火◾️僕には見えてる
◾️◾️火焔視点◾️◾️
・・・微かに誰かの息遣いが聞こえる
・・・息を潜めるような息遣い
【火焔】
「・・・・・・」
そっと物陰から息遣いが聞こえる場所をのぞき見た
部屋の一角に設置された鉄格子の小さな空間
その中には怯えたように身を縮める女の人
【火焔】
「大丈夫ですか!?」
その姿に思わず声を上げ近づいた
【女の人】
「っ・・・だれ・・?」
そんな僕に怯えたような目線を向けた
【火焔】
「大丈夫ですよ、僕らは助けに来たんです」
怯えさせないようにニコッと笑って言葉を返した
【女の人】
「・・・助けに?
・・・ここから出してくれるの?」
【火焔】
「はい!ちょっと待っててくださいね」
女の人の言葉に笑顔で返し
鉄格子を両手で掴んだ
そして、熱を加えながら左右に開くと
鉄格子は簡単に広がり出口となった
【火焔】
「どうぞ」
笑顔で声をかけると女の人は怯えながらもゆっくりと鉄格子の中から出てきた
・・・でも、この女の人は
・・・完全に大人だ
・・・僕らが探している妹ではないのかも知れない
・・・とは言っても、よく考えたら僕らは妹の特徴も年齢も何も知らないしな
・・・どうしようか?
【火焔】
「・・・・・・・・」
竜輝に尋ねてみようと目を向けると
【竜輝】
「・・・・・・・・」
竜輝は少し離れた場所で何かをジッと見つめていた
【火焔】
「・・・どうしたの?」
そんな竜輝が気になり近づいた
【火焔】
「っ!?」
竜輝の視線の先を理解した時、思わず息を飲んだ
・・・竜輝の前にあるテーブルのような台の上には
・・・少しパーマがかった長い髪を広げた僕らより小さい6歳くらいの女の子がいた
深く目をつぶった女の子は胸の上で手を組み台の上に寝かされている
【火焔】
「起きて!助けに来たよ!!」
その女の子に駆け寄り慌てて声をかけた
・・・何も確証なんてない
・・・でも
・・・この子がきっと僕らが探している女の子だと思った
【火焔】
「ねぇ!起きてっ!」
【竜輝】
「・・・火焔」
女の子の体を揺らしながら声をかけた僕に竜輝が小さく言葉を向け
【竜輝】
「・・・・・・もう、この子は起きない」
深く目をつぶり、小さく告げた
・・・もう、起きない?
・・・じゃあ、この子は
【火焔】
「・・・死んでるって事?」
小さく尋ねた僕の言葉に竜輝は小さく頷いた
【火焔】
「っ・・・・・・・・」
・・・どうして
・・・せっかく、助けに来たのに
・・・死んじゃってたら
・・・ここまで来た意味がないじゃないか
【女の人】
「・・・その子」
そんな僕らにさっき助けた女の人が声をあげた
【女の人】
「・・・その箱から出された時は
・・・もう、息をしてなかったみたい」
少し視線を下げるように足元に置かれた箱に目を向けた
その箱は長方形の箱
この子、1人がギリギリ入れるような
細く小さな箱だった
【竜輝】
「・・・・・・・・」
その言葉を聞いて竜輝がゆっくり歩きだし箱を開けた
【竜輝】
「・・・・・・・・」
その瞬間、竜輝の顔が辛そうに深く目を閉じた
長方形の箱の中には
流し込まれたように固まる透明なゼラチンのような物で埋まっていた
【竜輝】
「・・・・・・・・」
そして、竜輝はゆっくりと動き出し
【火焔】
「っ!?」
・・・深い眠りについた女の子を抱き抱えた
【火焔】
「・・・な・・・何してるの?」
突然の行動に戸惑いながら竜輝に尋ねた
【竜輝】
「・・・・・・連れて帰る」
感情を感じない声で静かに答え
