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◾️助けて


・・・誰かのすすり泣く声が聞こえる


・・・体にまとわりつく痛みが何処かに吸い込まれて行くような感覚を感じる


ゆっくりと目を開けると優しい真っ白な光が視界を覆っていた


「りゅうちゃんっ!?りゅうちゃん!?大丈夫!?」


その言葉と共に優しい光が消えた

暮れかけた森の中

地べたに倒れた僕を覗き込む

涙でぐちゃぐちゃになった鷹の姿が見えた


【りゅき】

「・・・た・・・かっ」


かろうじて名前を発する事ができた


【鷹】

「りゅうちゃんっ!しっかりしてよ!

りゅうちゃんまで居なくなったら僕どうしたらいいのか分からないよっ!!」


そんな俺にすがりつくように鷹は更に泣き始めた


【りゅき】

「・・・・・・・っ!?」


慌てて体を動かした

でも、起き上がる事はできず


【りゅき】

「ぐっ!」


地べたに手を付け、体を支えながら必死に顔を上げ


【りゅき】

「・・・っるな・・・るなは?」


周囲を見回した

でも、ルナの姿はどこにも無い


【鷹】

「いないんだよっ・・・ルナ・・・どこにもっ・・・いないんだっ」


苦しそうに鷹は答えた


・・・やっぱり


・・・あのままルナは


・・・僕のせいでっ


【りゅき】

「・・・・っごめん!っごめん!ごめん!」


恐怖で体が震え、涙が溢れた


【りゅき】

「っごめん!ごめん!っごめん!!」


なにも考える事ができず頭を抱えて叫んだ


【りゅき】

「僕のせいだっ!ごめん!ごめんっ!!」


ルナがどうなってしまったのかを考える事が怖かった


【鷹】

「・・・っどうして・・・りゅうちゃんが謝るの?」


鷹はそんな僕に少し怯えたように言葉を向けて来た


【りゅき】

「知らない人がルナを連れて行ったんだ!僕、止めようとしたけど止められなくてっ!」


【鷹】

「っ!?」


【りゅき】

「守るって約束したのにっ!僕、なにもできなくてっ!」


【鷹】

「・・・・・・・・」


【りゅき】

「っごめん!本当にごめんなさい!!」


ただ、夢中で謝った

怖くて怖くてたまらないから


【鷹】

「・・・変だよ・・・そんなの・・・変だよ」


鷹は怯えたように小さくつぶやき


【鷹】

「謝るなんてっ!そんなのおかしいよっ!!」


怒鳴りつけるように声を荒らげた


【鷹】

「なんで泣くんだよ!?りゅうちゃんはそんな奴じゃないだろ!?」


【りゅき】

「ごめんっ!ごめん!ごめんっ!!」


鷹の怒鳴り声をかき消すように叫んだ

何もかもが怖かった


【鷹】

「っ・・・・・・」


突然、鷹が立ち上がり


【鷹】

「・・・僕が絶対に助ける・・・お父さんに頼めば絶対なんとかしてくれるから!」


ルルーカへと走り出した


【りゅき】

「・・・お・・・とうさん?」


・・・お父さんに頼む?


