残され、大きなため息をついた
・・・天地さんに弟子にしてもらう為ここに来て2週間
・・・僕は掃除とご飯の仕度しかさせてもらえない
・・・僕は強くなる方法を教えて欲しいのに
【火焔】
「・・・よし!掃除をしよう!」
わざとらしいくらいに大きな声を上げ
少し食事を残したまま、リビングを出て廊下向かった
そして、当てもなく廊下を歩く
・・・正直、ここで掃除をする場所なんてない
・・・大して散らかってないし
・・・そもそも勝手に部屋に入るなって命令されているのにどこをどんな風に片付けろというのだろうか?
【火焔】
「・・・はぁ」
・・・本当に天地さんは意地悪だ
適当に時間を潰し
こっそり隠れてリビングを覗き見た
・・・この屋敷に住んでいるのは魔境さんと天地さんと僕
・・・そして、僕より少し小さい赤黒い髪の子供
【火焔】
「・・・・・・」
今日もその子は僕たちが食べ残した朝食を食べていた
初めてそれに気づいたのは1週間前
たまたま、後片付けをせずにリビングを離れて再びリビングに戻ると残っていたはずの食べ物が全て無くなっていた
それから毎日、僕は片付けをせずにリビングを離れるようになった
・・・多分、あの子はお腹が空いているんだと思ったから
【火焔】
「・・・・・・」
もうしばらく時間を潰そうと廊下に戻った
・・・あの子に声をかけようかとも考えるけど
・・・なんとなく、見てはいけない気がしたから声をかける事はしなかった
適当に時間を潰し、再びリビングを覗き見る
【火焔】
「・・・・・・」
そこには誰の姿もなかった
それを確認して片付けをする為にリビングに入った
【火焔】
「・・・・・・」
そして、食べられるものが何も残っていない食器を片付けていく
【火焔】
「・・・・・・」
・・・ここで暮らし始めてすぐ、僕はあの子に話しかけた気がする
・・・そして、名前を聞いたはずだ
【火焔】
「・・・・・・」
・・・なのに何故か
【火焔】
「・・・・・・」
・・・僕はあの子の名前を思い出す事が出来なかった
【火焔】
「・・・・・・なんでだろう?」
・・・よく分からない
・・・今だって・・・少しおかしい
・・・ついさっきあの子の姿を見たはずなのに
・・・あの子がどんな姿だったか思い出す事が出来ない
【火焔】
「・・・・・・」
・・・少し、怖かった
・・・でも、僕はその子の事が気になって仕方なかった