女の子を箱の中に埋め尽くされたゼラチンの上に乗せた
【火焔】
「っでも・・・その子は・・・もう」
【竜輝】
「・・・・・・指」
戸惑いの言葉を向ける僕の言葉を塞ぐように竜輝が小さくつぶいた
【竜輝】
「・・・この子の指・・・傷だらけなんだ」
その言葉で女の子の手に目を向けた
顔も体も
一つも乱れがない綺麗な姿なのに
女の子の手
指先だけは爪が剥がれたように歪み
爪の隙間には血が固まっていた
【竜輝】
「・・・この子は帰りたかったんだ
・・・最後の最後まで
・・・家に帰りたかったんだ」
そう言いながら伸ばした竜輝の指先が箱のフタに触れた
竜輝が触れるフタの内側には引っ掻いたような無数の傷が付いていた
・・・その傷はきっと女の子が付けたもの
・・・狭いく暗い箱の中で必死に生きようと足掻いた証
【竜輝】
「・・・だから
・・・僕がこの子を連れて帰る
・・・この子を待ってる人の元に
・・・この子が帰りたかった家に」
震えた声で告げる竜輝の言葉を聞いて
・・・僕は自分が情けなく恥ずかしく思った
・・・正直、生きてないなら意味はないと思った
・・・死んだ人間を連れて帰ったって意味ないって思ったんだ
・・・でも、それは違う
・・・それは僕の都合だ
・・・この子の気持ちは
・・・まだ、ここに生きてる
・・・きっとこの子は
・・・今でも家に帰りたいと願ってる
【竜輝】
「・・・もうすぐ・・・帰れるから」
そう言いながら竜輝が箱に手を向けた
その手に魔力がこもると、それに反応するように箱が淡く光
女の子がゆっくりと透明なゼラチンの中に入って行った
それを確認して竜輝は箱のフタに手を伸ばし、ふたを閉めた
そして、箱の近くにおいてあった紐で箱を十字に結び
両腕で抱え込むように持ち上げた
【竜輝】
「っ・・・・・」
そんな竜輝から奪うように箱を持ちあげた僕を少し驚いたように見ている
【火焔】
「・・僕が持つよ
・・・僕の方が竜輝よりちょっと大きいし」
箱を抱えながら竜輝に笑顔で告げた
【竜輝】
「・・・・ありがとう」
そんな僕に竜輝は小さくお礼を言った
【火焔】
「・・・お礼を言うのは僕の方だよ」
そんな竜輝に更に言葉を返した
【火焔】
「・・・大切な事を教えてくれて
・・・ありがと」
・・・きっと、僕じゃこの子の思いに気づいてあげられなかった
・・・僕だけじゃこの子の願いを叶えてあげられなかったから
【竜輝】
「・・・・・・・・」
僕の言葉に竜輝は少し戸惑ったように視線を下げたが
【竜輝】
「・・・どういたしまして」
戸惑いながらも小さく言葉を返してくれた
【火焔】
「・・・とにかく、ここからでましょう
歩けますか?」
僕らの行動を呆然と見つけていた女の人に尋ねると
女の人は少し怯えたように頷いた
それを確認し、警戒しながら来た道を戻り始めた
【火焔】
「・・・・・・・・・・」
僕が先頭を歩き、女の人を囲うように竜輝が最後尾を歩く
【火焔】
「・・・・・・・・・・」
物音がしない廊下を足早に進み、潜入して来た部屋に戻った
・・・さっき、眠らせた使用人に女の人はまだ眠っているようだ
【竜輝】
「・・・まずい」
窓の外を見た竜輝が小さく声をあげた
視線の先ではちょうど他の見張りが寝かせた見張りを発見したところだった
慌てたように他の見張りを呼び眠った見張りを揺すって起こそうとしている
【火焔】
「・・・どうしようか?」
【竜輝】
「・・・・・・・・」
尋ねた僕に言葉に竜輝は黙ったまま何かを考えている