【りゅき】

「・・・・・・・・っ」


・・・そうだ

・・・お父さんなら

・・・僕のお父さんはなんでもできるはず

だって、僕のお父さんは誰より強いんだから


【りゅき】

「っグ!!」


少し動いただけで、全身に熱さと痛みを感じた


【りゅき】

「っガ・・・・・」


無理やり体を動かすと口から血が溢れ出た


【りゅき】

「っ・・・・・・」


それでも、木を支えに必死に立ち上がり

僕の街へと歩き出した


街に着いた頃には周囲は真っ暗になっていた

でも、街にはまだ沢山の人がいた

だから、まだそんなに時間はおそくないはず


【りゅき】

「・・・・・・・・」


・・・急がなくちゃ

・・・早く、助けてあげなくちゃ

・・・今、助けないと


【りゅき】

「・・・・・・・・」


・・・ルナにもう会えない気がした


【りゅき】

「っ!!」


いきなり横道から人が出てきて僕とぶつかった


【りゅき】

「っグ!!」


その衝撃で僕は弾き飛ばされ

受身を取ることも出来ない僕の体は地べたへと叩きつけられた


【りゅき】

「ア”ガ゛ッ!!!」


叩きつけられて全身に痛みが走った

口から水のように血が溢れた

一気に視界が歪んだ気がした


「・・・・・・・・・」


でも


「・・・・・・・・・」


街の人たちは


「・・・・・・・・・」


誰も僕に声をかけようとしない


「・・・・・・・・・」


僕に目線を向けることもしない


「・・・・・・・・・」


【りゅき】

「っ・・・・・・」


・・・当たり前だよ

・・・だって、知らない人なんだから

・・・こんなの当然だ

・・・全然、変なことなんかじゃない


【りゅき】

「グッ・・・・・」


両手を地面につけ必死に立ち上がった

・・・なにも考えなくていい

ただ、必死に感覚が消えてしまいそうな足を家へと向けた


【りゅき】

「・・・はぁ・・・はぁ」


・・・どうやってここまでたどり着いただろう

・・・もう、なにも分からなくなっていた


【りゅき】

「・・・・・・・・・・」


・・・でも、広いリビングには誰の姿もない


【りゅき】

「・・・・・・・・・・」


・・・いた

・・・いてくれた

・・・暗く広い廊下の先にお父さんと天地の姿がある


【りゅき】

「・・・・・っ」


・・・あと、もう少し

・・・もう少し頑張ればお父さんに手が届く


【りゅき】

「・・・・・・」


・・・あと、もう少し頑張れば

・・・お父さんが絶対ルナを助けてくれる


【りゅき】

「・・・・っお・・・・どうざん」


お父さんを呼びながら必死に手を伸ばした


僕の手はお父さんの腕を掴み

・・・その手からお父さんの温もりを感じた


【りゅき】

「・・・だ・・・ずげで・・・ルナが・・・」


言葉にならない声で必死に助けを求めた

・・・力の入らない体で必死にすがりついた


【りゅき】

「・・・だ・・・ずけ・・・て」


・・・お父さんならルナを助けてくれるから


【りゅき】

「・・・おどう・・・ざんっ!」


・・・僕のお父さんは誰にも負けないくらい強いんだから


【りゅき】

「っ!?」


・・・でも

・・・お父さんの耳に僕の声が届く事はなく

・・・お父さんの目に僕が映ることもなく

・・・お父さんの暖かな腕は僕の手を振り払うように離れて行った


【りゅき】

「・・・あ”っ」


・・・支えを無くした僕の体は床へと倒れこみ

・・・もう、起き上がることは出来ない事が分かった


【りゅき】

「・・・お・・・どう」


・・・必死に離れて行くお父さんの背中に言葉をむけようと思ったけど

・・・声が出なかった


【りゅき】

「・・・・っ・・・あ・・・まぢっ」


側に立っていた天地の足にすがり付いた


【りゅき】

「・・・ドモ・・・ダチ・・・ガ・・・」


掴む事の出来ない僕の手を必死に天地の足に擦り付けた


【りゅき】

「・・・ボク・・・モウ・・・邪魔シナイカラ・・・」


・・・僕が嫌いなのは知ってる


【りゅき】

「・・・モウ・・・喋ラナイ・・・ガラ・・・」


・・・誰も僕を必要としてない事も分かってる


【りゅき】

「・・・オネガイ・・・今日ダケ・・・今ダケ・・・」


・・・最後ノ願イ

・・・最後ノワガママ

・・・最後ノ気持チ


【りゅき】

「・・・僕ヲ・・・見テヨ・・・」


でも

それでも

天地の目に僕が映る事は無かった


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