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40/58

火◾️月明かり





◾️◾️火焔視点◾️◾️

挿絵(By みてみん)



「・・・生きてる?」


背後から女の声が聞こえた


【女の人】

「・・・生きてるなら早く行った方がいい

 ・・・うちの連中が

 あんたを殺したくてウズウズしてる

 ・・・早く消えないと殺されるわよ」


それだけ告げ離れて行く足音が聞こえた


【火焔】

「・・・・・・・・」


・・・僕は

・・・死ぬべきだったのかも知れない

・・・父さんと母さんと一緒に

・・・僕はやっぱり生きてちゃいけなかったのかも知れない


【火焔】

「・・・・・・・っ」


少し体を動かすと裂けた無数の傷口から溢れるように血が流れた


【火焔】

「・・・・・・・」


それでもなんとか立ち上がった

痛む体を引きずるように僕は森の中を歩き始めた


・・・殺される訳にはいかないから

・・・死ぬわけにはいかないから

・・・父さんと母さんが守ってくれた命を捨てたくないから


【火焔】

「っ・・・・・」


・・・でも

・・・僕は何処に行けばいいんだろう?


【火焔】

「・・・・・・」


・・・行くところなんて無い

・・・僕を受け入れてくれる人なんていない

・・・だって僕は

・・・火族だから


火焔「っ・・・・・」


その時、森の中に人影が見えた

ゆっくり僕に近づいて来る


【男】

「・・・・・・・・・」


その男は教会で攻撃して来た男

真っ直ぐに憎しみを込めて僕を睨みつけていた


【火焔】

「・・・・・・ごめんなさいっ」


その男に謝った


【火焔】

「ごめんなさいっ・・・ごめんなさいっ

 ・・・ごめんなさいっ」


ただただ夢中で謝った


・・・怖かったから


・・・憎むような恨むような目が


・・・僕をずっと見ている事が


【男】

「・・・・・・・・・」


男はなにも答えず僕に近づき


【火焔】

「グッ!!」


僕を殴り飛ばした


【男】

「・・・・・・・・・」


更に近づいて来た男は

ただ真っ直ぐに僕を睨み

憎しみを込める様に

恨みを晴らすように

僕を殴り続けた


【火焔】

「っ・・・・・・・」


でも、僕は抵抗しなかった


だって男の人は流れる様に涙を流しているから


本当に辛そうに唸るように


涙を流して僕を殴っている


【火焔】

「・・・・・・・・」


・・・僕が死ぬことでこの人の気が晴れるなら

・・・殺されてもいいかもしれない


・・・一瞬でもこの人の気持ちが救われるなら


・・・僕は

・・・一瞬だけ


・・・ヒーローになれる


「・・・やめなよ」


小さな声が聞こえて

僕を殴る男の人の手が止まった


「・・・その子を殺しても意味ない」


小さな声に目を向けると


【青黒い髪の男の子】

「・・・その子を殺しても

 貴方の気が晴れる事はない」


森で出会った男の子の姿が見えた


【青黒い髪の男の子】

「・・・その子を殺しても悪は滅びませんよ

 無抵抗の子供を殺した罪悪感だけが

 貴方に生まれるだけです」


【男】

「・・・・・・・・・・」


諭すような男の子の言葉に

男の人は逃げるように暗い森の中へと走って行った


【青黒い髪の男の子】

「・・・・・・・・・」


そして、男の子はゆっくりと僕に近づき魔力がこもった手を向けた


【火焔】

「っ・・・・・・」


慌てて体を動かそうと思ったけど僕の体はもう動く事ができなかった


【青黒い髪の男の子】

「・・・・・・簡単にくたばんじゃねーよ」


そう言って男の子の手に光の魔力が集まり

暖かな優しい光が僕を包んだ


【火焔】

「・・・・・・・」


今までに感じたことのない柔らかな魔力が全身を走り目を閉じた


ぬくもりが全身を包む

それはまるで


・・・母さんに抱きしめられた時のような安心感と温もりだった


【青黒い髪の男の子】

「・・・・・・もう動けるだろ」


めんどくさそうにつぶやく声が聞こえた


【火焔】

「・・・・・・・・・」


ゆっくりと目を開けると

さっきまで全く動かせなかった体が少し動くようになっていた


【火焔】

「・・・・・ありがと」


きっと、この子が回復魔法を使ってくれたのだと思った

傷は完全には治っていないが傷口はふさがり血が流れる事は無かった


【青黒い髪の男の子】

「・・・・・・さっさと帰れ

 ・・・今、この場所は火族は来ない方がいい」


そう言って僕に背を向け歩き始めた


【青黒い髪の男の子】

「・・・もう帰らないとしても

 ・・・アイツに一言告げて消えろ

 ・・・勝手にアイツの前から消えるな」


吐き捨てるような言葉を残し男の子は森の中へと歩いて行った


・・・もしかして、天地さんとの会話を見ていたのだろうか?


【火焔】

「・・・・・・・・」


・・・あいつって言うのはきっと竜輝の事だろう

・・・やっぱり竜輝とあの子は友達なんだね


【火焔】

「・・・・・・・・」


・・・少しだけ・・・羨ましく思った


【火焔】

「・・・・・・っ」


ゆっくりと立ち上がり歩き始めた

全身に引き裂くような痛を感じる

それでも必死に足を動かし続けた



【火焔】

「・・・・・・・」


・・・どれだけの時間がかかっただろうか?