・・・ここまでくれば強行突破が一番早いだろうけど
それでは簡単に顔を見られてしまうし
・・・正直、箱を抱えたままで突破するのは大変だ
攻撃されたらよけられないかも知れないし、助けた女の人に当たるかも知れない
【竜輝】
「・・・技能者は保持する属性の力を
自由に操作できるんだよね?」
確認するように僕に尋ねて来た
【火焔】
「ん~?攻撃や防御じゃない使い方ができるか
って事?火の玉とか?」
技能者じゃなく魔術で魔法を使う人は
それぞれの魔法に決められた型があるから
自由な形を作り、操作する事はできないと聞いた事がある
・・・技能者の僕にはそれがどういう事なのかいまいち分からないけど
【竜輝】
「・・・そう・・・火を人型にできる?」
【火焔】
「できるけど?」
早々に質問を向けて来る竜輝に首をかしげながら返した
【竜輝】
「・・・じゃ、人型の炎をオトリに使おう」
そう言って僕が抱えていた箱を竜輝が受け取った
【竜輝】
「・・・人型を裏庭から
正門に向かって走らせる事ができる?」
つまり、炎で人型を作り、見張りの注意をそっちに向けるって事かな
【火焔】
「余裕!余裕!」
竜輝の言葉に笑顔で返し裏庭に目を向け答えた
【竜輝】
「・・・見張りがいなくなったら
真っ直ぐ街を抜けて森に出よう」
【火焔】
「了解!」
はっきりと返事をし、裏庭に手を向けた
【火焔】
「んじゃ~いくよ!」
声と共に裏庭の手を向け魔力を込めた
うねりを音と共に渦を巻いた炎が裏庭に出現し
5メートルはある巨大な人型の炎へと変化した
予想通り見張りの人間は慌てているようだ
【火焔】
「こいつを動かして~」
操作するように魔力を込めると
妙にガタイの良い人型はビシッとした背筋で両腕を振り始め
胸を張るように膝を高く上げ風を切り走り始めた
【竜輝】
「・・・なんか・・・動きがぎこちない」
【火焔】
「でも、面白くない!?」
自分で操作しながらも奇妙な人型の動きに笑ってしまった
【竜輝】
「・・・いや、怖い」
どうやら竜輝は炎人形は気に入らなかったようだ
でも、作戦は成功しているようで
見張りはダッシュする人型の炎に攻撃を向けながら追いかけて行った
【竜輝】
「・・・行こう」
窓を開け、竜輝が外に飛び出した
【火焔】
「僕が抱えて走りますから!
しっかり掴まっててください!」
声をかけ女の人を抱き上げた
そして、竜輝の後を追いかけ外に出た
家々の屋根を飛び移るように真っ直ぐ走り
一気に森へと入って行く
・
・
・
【竜輝】
「・・・・・・・・」
しばらく走ったところで竜輝が足を止めた
【火焔】
「・・・はぁ・・・ここまでくれば
・・・大丈夫かな?」
完全に息が上り、苦しいながらも尋ねた
【竜輝】
「・・・多分」
静かに言葉を返してくる竜輝も少し苦しそうだ
【火焔】
「歩けますか?」
女の人に声をかけて地面へと下ろした
・・・別に重たくは無かったけど
・・・身長のせいか持ちにくかった
【女の人】
「ありがとう、大丈夫だよ」
ニコッと笑ってお礼を言われた
・・・何気ないその言葉が無性に嬉しく感じた
【火焔】
「これからどうしょうか?」
少し浮かれながら竜輝に尋ねた
【竜輝】
「・・・とりあえず、この子を家に帰そう」
そう言って暗い森の中を歩き始めた
【火焔】
「僕が持つよー!」
そんな竜輝から女の子が入った箱を奪い取った
【火焔】
「疲れたでしょ?ゆっくり歩いていいよ」
【竜輝】
「・・・でも、火焔も疲れてる」
【火焔】
「僕は全然平気!
体力には自信あるんだよねー!」
心配そうに言葉を返してくる竜輝に笑顔で返した
【竜輝】
「・・・ありがとう」
そんな僕に小さくお礼を言った
【火焔】
「あ~でも、結構揺れちゃったと思うけど
女の子大丈夫かな?」
森の中を3人で歩きながら竜輝に尋ねた
・・・走ってる時も思ったけど
・・・結構、ガンガン揺れてたと思う
【竜輝】
「・・・大丈夫・・・この箱は錬金道具だから」
【火焔】
「・・・錬金道具?」
聞きなれない言葉に首をかしげ聞き返した
【竜輝】
「・・・この箱は錬金術で作れた特別な箱
一般的には食材の腐食を防ぎ運搬するのに使う
・・・だから、揺れても中には伝わらない」
・・・そうだったのか
・・・竜輝ってほんと物知りだな
【火焔】
「あれ?崖だね」
木が見えなくなったと思ったら、先は崖になっていた
【竜輝】
「・・・この崖下の森の中に教会があると思う」
【火焔】
「じゃあ〜降りれるくらい低くなってる場所を
探そうか?」
そう言いながら崖沿いを歩き始めた
【火焔】
「・・・でも
・・・この子はなんで誘拐されたんだろう?」
少し視線を箱に向けた
・・・女の子は指先意外全く外傷は無かったし、衣服の乱れも無かった
・・・本当にただ眠ってるだけに見える程、綺麗だった
【竜輝】
「・・・・・・分からない
・・・でも、欲にまみれた大人は腐る程いる」
僕の言葉に視線を下げながら静かにつぶやいた
・・・そんな竜輝からは静かな怒りを感じずにはいられなかった
【火焔】
「・・・・・・・・」
そんな竜輝に僕はなんて言葉を返したらいいのか分からなかった
・・・竜輝がこの子をルナと重ねていたとしたら
・・・この結末はとても辛いものだと思った
【火焔】
「・・・・・・・・」
・・・でも
・・・正直、竜輝が探してるルナと言う女の子は
・・・もう
・・・生きてはいないのではないだろうか?
僕の腕の中にいる女の子の重みを感じると
そう思わずにはいられなかった
「・・・大人には大人の事情があるのよ」
その言葉と共に鳥肌が立つような異様な音が響いた
そして
【竜輝】
「っ・・・・!」
竜輝の口から溢れ出すように真っ赤な血が噴き出した
【火焔】
「りゅき!?」
慌てて竜輝に駆け寄った
【竜輝】
「ぐっ・・・・・」
横腹を抑えた竜輝の手が肌色が見えない程に赤く染まっている
竜輝の体は横腹部分がえぐられた様な深い傷が付いていた
「・・・子供には理解できないかな?」
少し笑ったような声に目を向けると
【女の人】
「・・・死人にしか興奮できない
可哀想な人もいるんだよ?」
僕らが助けた女の人の右手は流れるように真っ赤な血で染まっていた
・・・考えなくても分かった
・・・この女の人が竜輝に攻撃を向けたんだ
【火焔】
「っなんでこんな事!?」
【女の人】
「逆に教えて欲しいな~
どうして私を信用したの?」
怒鳴りつける僕に見下すように問いかけ
【女の人】
「女だから信用しちゃったの~?
おバカさんだね~!」
馬鹿にするように笑った
【火焔】
「っだって!閉じ込められてたんじゃ!」
【女の人】
「自分で入ったのよ~君たちが来ちゃったから」
・・・そんな
【女の人】
「本当は生きて納品する予定だったのに
火族の奴らが窒息死させちゃって~
マジであんたら火族って使えないわよね~?」
・・・僕がこの女を檻から出したから
【女の人】
「てっきり、あんたは
こっちの仲間かと思ったんだけど違うの?」
【火焔】
「俺をお前らみたいなクズと一緒にすんなっ!」
女の一言で一気に怒りがこみ上げた
【女】
「えー?クズって酷い~
これって一種の人助けなんだけどな~」
怒鳴りつける俺を愉快そうに笑った
【女】
「屍姦って心の病だと思わない~?