真っ暗になったヴィザールの街は静かな空気に包まれていた


【火焔】

「・・・・・・・」


・・・どうしたらいいのかなんてまだ分からない

・・・でも、やっぱり僕にはここしか無かった


【火焔】

「・・・・・・・」


・・・でも天地さんは僕を認めてくれないだろう

・・・僕を受け入れてはくれないだろう

・・・僕はどうしたらいいだろう?


【火焔】

「・・・・・・・」


不安と恐怖だけを抱えた体でゆっくりと中庭に入った


・・・暗い中庭

・・・なんの音も聞こえない場所

・・・月明かりしかない寂しい場所に


・・・見慣れた姿が見えた


【火焔】

「・・・どうしたの?」


僕が声をかけるとその子はビクッと体を強ばらせた


【火焔】

「・・・こんな時間に何してるの?」


怯えたようなその子に痛みの残る顔で笑顔を向けた


【竜輝】

「・・・・・・・・・・」


その子は怯えたような目で僕に視線を向け


【竜輝】

「・・・もう・・・帰って来ないかと思った」


感情を失ったような静かな声


【竜輝】

「・・・平気だった・・・1人で良かった

 ・・・怖くなんて無かったんだ」


静かな震える言葉


【竜輝】

「・・・でも、君がいなくなったら

 ・・・また誰も・・・僕を見てくれなくなる」


でも、その言葉には不安と恐怖の感情が溢れている様に感じ


【竜輝】

「・・・また・・・1人になる

 ・・・そんなの・・・嫌なんだ」


その言葉を発した瞬間

静かに涙を流し始めた


・・・それはとても少ない言葉だった

・・・でも

この子にとっては精一杯の言葉だと僕には分かる


【火焔】

「・・・・・・・・・」


そんな竜輝にゆっくりと近づいた


【火焔】

「・・・竜輝って

 ・・・意外と泣き虫なんだね」


笑顔で竜輝に言葉を返し


【火焔】

「・・・僕はここにいるよ

 ・・・ずっとここにいるから

 ・・・もう泣かなくていいよ」


そう言って少し背の低い竜輝の頭を撫でた


【竜輝】

「・・・・・・火焔も・・・泣いてる」


そう言われ初めて気づいた

僕の頬に涙が流れていることに


【火焔】

「・・・あれ?・・・ホントだ」


そんな自分が少しおかしくて笑った


【竜輝】

「・・・・・・・」


そんな僕を不安そうな目で見ている


【火焔】

「心配しなくていいよ~

 これは、きっと嬉し泣きだから」


そんな竜輝に笑顔で言葉をかけた


【火焔】

「家族以外で僕を必要としてくれたの

 竜輝が初めてだから嬉しかったんだよ」


もう誰も僕を必要としてくれないと思ってた

でも竜輝はこんな僕を必要としてくれた


【火焔】

「ありがとね、待っててくれて嬉しかったよ」


人から必要とされる事がこんなにも嬉しいなんて初めて知った


【火焔】

「・・・ねぇ?

 ・・・2人でどっか遠くに行こうか?」


僕の言葉に少し驚いたような顔を見せた


【火焔】

「・・・どっか遠くの世界を旅するの!

 面白そうじゃない?」


竜輝と2人なら何処までも行ける気がした


【竜輝】

「・・・・・・それはダメ」


が、竜輝小さく俯く様に言葉を返して来た


【竜輝】

「・・・火焔は強くなりたいんでしょ?

 ・・・なら、天地さんの側にいた方がいい」


ハッキリと言葉を返して来る竜輝に少し驚いた


【竜輝】

「・・・天地さんの側にいれば

 ・・・きっと、火焔はなりたい自分になれる」


まるで断言するように言葉を発し


【竜輝】

「・・・・・・それに僕は

 ・・・ここで待たなくちゃいけないから」


ハッキリと強い思いを感じる言葉を告げた


【竜輝】

「・・・あの子が無事に帰って来てくれるまで

 ・・・僕はここで待っていたい」


それはまるですがるような願いを感じた


【火焔】

「・・・あの子って誰の事?」


聞いていいものか悩んだけど勝手に口が動いた


【竜輝】

「・・・・・・ルナ」


それは昼間聞いた名前だった


【竜輝】

「・・・僕が弱いから

 ・・・守ってあげられなかった

 ・・・僕のせいで

 ・・・ルナはいなくなったんだ」


悔やむように嘆くように言葉に

初めて竜輝の事を聞いた気がした


【竜輝】

「・・・でも・・・きっと

 ・・・帰って来てくれるから

 ・・・いつかきっと、戻って来てくれるから

 ・・・もう一度だけでいいから

 ・・・僕はあの子に会いたい」


夜空を見上げる様に告げる竜輝の目に

初めて光を感じた気がした


【竜輝】

「・・・だから僕はそれまで絶対に死なない

 ・・・絶対にここから出ない」


・・・僕にはその言葉に込めた想いがどれほどなのか分からないけど


【火焔】

「・・・きっと帰って来るよ」


帰ってきて欲しいと願いを込めて言葉を返した


・・・竜輝がこんなにもハッキリと自分の気持ちを告げてる

・・・だから、その願いが叶う事を僕も願った


【火焔】

「・・・なら~2人で一緒に強くなろうよ!」


宣言するように笑顔で声を上げた


【火焔】

「今度はその子を守ってあげられる様に!

 誰にも負けないくらい2人で強くなろう!」


そんな僕に竜輝は少し驚いたような顔を向けたけど


【竜輝】

「・・・・・うん」


小さく

とても静かだけどハッキリとうなづいてくれた



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