可哀想だからお手伝いしてあげてるんだよ?」
【火焔】
「黙れーーーー!!」
見下す様に笑う女を黙らせるように魔力を開放し
一気に女に向かって炎を纏った拳で殴りかかった
【女】
「興奮しちゃってー!」
そんな俺の攻撃を軽く手を向け結界で防ぎ
【女】
「反撃しちゃうよ?」
笑いながら告げた言葉と共に空から無数の氷の槍が俺に向かって飛んできた
【火焔】
「っ!!」
その攻撃を横に飛ぶように避け、今度は火の渦を女に向け飛ばした
が、水の結界が巨大な盾を象るように渦を巻き、俺の炎を飲み込む
【女】
「魔力が高くても
使い方が分かってないと無意味ね~?」
女の言葉と共に左から柔らかな風が吹き、瞬時に暴風となった
でも、風程度なら我慢できる
そう思って水の渦を打ち破るべく炎の渦を向け続けた
【火焔】
「っぐ!?」
が、全身に裂くような痛みが走った
【火焔】
「クソッ!!!!」
攻撃を止め、暴風と共飛んでくる氷の針を避ける為に体を動かした
その瞬間、水の渦が逆流するように回転を変え
俺に向かって真っ直ぐに飛んできた
【火焔】
「がっ!!」
光速のように飛んで来た水の渦を避けきれず弾き飛ばれ
周囲の木々をなぎ倒すように吹っ飛ばされた
【火焔】
「っ!!」
受身を取るようにすぐに立ち上がり、地面に手を向けた
俺が送った魔力に反応するように女の足元が黒い炎を上げ爆発した
【女】
「どこ狙ってるの~?」
爆発を避けながら笑う女の足元を次々に爆発させて行く
【女】
「っ!?」
爆発させた煙で視界が悪くなって来た
【火焔】
「死ねっ!雑魚がっ!!」
そんな女に向かって怒鳴り声を上げ、一気に魔力を地面に向けた
そして、女の足元が爆発し崖と共に崩れ去る
【女】
「・・・おバカさん」
が、女は空高く飛び上がり手を俺に向けた
その手から水の渦が俺に向かって飛んでくる
【火焔】
「なめんなぁ!!!」
その水の渦に鉢合わせるように炎の渦を飛ばし、打ち消した
【火焔】
「っ死ね!!」
地面へと降りた女に容赦なく炎の渦を飛ばす
【女】
「っ!!」
そんな俺の攻撃を周囲に結界を張り防いでいる
が、そんな結界じゃダメだ
【火焔】
「焼き殺してやるよっー!!」
一気に魔力を込め、女を包み込むように炎で覆った
そして、空に手を向け空中に巨大な火の塊を作り
焼き潰すように女へと落とした
爆発する様な衝撃と共に周囲が焼き尽くされた
その中心では煙を上げる女が倒れ込んでいる
【火焔】
「・・・熱かったでしょ?
・・・焼けちゃった?」
そんな女にゆっくりと近づいた
【女】
「・・・っ・・この」
女は両腕で支えながら苦しそうに頭をあげた
【火焔】
「・・・お前が悪いんだよ
・・・お前は悪だから」
そんな女にゆっくりと手を向けた
【女】
「・・・あんただって
・・・偉そうにできる立場なの?」
状況が理解できてないのか女は馬鹿にするように笑った
【火焔】
「・・・イカれた人間は
・・・命乞いもできないんだね?」
カンに障る女にトドメを刺すべく、手に魔力を込めた
【女】
「・・・散々友達攻撃向けといて
・・・よく言うね?」
【火焔】
「っ!?」
その女の言葉に俺の手が止まった
【女】
「・・・見えてなかったの?
・・・それともどうでも良かった?」
少し笑った様な女の声
【女】
「・・・イカれてるのはアンタよ
・・・心に鬼が宿ってるんじゃない?
・・・人殺しに飢えた火族の鬼が」
「火焔!落ち着け!」
その時、俺の名を呼ぶ声が響いた
そして、木々から飛び降りるように天地さんが姿を見せた
【天地】
「あ~・・・こりゃ、また派手にやったな~」
周囲を見渡し、苦笑いをあげ
【天地】
「で?ちゃんと証拠はあったんだろうな?」
俺に言葉を向けて来た
【火焔】
「・・・証拠?」
【天地】
「この女が誘拐に関与した証拠だよ」
・・・関与した証拠
【天地】
「・・・まさか、証拠も無いのに
殺そうとしてた訳じゃねーよな?」
天地さんの言葉を無視するように周囲に目を向けた
崖沿いの地面は爆発したように砕けちり
元の形が分からない程に崩れ落ちていた
【火焔】
「・・・・・・・っ竜輝!!」
慌てて名前を呼び、崩れ落ちた崖に向かって走りだした
【火焔】
「っ!?」
その瞬間、僕が踏み込んだ岩が重みに耐えられず崩れ始め
僕の体も一緒に崖下へと落ちて行く
【天地】「っバカ!!」
遠い地面へと落ちる僕を捕まえるように天地さんが崖から飛び降りて来て
空中で僕を抱き上げた
そして、地面にぶつかる瞬間、僕らを衝撃から守るように足元から風が吹き上げ
ゆっくりと天地さんが地面へと降りた
【天地】
「バカ!怪我したいのか!?」
【火焔】
「竜輝!」
天地さんの怒鳴り声を無視して崩れ落ちた岩に駆け寄った
【火焔】
「竜輝!?いるの!?何処!?」
必死に名前を呼びながら山の様になった岩を退かした
【火焔】
「竜輝!返事して!!」
名前を呼ぶたびに涙が溢れた
【火焔】
「りゅき!!」
泣き叫ぶように声をあげた瞬間
小さく魔力を感じた
自然に発せられる魔力
消えかかりそうな闇の魔力
【火焔】
「っ!!」
慌てて魔力を感じた場所の岩を退かした
【火焔】
「っりゅき!!」
退かした岩の下には
女の子が入った箱を庇うように覆いかぶさった竜輝の姿があった
【火焔】
「竜輝!しっかりして!!」
名前を呼びながら竜輝を抱き上げた
【竜輝】
「っが・・・!!」
その瞬間、溜まっていたものを押し出すように血の塊が竜輝の口から飛び出した
【火焔】
「ごめん!ごめんね!!」
血で染まった竜輝を地面に寝かせて謝った
【火焔】
「女の人を倒さなきゃって!
僕、そればっかり考えてて!!」
攻撃しなきゃ殺られる、だから夢中で攻撃した
怪我をした竜輝の事を考える余裕が無かった
・・・だから、僕は
・・・地面を爆発させたんだ
【竜輝】
「・・・ち・・・がう」
そんな僕にかすれた声で竜輝が言葉を発した
【竜輝】
「・・・かえん・・・悪く・・・ない」
その声は今にも消えてしまいそうに弱々しく
【竜輝】
「・・・見え・・・ない・・・僕が・・・悪い」
血が滲む涙を流す声は感情を感じられなかった
【火焔】
「っ・・・・違うよ・・・竜輝は見えてる
っ・・・僕にはちゃんと見えてるよ」
そんな竜輝になんて返したら良いのか分からなかった
【火焔】
「・・・ごめん!ごめんなさい!!」
どうしたらいいのか分からず、ただただ泣きながら謝った
【天地】
「・・・なぁ?」
背後から声が聞こえた
【天地】
「・・・証拠は?・・・何処にあるんだ?」
目を向けると天地さんが不審そうに僕を見ていた
【火焔】
「天地さん!助けて!!竜輝が死んじゃう!!」
縋るように泣きながら天地さんに声をあげた
【天地】
「・・・・・・・・・」
でも、天地さんは何も聞こえてないかのように反応をしない
【火焔】
「天地さんにも本当は見えてるんでしょ!?
お願いします!助けてくださいっ!!」
頭を地面にこすりつけるように頭を下げた
【天地】
「・・・何やってんだよ?
どっかで頭でも打ったか?」
そんな僕を不審がるように睨みつけ
【天地】
「あ~・・・
とりあえず、あの女捕まえとくかな~」
そう言ってめんどくさそうに歩き始めた天地さんは
まるで何も見えていないように竜輝の横を通り過ぎ
逃げるように森の中へと歩いて行く
【火焔】
「待って!天地さん!助けてよ!!」
そんな天地さんに泣き叫びながら声をあげた
でも、天地さんはまるで何も聞こえていないように真っ暗な森の中へと消えて行った
【火焔】
「っなんで・・・なんでだよ!!」
誰に言うでもなく怒鳴りつけた
【火焔】
「竜輝っ!しっかりして!」
そして、再び竜輝に駆け寄った
【竜輝】
「・・・・・・・・・」
でも、竜輝はうっすらと目を開けているだけで返事をしない
【火焔】
「ダメたよ!!死んじゃダメだよ!!」
泣きながら、力の入ってない竜輝を背中に抱えた
【火焔】
「絶対助けるから!絶対大丈夫だから!!」
自分に言い聞かせるように声を上げ、竜輝を抱えて森の中を走った
・・・ヴィザールに行けば薬くらいならもらえるはず
・・貰えなくても、お店に売ってる薬でなんとかなる
【火焔】
「しっかりして!お願いだから!
返事してよ!!」
竜輝の魔力がどんどん消えて行くのが分かった
どんどん弱くなるのが分かった
・・・これじゃ
・・・ヴィザールまでもたない
【火焔】
「っ!!」
その時、森の中に光が見えた
その光を放つ場所には沢山の人
・・・光の魔力を持つ、ルルーカの国英軍だ
【火焔】
「すみません!!」
何も考えず、その場に飛び出し声を上げた
【火焔】
「助けてくださいっ!!」
泣きながら必死に声を張り上げた
【ルルーカ軍】
「どうした!?大丈夫か?」
そんな僕に慌てたように一人の男の人が駆け寄って来た
【火焔】
「助けて・・・この子が・・・」
そんな男の人に救いを感じ竜輝を地面に寝かせながら言葉を返した
【ルルーカ軍】
「っ・・・・・・・・・」
でも、寝かせた竜輝の姿を見た途端、
男の人の顔が引きつった
遠目に僕らを見る人たちもざわめいている気がする
【ルルーカ軍2】
「・・・・・・」
そんな、僕らに違う人が近づいてきた
【ルルーカ軍2】
「・・・下がれ」
近づいてきた男の人の言葉で声をかけてくれた男の人が逃げるように離れて行った
【ルルーカ軍2】
「・・・悪いが他を当たってもらえるか?」
そして、静かに僕らを見下ろした
【火焔】
「っなんで!?
ルルーカの人なら回復魔法使えるでしょ!?」
【ルルーカ軍2】
「・・・忙しいんだよ
君たちに構ってる暇はないんだ」
怒鳴りつけるように叫んだ僕の言葉を避けるように背を向けた
【ルルーカ軍2】
「・・・早く立ち去れ
・・・そこにいても意味はない」
そして、どんどん僕らから離れて行く
【火焔】
「待って!!助けてください!!」
慌てて声を上げるが男の人は足を止めない
【火焔】
「誰かっ!!誰か助けてください!!」
周囲の人たちに向かって泣き叫ぶように声を上げた
でも、遠目に見るだけで誰も僕らに近づいて来ない
【火焔】
「っ・・・りゅき?」
その時、微かに感じた竜輝の息遣いが聞こえなくなった気がした
【火焔】
「竜輝!!竜輝!!」
必死に名前を呼んだ
【竜輝】
「・・・・・・・・・」
でも、竜輝は動かない
【火焔】
「お願いだから!!!誰か助けてよっ!!!!」
裏返る声で泣き叫びながら声を上げた
そんな時、一人の人影が僕らに近づいて来た
【鷹】
「・・・・・・・・・・」
少し戸惑ったように近づいて来る男の子
【ルルーカ軍2】
「・・・鷹様」
そんな男の子の道を塞ぐようにさっきの男が前に立った
【ルルーカ軍2】
「・・・あれはヴィザールの」
【鷹】
「・・・知ってますよ
・・・でも
あの子がなにかした訳じゃないでしょ?」
男の人の言葉に戸惑いながら返している
【ルルーカ軍2】
「・・・ヴィザールの人間と言うだけで問題なんですよ」
【鷹】
「・・・・・・・・・」
男の人の言葉に男の子は戸惑ったように足を止めた
【ルルーカ軍2】
「・・・お下がりください
・・・他の者の目があります」
そして、足を止めた男の子を促すように肩に触れた
【鷹】
「・・・・・・・っ触んな!!」
が、そんな男の人の手を跳ね除けた
【鷹】
「お前はいつから
俺に命令できるようになったんだ!?
お前が下がれよ!!俺の前に立つな!!」
怒りをぶつけるように男の人を怒鳴りつけ
【鷹】
「・・・・・・・・・・」
不愉快そうな顔のまま僕らに近づき
【鷹】
「・・・・・・だっせ」
竜輝の横にしゃがみ、手を竜輝に向けた
【鷹】
「・・・・・・こんなんで
・・・死んでもらったら困るんだよ」
そして、男の子の手が柔らかな光に包まれた
【鷹】
「・・・・・・絶対に死なせないからな」
その柔らかな光が竜輝を包み
ゆっくりと、でも確かに竜輝の傷口が塞がれて行くのか分かる
【鷹】
「・・・・・・ルナが帰って来るまで」
小さくつぶやく言葉
【鷹】
「・・・・・生きててもらわないと困るんだよ」
その言葉には湧き上がる様な怒りとすがるような悲しみがこもっていた




